死ねないゾンビアポカリプス、それは福音か地獄か
ゾンビアポカリプスのサバイバルゲームと聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。「死なないように頑張る」「リソースを集める」「基地を築く」……。そんな常識を根本から覆す作品が、ポーランドの新鋭インディースタジオJovano Softwareから本日(7月9日)リリースされた。
『Warranted Humanity』——このタイトルが提示する最大の革命は、なんと「プレイヤーが死なない」ことだ。
「え、それってゲームとして成立するの?」と思った読者もいるかもしれない。筆者も最初は同じ疑問を抱いた。しかし、実際にプレイしてみると、これがとんでもなく斬新で、そして残酷なシステムであることが分かる。

死なないからこそ、失敗の重みがのしかかる
このゲームでは、体力が0になってもモラル(精神力)が底をついても、主人公は死ぬことがない。代わりに避難所へと逃げ帰り、「失敗した状態」で生き続けなければならない。これが何を意味するかというと——自分の犯した過ちと永遠に向き合い続けるということだ。
例えば、感染者を救うか殺すかの選択を迫られた時。効率を重視して健康な感染者を殺害してしまえば、モラルは大幅に下がる。特にゲーム序盤では、この精神的ダメージは致命的だ。しかし死んでリセットされることもなく、その罪悪感を抱えたまま次の選択を迫られる。
「やり直し」の利かない世界で、プレイヤーは真の意味での「責任」を背負うことになる。

昼と夜で変わる顔、戦略性の奥深さ
『Warranted Humanity』のもう一つの特徴は、明確に区別された昼夜システムだ。
昼間は2Dサイドスクローラーアクションの時間。感染者や敵対勢力との戦闘、スカベンジング、新たなサバイバーの救出など、外の世界での活動がメインとなる。戦闘は部位攻撃、武器の状態、防具の有無などが複雑に絡み合うリアルタイム制で、単純な連打ゲームではない。
夜間は避難所でのベース管理フェーズ。昼間の活動で疲弊した体力・モラルの回復、クラフト作業、建設、そして何より重要な「時間の使い方」を決める戦略的思考の時間だ。
「本を読んでハッキングスキルを向上させるか、より大きなバックパックを作るか、それともツールベルトをアップグレードするか……」
この選択が翌日の昼間の効率を大きく左右し、そして昼間の成果が、夜間の選択肢を決定する。まさに生活そのものが戦略となる、濃密なゲームプレイが展開される。

心理戦が生む、新しいサバイバル体験
開発元のJovano Softwareが本作で最も力を入れたのは、「心理的レジリエンス」の概念だ。単純な体力管理だけでなく、精神的な健康状態をいかに保つかが生存の鍵となる。
モラルを向上させる方法は一見矛盾的だ。「ダメージを受ける」「ハチに刺される」といった痛みを伴う経験を通じて、段階的に最大モラル値を上げていく。現実世界でも、困難を乗り越えることで精神的な強さを身に着けるのと同じ理屈だ。
この設計思想は、開発者が影響を受けたという『This War of Mine』『7 Days to Die』『State of Decay』といった名作の「サバイバルの本質」を、より深く掘り下げたものと言える。

50時間の濃密な体験、無限の可能性
本作は、単発のサバイバル体験で終わるゲームではない。分岐する決定木システムと、アイテム・敵・NPCの相互作用のランダム性により、プレイするたびに異なる展開が待っている。
開発者は「50時間以上のプレイ時間」を謳っているが、これは単なるボリューム自慢ではない。避難所の拡張、サバイバーコミュニティの管理、ウイルスの起源調査と治療法の開発など、多層的な目標が絡み合い、プレイヤーを飽きさせない工夫が随所に見られる。
制限時間内に人類の生存を確保できなければ敗北——これが唯一の「負け」条件だ。時間というリソースの重要性が、他のサバイバルゲームとは一線を画している。

新世代サバイバルゲームの到来
前述のように『Warranted Humanity』は、従来のサバイバルゲームが「死なないように頑張る」ゲームだったのに対し、「失敗しても生き続ける」という新しいパラダイムを提示している。
これは単なるシステムの違いではない。現実世界でも、私たちは失敗をリセットすることはできず、その結果と向き合いながら生きていかなければならない。ゲームでありながら、人生の本質的な部分に迫る作品として、新たな可能性を秘めているのではないだろうか。
$11.99という手頃な価格で、この革新的な体験を味わえるのは素晴らしい。ポーランドの新鋭スタジオが放つ、サバイバルゲームの新たな地平を、ぜひ多くのプレイヤーに体験してもらいたい。
基本情報
タイトル: Warranted Humanity
開発: Jovano Software
販売: Jovano Software
配信日: 2025年7月9日
定価: $11.99(Steam)
日本語: 現在未対応
Steam: https://store.steampowered.com/app/2821700/Warranted_Humanity/