今回は、上海のインディーゲーム開発スタジオPixpilが7年の歳月をかけて手がけた『Eastward』をご紹介。本作は、美しいピクセルアートで描かれた崩壊後の世界を舞台に、寡黙な鉱夫ジョンと不思議な少女珊の心温まる冒険を描いたアクションアドベンチャーゲームです。ドット絵が懐かしくも新しいこの作品をプレイして、思わず涙してしまいました……。

本作のストーリーは記憶と現実が入り混じった複雑な構成で、まず舞台となるのは”タタリ”と呼ばれる瘴気によって半ば壊滅した世界です。地下の町で暮らしていた寡黙な鉱夫のジョンと、彼が採掘中に発見した神秘的な力を持つ少女”珊(サン)”のコンビが、ひょんなことから外の世界へと旅立つことになります。残された唯一の列車に乗って各地を巡る構成で、章ごとに異なる街や人々との出会いが描かれていきます。

物語のカギを握っているのは、珊の隠された謎めいた力と、世界を蝕み続けるタタリの正体です。ジョンと珊の2人に隠された秘密と、各地で発生している超常現象がどう関係しているのかが見どころで、先の展開がまったく予想できず、最後にはちょっぴり泣かせるストーリーも感動的となっています。
そして何より、丁寧なピクセルアートで描かれた世界観が大きな魅力で、どこか懐かしさを感じさせる街を探索していると、子供の頃にわくわくしながら近所を冒険していた思い出が蘇ってくるほどです。『MOTHER』や『ゼルダの伝説』、そして90年代の日本アニメからインスピレーションを受けたという世界観は、ただのノスタルジーに留まらない新しい魅力を放っています。昭和レトロ的な看板が立ち並ぶダムの街など、細部まで作り込まれた描写には日本人でも親近感を覚えるレベルの完成度となっています。

ゲームプレイは見下ろし型のアクションアドベンチャーで、ジョンと珊の2人のキャラクターを状況に応じて切り替えながら進行します。ジョンはフライパンや爆弾、火炎放射器といった武器を駆使して戦闘を担当し、珊は神秘的な力でパズルギミックを解決していきます。戦闘はシンプルながらも爽快感があり、各マップに隠された宝箱や隠し通路の探索要素も充実しています。

プレイ時間は約30時間と大ボリュームですが、各エリアでの人々との交流や、珊が大好きなゲーム内RPG『大地の子』などのミニゲーム要素により、飽きることなく最後まで楽しめます。特に料理システムでは、各地で集めた食材を使ってジョンが得意の料理を作ることができ、冒険の合間のほっこりとした時間を演出してくれます。
Steam版での評価は13,000件超のレビューで83%が好評と、海外でも高く評価されています。DualShockersは9/10点、Screen Rantは10/10点を付けており、「フライパンでこんなに楽しめるとは誰が想像できただろうか」という評価もあるほどです。
現在、Steam版は2,680円(通常価格)で販売されており、Nintendo Switch版も同価格で配信中です。2024年には追加DLC「よみがえれ!カモメ町」もリリースされ、パラレルワールドでの農場生活が楽しめるコンテンツも加わっています。
美しいピクセルアートと心に響くストーリー、そして丁寧に作り込まれたゲームプレイが融合した『Eastward』は、インディーゲームの新たな可能性を示した記念すべき作品です。レトロな見た目に騙されることなく、ぜひその奥深い世界を体験してみてください。SwitchとPCで遊べるので、ドット絵アドベンチャーの最高峰をお見逃しなく!