2025年7月11日、Blender Studioは同スタジオとして17年ぶりとなるゲーム作品『DOGWALK』をSteamにて無料リリースした。本作は、大きくて愛らしい犬となって冬の森を探索する、短時間で楽しめるカジュアルなインタラクティブストーリーだ。
開発期間はわずか4ヶ月。BlenderとGodot Engineの連携パイプラインをテストし改善することを目的として制作された「マイクロゲーム」となっている。現在Steam評価は99%(119件中117件が好評)という驚異的な数字を記録。久々のBlender Studioゲームプロジェクトが、多くのプレイヤーに温かく迎えられている。

本作では、プレイヤーは「チョコメル」という名の大型犬を操作。飼い主の子供「ピンダ」を引き連れて、雪に覆われた森を探索する。目的は環境に隠されたカラフルなアイテムを集めて、雪だるまを飾り付けること。キャンプ場、森の小道、小川、凍った池などで構成されたミニチュアオープンワールドを自由に駆け回ることができる。
ゲームの大きな特徴は、実物のペーパークラフトをスキャンして作られたビジュアルだ。開発チームは実際に水彩画で彩色した紙のアセットを制作し、それをフォトグラメトリ技術でデジタル化。この手法により、温かみのある独特な質感を実現している。

ゲームプレイはシンプルながら奥深い。プレイヤーは犬として環境と自由にインタラクトできる一方、ピンダを引きずったり投げたりすることも可能。良い子として振る舞うか、いたずらっ子になるかはプレイヤー次第だ。失敗状態は存在せず、すべてがプレイヤー主導の体験となっている。
アニメーションも特徴的で、ストップモーション風の演出を採用。キャラクターは2~4フレームごとにポーズを変える手法で動き、独特の味わいを生み出している。ペッティングアニメーションだけでも10種類が用意されており、チョコメルとピンダの交流が丁寧に描かれている。
開発を指揮したのは、Julien Kaspar氏(ディレクター)とSimon Thommes氏(パイプラインTD)。アニメーションリードのRik Scholten氏、リガーのHjalti Hjalmarsson氏など、映画制作で培った経験をゲーム開発に活かしたチームが集結。Linux環境での開発にこだわり、オープンソースツールのみで制作された。
本作の真の目的は、BlenderとGodotの連携強化だ。すべてのアセットとレベルをBlenderで直接制作し、それをシームレスにGodotへエクスポートするワークフローを確立。この成果は将来的に両ソフトウェアの改善に活かされ、世界中のインディー開発者が恩恵を受けることになる。

興味深いのは、本作がCreative Commons Attribution 4.0ライセンスで公開されていること。ゲーム本体だけでなく、すべてのアセットとソースコードが自由に利用可能となっている。サポーターパックを購入すれば、Godot 4.4用の完全なプロジェクトファイルと制作過程のアートワークも入手できる。
Blender Studioは2008年の『Yo Frankie!』以来、実に17年ぶりのゲーム制作となった。当時はBlender Game Engine(現在は廃止)を使用していたが、今回はオープンソースゲームエンジンの雄であるGodotを採用。両プロジェクトのシナジーが期待される。
短時間で楽しめる「マイクロゲーム」というコンセプトのもと、ひとつのメカニックに焦点を当て、リプレイ性とプレイヤーの表現力で拡張される設計。モジュラーで再利用可能なアセットライブラリの構築も、今後のプロジェクトを見据えた重要な要素となっている。
対応機種:PC(Windows/Mac/Linux)
発売日:2025年7月11日
価格:無料
日本語:なし