友達と鳥を撮りに行こう。うるさくしたら逃げちゃうよ——マルチプレイ野鳥観察ゲーム『Flock Around』レビュー

友達と鳥を撮りに行こう。うるさくしたら逃げちゃうよ——マルチプレイ野鳥観察ゲーム『Flock Around』レビュー

更新: 2026年5月7日

「バードウォッチングって、どうせじっとして待つだけでしょ?」

正直なところ、そう思っていた。自然の中で静かに佇み、双眼鏡を片手に鳥が来るのをひたすら待つ——渋い趣味だとは思うけど、ゲームとして面白いのか? そんな半信半疑のまま手を伸ばした『Flock Around』は、そんな先入観をあっさりひっくり返してくれた。

本作は、カナダのインディースタジオSecret Plan Gamesが開発・販売し、Outerslothがパブリッシングに参加した、マルチプレイ野鳥観察・写真撮影ゲームだ。2026年4月24日にリリースされるや否や、Steamで圧倒的に好評(99% / 759件)という驚異的な評価を獲得。ゲームのお値段は580円という、コーヒー一杯分のお手頃価格である。

「しーっ!喋らないで!逃げちゃう!」

『Flock Around』の舞台は「Goose Lake Sanctuary」——太平洋岸北西部の鳥たちが住むのどかな自然保護区だ。プレイヤーはカメラを持つ丸っこいキャラクターとなり、6種類のバイオームに生息する約60種の鳥を写真に収めることを目指す。

本作の最大のポイントは、鳥たちがプレイヤーの行動に敏感に反応することだ。近づきすぎると飛んで逃げる。そして——本作のキモはここ——近接ボイスチャット(プロキシミティチャット)でうるさくしていても逃げる

友達と一緒にプレイしていると、こんな場面が必ず起きる。やっとレアな鳥を発見して、息を潜めながらそろそろ近づいていく。スマホで友達に「いたいた!こっちこっち!」と声をかけた瞬間——鳥が一瞬で消える。

この「しくじった感」が、なんとも言えない。悔しいのに、笑えてしまう。

PC Gamerのレビュアーも「1時間半かけてようやくキバラアメリカムシクイを見つけたのに、友達に静かにしてもらおうとしたら逃げられた」という体験を書いており、この緊張感は世界共通のようだ。

ガイドブックは全部埋められるか?

写真を撮るだけでは終わらないのが本作の奥深さだ。各鳥種をガイドブックに登録するには、4つのアングルを撮影する必要がある。

  • 正面:定番のポートレート
  • 背面:後ろ姿も記録する
  • :横顔もしっかり
  • 飛翔中:これが一番難しい

飛んでいる鳥を追いかけながらシャッターを切る……これが想像以上に難しい。ブレた写真でも意外と高評価をもらえることもあるが、ガイドブックを完全制覇しようとすると途端に本格的なバードウォッチャーの気持ちが理解できてくる。

さらに、通常の鳥のほかにシャイニー(色違い)と呼ばれるレア個体も存在する。出現時には特殊な音と演出が発生し、チャットにも通知が届くため、全員でダッシュして押しかけ……また逃げる、という流れも起きる。

写真を現像して、稼いで、おしゃれをする

撮影した写真は、マップ各所に設置された「Develop-o-Tron」で現像することができる。ここで写真を売ると、スコアに応じてゲーム内マネーを獲得。そのお金でコスメアイテムを購入し、自分のキャラクターをカスタマイズしていく。

リリース当日には「Dapper Pack」と称するスーツ・シルクハット・モノクル付きのサポーターパックも登場。バードウォッチャーがなぜかフォーマル装備で森を歩き回るというシュールな光景が楽しめる。

スコアに影響するのは「被写体との距離」「初撮影かどうか」などの要素。頭の上に鳥が乗ってくることもあり、そのままシャッターを切ることでユニークな写真が残る……ちなみに、飛び立つ際にフンを落とされることもあるらしい。

1人でも、10人でも

本作はソロでも楽しめるが、真価を発揮するのはやはりフレンドとのマルチプレイだ。最大10人まで同時接続可能で、公開ロビー機能も備わっている。知らない人と気軽に一緒にバードウォッチングできるのも、本作のユニークな魅力だろう。

協力してレアな鳥を追い詰めることもできれば、逆に誰かが狙っている鳥をわざと驚かせてドタバタを引き起こすような悪ふざけも、ゲームが想定しているコンテンツのひとつ。「笛」などのアイテムを使って鳥を引き寄せたり、逆に追い払ったりできる要素もあり、友人同士のコミュニケーションが自然と生まれる設計になっている。

実際のSteamレビューには、現役の野生生物学者が「カメラを持ち歩く職業柄、まさに仕事帰りに建設シミュレーターで遊ぶ建設作業員の気持ちで遊んでいる」と書き込んでいた。それほどリアルなバードウォッチング体験に近い感覚があるということだろう。

正直なところ、気になる点も

写真の採点システムは、ゲーム開始直後はやや大雑把に感じることがある。木の枝や地面しか写っていない写真でも3つ星をもらえる場面があるらしく、評価基準が一定していない印象を持つプレイヤーもいる。

また、ゲームボリューム自体は明確な「終わり」を感じやすく、ガイドブックをすべて埋めてしまうとやることが少なくなる点は否めない。開発チームはアップデートで新バードを追加し続けているようなので、今後の展開に期待したい。

それでも、580円というプライスタグを考えれば、これだけのコンテンツと笑いが詰まっているのは破格と言っていい。

「静かに」が最大の難関

『Flock Around』は、のんびりしているようでいて、実はプレイヤーに「観察力」「忍耐力」「自制心」を求めてくるゲームだ。鳥を前にして、友達との会話を一瞬だけ止められるか——それだけが、ガイドブックを埋められるかどうかの分かれ目になる。

コージーでゆるい、でもなぜかちょっとだけ真剣になってしまう。そんな不思議な引力を持った一作だ。フレンドを誘って、Goose Lake Sanctuaryへ。静かにね。


基本情報

開発: Secret Plan Games

販売: Secret Plan Games / Outersloth

リリース日: 2026年4月24日

価格:580円

プラットフォーム: PC(Windows / macOS)

プレイ人数: 1〜10人(オンラインCo-op対応)

言語: 英語・日本語・その他8言語対応

ジャンル: マルチプレイ野鳥観察・写真撮影・コージー

Steam評価: 圧倒的に好評(99% / 759件のレビュー)


購入リンク

Steam: https://store.steampowered.com/app/3618030/Flock_Around/


公式リンク

公式サイト: https://secretplan.ca/

X (Twitter): https://x.com/SecretPlanGames

Discord: https://discord.gg/M627tQj3HQ

YouTube: https://www.youtube.com/@SecretPlanGames

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