須田剛一が放つ「狂気」こそが最高のエンタメだった――『ROMEO IS A DEAD MAN』は予測不可能なブラッディアクションの傑作

須田剛一が放つ「狂気」こそが最高のエンタメだった――『ROMEO IS A DEAD MAN』は予測不可能なブラッディアクションの傑作

更新: 2026年2月23日

最初はワケがわからなかった。でも、それがいい

正直に告白すると、プレイ開始から30分くらいは「何が起こってるんだ……?」という困惑しかなかった。

主人公ロミオは恋人ジュリエットとデートの約束をしていたのに、突然「ホワイトデビル」なる謎の生物に襲われ、顔面半分と右腕をもぎ取られる。瀕死の状態から祖父ベンジャミンの手で「デッドギア」というマスクを装着され、生と死の境界に立つサイボーグ「デッドマン」として蘇生。時空そのものが崩壊した世界で、FBI時空警察の捜査官として時空犯罪者を追うことになる――しかもその犯罪者の中に、失踪した恋人ジュリエットの姿があるという。

「え、ちょっと待って。シェイクスピア? 時空警察? サイボーグ? 全部盛り?」

そう、『ROMEO IS A DEAD MAN』は須田剛一(SUDA51)率いるグラスホッパー・マニファクチュアが5年ぶりに送り出す完全新作で、彼らの「やりたい放題」が全開の作品なのだ。

でも不思議なことに、この混沌とした設定が進むにつれて、むしろ「これでいいんだ」と思えてくる。なぜなら、この予測不能さこそが『ROMEO IS A DEAD MAN』最大の魅力だからだ。

刀と銃を使い分ける「ブラッディアクション」が最高に気持ちいい

ゲームの基本は、第三人称視点のアクションバトル。ロミオは近接武器4種(刀、大剣、ナックル、スタッフ)と遠距離武器4種(ピストル、ショットガン、マシンガン、ロケットランチャー)を使い分けて、時空に巣食う「ロッター」と呼ばれるゾンビのような敵を倒していく。

この戦闘システムが、シンプルながら驚くほど爽快なのだ。

近接攻撃で敵の血を吸収し、それをエネルギーに変換して「ブラッディサマー」という必殺技を放つ。画面全体が血と薔薇の花びらで覆い尽くされ、敵が爆発四散する瞬間の快感は、まさに「ブラッディアクション」の名にふさわしい。

武器ごとに性能が大きく異なるのも面白い。私は序盤から刀とマシンガンの組み合わせにハマった。刀の素早い連撃で敵の懐に入り込み、距離を取られたらマシンガンで制圧する。この立ち回りを覚えると、どんな敵の群れが来ても冷静に対処できるようになる。

さらに、戦闘中に植えた「バスタード」という植物型スキルが戦況を大きく変える。敵を凍らせるもの、範囲ダメージを与えるもの、体力を回復するもの――最大4つまで装備できるこのシステムが、戦略の幅を広げてくれる。特にロケットランチャーのような単発高火力武器を使う場合、凍結バスタードで敵を固めてから一網打尽にする戦法が病みつきになった。

難易度は「チョコレート」で選ぶ。この発想がもう須田ゲー

難易度選択の方法がまた独特だ。普通のゲームなら「イージー」「ノーマル」「ハード」と表示されるところを、本作では美しいチョコレートボックスから好きなチョコレートを選ぶ。

最も簡単な難易度は甘いミルクチョコレート、最も難しいのはビターなオレンジチョコレート。見た目の美しさとゲームの難易度をこんな形で表現するセンスに、思わず笑ってしまった。

そして実際、オレンジチョコレート(最高難易度)は容赦ない。敵の攻撃を2〜4発受けるだけで死ぬ。ボス戦では一撃必殺の攻撃を完璧なタイミングで回避しなければならず、少しでもミスすれば即座にゲームオーバー。だが、この緊張感こそがアクションゲームの醍醐味だと再認識させられた。

ビジュアルの「無法地帯」ぶりが凄まじい

『ROMEO IS A DEAD MAN』のビジュアル表現は、もはや「統一感がないことが統一感」と言っていいレベルだ。

3Dアクションパートは現代的なグラフィックで描かれるが、拠点となる宇宙船「ラストナイト号」は16bitピクセルアートスタイル。カットシーンはモーションコミック、2Dアニメーション、ストップモーション、実写合成など、あらゆる手法が混在する。アイテムショップに入ると『The Silver Case』シリーズのフィルムウィンドウスタイルに切り替わり、セーブ画面はレトロなコンピューターのエラーメッセージ風。

普通のゲーム開発なら「統一感がない」と却下されそうなこの混沌が、『ROMEO IS A DEAD MAN』では見事に機能している。なぜなら、この作品のテーマそのものが「時空の崩壊」だからだ。壊れた世界を、壊れたビジュアルで表現する。その徹底ぶりに、グラスホッパーの覚悟を感じた。

タイトル画面で流れる日本語ラップに度肝を抜かれる

ゲームを起動すると、いきなり日本語ラップが流れ出す。スチャダラパーの楽曲を使用したこのオープニングは、初見では「え、何これ?」と困惑するが、プレイを進めるうちに妙にクセになる。

BGMも全体的に素晴らしい。バトル中は激しいロックやエレクトロが流れ、拠点では落ち着いたジャズ風の曲が流れる。特に印象的だったのは、精神病院ステージで使われたホラー調の音楽。ゴキブリが這い回る不気味な空間と相まって、ジョン・カーペンターの映画『パラダイム』を思い出させる演出だった。

サブシステムも「ふざけてる」けど「丁寧」

本作には戦闘以外にも様々なサブシステムがある。

母親とカツカレーを作るミニゲーム、看護師とクイズに答えて健康チェック、トレーニングルームでのステータス強化用アーケードゲーム「デッドギアキャノンボール」――どれもが本編とは無関係に見えるが、実はロミオの成長に直結している。

特に「デッドギアキャノンボール」は中毒性が高い。迷路のようなステージを飛び回りながら、欲しいステータスアップアイテムを集めていくシンプルなゲームだが、ルートを最適化する楽しさがある。しかもいつでもリセットできるので、試行錯誤しながら自分だけのビルドを作り上げる過程が楽しい。

ストーリーは「分からない」けど「考えたくなる」

正直に言うと、ストーリーは一度のプレイでは完全には理解できなかった。

ジュリエットは本当に悪者なのか? 祖父ベンジャミンの真の目的は? 時空崩壊の真相は? エンディングを迎えた後も、多くの謎が残る。

でもそれでいいのだと思う。須田ゲーはいつもそうだった。すべてを明確に説明せず、プレイヤーに解釈の余地を残す。その曖昧さが、クリア後も頭の中でゲームが回り続ける理由になる。

実際、私はエンディング後に何度も特定のセリフを思い返している。「すべてのセリフに複数の意味が込められている」と感じるからだ。この「考察したくなる」感覚は、他のゲームではなかなか味わえない。

賛否両論だからこそ、唯一無二

Steam評価は90%が好評(Very Positive)で、プレイヤーからは高い支持を受けている。一方で、メディアレビューは賛否が真っ二つに分かれた。10点満点中9点をつけるメディアもあれば、5点満点中2点という厳しい評価もある。

この極端な評価の割れ方こそが、『ROMEO IS A DEAD MAN』の本質を物語っている。万人受けを狙わず、自分たちの作りたいものを貫く。その姿勢が、一部の人には刺さらないが、ハマる人には深く刺さる。

公式Xアカウントが高評価レビューだけでなく、低評価レビューまで堂々と紹介したのも象徴的だ。「耳が痛い言葉も受け入れてこそ真の天才。精進あるのみじゃ」というベンジャミンのコメント付きで。この度胸と余裕が、グラスホッパーらしい。

ゲーム業界の「パンク」を体現する作品

今のゲーム業界は、確かに厳しい状況にある。スタジオ閉鎖、大量解雇、過度なライブサービス化、ジャンルの平坦化――そして生成AIの台頭による創造性の危機。

そんな中で、グラスホッパー・マニファクチュアは「パンク」であり続けている。大手スタジオ級の予算で、他の誰にも作れないゲームを作る。それが『ROMEO IS A DEAD MAN』だ。

本作は完璧ではない。ボス戦の一部は理不尽に感じるし、サブスペースエリアでのパフォーマンス低下も気になる。キャラクターの掘り下げが不足している部分もある。

でも、それでも私は『ROMEO IS A DEAD MAN』を強く推したい。なぜなら、この「唯一無二」の体験は、他のどこでも得られないからだ。

プレイ時間は12〜15時間。クリア後のニューゲームプラスも用意されている。須田ゲーが好きな人なら間違いなく楽しめるし、『No More Heroes』や『Killer7』『Lollipop Chainsaw』を知らない人でも、「普通じゃないゲーム」を求めているなら、これは最高の入口になるはずだ。

血と薔薇と狂気に彩られた、予測不可能な時空旅行へようこそ。


基本情報

タイトル: ROMEO IS A DEAD MAN(ロミオ・イズ・ア・デッドマン)
開発: GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
パブリッシャー: GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
リリース日: 2026年2月10日
プラットフォーム: PC (Steam / Microsoft Store) / PlayStation 5 / Xbox Series X|S
価格: 通常 5,500円(税込)
ジャンル: アクション・アドベンチャー
プレイ人数: 1人
CEROレーティング: Z(18歳以上のみ対象)
対応言語: 日本語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、韓国語、簡体字中国語、繁体字中国語、ポルトガル語、イタリア語

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