
2026年1月22日、Steamで早期アクセスが開始された『Bladesong(ブレイドソング)』。「究極の刀鍛冶ゲーム」という触れ込みに、正直なところ半信半疑だった。スライダーをいじって剣を作る、ただそれだけのゲームに、一体どれほどの深みがあるというのか?
しかし、筆者は完全に間違っていた。本作は単なる「剣作りゲーム」ではない。刀鍛冶として生きること、その全てを体験させてくれる作品なのだ。気がつけば深夜2時、筆者は依頼人の要求を満たすべく、刃の角度を0.1度単位で調整していた。
鋼に込められた物語――エレンの砦で生き残れ
本作の舞台は、人類が滅亡の危機に瀕した終末世界。かつて世界を守護していた「歌」は沈黙し、狂気と絶望が支配する荒廃した大地が広がっている。そんな中、唯一人間らしい営みが残る場所がある。それが「エレンの砦」だ。
強靭な意志と剛腕を持つ「仮面の王」によって統治されるこの砦は、暴君による恐怖政治と救世主による庇護という、二面性を持つ最後の安息の地。プレイヤーはこの砦に辿り着いた一人の刀鍛冶として、金貨と要求を携えて訪れる客たちのために、命を賭けた刃を鍛え上げていく。

興味深いのは、前任の鍛冶師が謎の失踪を遂げているという設定だ。依頼をこなし、砦の住民と交流を深めていくうちに、この失踪事件が単なる偶然ではないことが徐々に明らかになっていく。エレンの砦の暗部、仮面の王の真の目的、そして刀鍛冶という職業が持つ重要性――テキストベースのRPG要素が、剣作りというコア体験に深い意味を与えているのだ。
スライダー調整という名の芸術――自由度の極致
本作の刀鍛冶システムは、「自由すぎて困る」という表現がぴったりだ。Kingdom Come: Deliveranceの『Legacy of the Forge』DLCや、他の鍛冶ゲームを経験してきた筆者でも、その自由度には驚かされた。

剣の制作は、まず刀身の成形から始まる。フリーフォームのブレードシェイピングツールを使い、刃の形状を1ミリ単位で調整可能。西洋の両刃剣から東洋の片刃刀、ファンタジー世界の魔剣まで、あらゆるデザインを形にできる。
刀身が完成したら、今度はモジュラー式の柄の組み立てだ。鍔(ガード)、柄(グリップ)、頭(ポンメル)をそれぞれ150種類以上のパーツから選択し、金属・革・木材・黒曜石・象牙など30種類以上の素材で装飾を施す。
さらに驚くべきは、本作が物理演算に基づいた「バランス」を重視していることだ。重心位置、慣性モーメント、切れ味、耐久性――すべてが実際の刀剣工学に基づいて計算され、依頼人の要求に応じて微調整が必要になる。「鋭く、かつバランスの取れた片手半剣」という注文を受けたとき、筆者は刃を薄くしすぎて耐久性が落ち、何度も作り直す羽目になった。
だが、ここに本作の真髄がある。失敗しても素材を無駄にすることはなく、何度でも調整し直せる。ゲームとして楽しめるよう配慮されつつ、リアルな制約も課される――この絶妙なバランスこそが、『Bladesong』を唯一無二の体験にしているのだ。
刀鍛冶として生きる――昼の仕事、夜の探索
本作のゲームループはシンプルだ。昼は依頼を受けて剣を鍛え、夜は砦の街を探索する。しかし、このシンプルなサイクルが、驚くほど有機的に結びついている。

毎朝、プレイヤーには限られた「アクションポイント」が与えられる。各依頼には必要APが設定されており、どの仕事を優先するかの判断が求められる。戦士が急ぎで必要とする実用的な剣か、貴族が求める美しく装飾された儀礼剣か、それとも傭兵が要求する重厚な両手剣か――選択次第で、得られる経験値や報酬、そして砦内での評判が変化していく。
夜のパートでは、テキストアドベンチャー形式で砦を探索できる。素材商人との取引、派閥との交渉、反乱軍との接触――プレイヤーの選択が物語を分岐させ、翌日に利用できる素材や受けられる依頼にも影響を与える。
筆者が特に感銘を受けたのは、この二つのパートが決して別々ではないということだ。夜に出会った人物が翌日に依頼人として現れたり、昼に作った剣が夜の事件で使用されたりと、プレイヤーの行動すべてが砦の運命に影響を与えていく。この「生きている世界」の感覚が、没入感を極限まで高めているのだ。
物理法則が支配する鍛冶場――現実とゲームの狭間で
本作のレビューでしばしば言及されるのが、「スライダー調整ゲー」という批判的な意見だ。確かに、表面的には刃の幅・厚み・カーブといったパラメータをスライダーで調整するだけに見える。しかし、これは本質を見誤っている。

『Bladesong』の真の革新性は、その「制約の美学」にある。プレイヤーは完全に自由ではない。依頼人の要求という枠組みの中で、限られた素材とスキルを駆使して、最適解を見つけ出さなければならない。
例えば、「鋭さ80以上、バランス60〜75、重量1.2kg以下」という要求があったとする。単純に刃を薄くすれば鋭さは上がるが、バランスが崩れる。柄を重くしてバランスを取ろうとすれば、総重量が制限を超える。この「トレードオフのパズル」こそが、本作の核心なのだ。
レベルが上がるにつれて、カーブドブレード(湾曲刃)、彫刻、複雑なフラー(溝)といった高度な技術が解放される。これらを駆使することで、初期には不可能だった要求も満たせるようになっていく。この成長曲線が実に気持ちいい。
クリエイティブモードという無限の遊び場
キャンペーンモードでのストーリー体験も素晴らしいが、『Bladesong』にはもう一つの顔がある。それが「クリエイティブモード」だ。

このモードでは、一切の制限なしに剣を作れる。全ての素材、全てのパーツ、全ての装飾が最初から利用可能で、プレイヤーは純粋に「自分が理想とする一振り」を追求できる。
本作のコミュニティでは、「Magic Words」と呼ばれる共有機能が大きな盛り上がりを見せている。完成した剣をコード化して他のプレイヤーと共有できるこのシステムにより、コミュニティチャレンジが定期的に開催され、テーマに沿った作品を投稿し合うイベントが活発に行われているのだ。
さらに驚くべきは、STLファイルのエクスポート機能だ。ゲーム内で作成した剣を3Dプリンター用のデータとして出力できるため、バーチャルの作品をリアルの装飾品として手元に置くことができる。デジタルとフィジカルの境界を越えたこの機能は、クリエイターにとって夢のような体験と言えるだろう。
Moon StudioとNinja Theoryの血統――開発背景に見る情熱
『Bladesong』を開発したのは、ドイツの新興スタジオSUN AND SERPENT creations。2023年に設立されたばかりのこのスタジオだが、そのメンバーには『Ori』シリーズで知られるMoon Studiosと、『Hellblade』で名を馳せたNinja Theoryの元開発者が名を連ねている。

本作は彼らのデビュータイトルであり、2024年のDevGamm Gdanskでは「Upcoming Game Prize」を受賞。さらにnordmediaから最大72,000ユーロのプロトタイプ資金を獲得するなど、業界からも高い評価を受けている。
パブリッシャーを務めるMythwrightは、2024年設立の新興パブリッシャーながら、『Thronefall』『Going Medieval』といった話題作を手がける業界ベテランによって運営されている。Steam上での18万件を超えるウィッシュリスト登録、そして早期アクセス開始1ヶ月で127万本もの剣が制作されたという実績が、本作への期待の高さを物語っている。
Steam評価95%が示す圧倒的支持――なぜプレイヤーは魅了されるのか
本作のSteam評価は、944件のレビュー中95%が好評という驚異的な数字を叩き出している。特筆すべきは、批判的なレビューですら「クリエイティブモードだけで何十時間も遊べる」「ストーリーがもっと欲しい」といった、いわば「もっと遊びたい」という欲求の表れであることだ。

海外レビューサイトBig Boss Battleは「Bladesongは鍛造場から出てきたばかりの研ぎ澄まされた作品」と評し、The Punished Backlogは「ファンタジー、歴史、武器、あるいは良質な物語に興味があるなら、これ以上のオススメはない」と絶賛。TheSixthAxisは「ユニークで、思慮深く、そして完全に魅了される体験」と締めくくっている。
日本でも、AUTOMATONや電撃オンライン、ファミ通などの主要メディアが軒並み取り上げ、「僕が考えた最強の剣が作れる」というキャッチーな見出しで話題を集めた。特に、3Dプリンター出力機能は日本のメディアでも大きく注目されている。
こんな人にオススメ――刀剣愛好家から物語好きまで
『Bladesong』は、実に多様なプレイヤー層にアピールする作品だ。

まず、刀剣や武器に興味がある人にとっては天国だろう。実際の刀剣工学に基づいた物理演算、歴史的に正確なデザイン、そして無限のカスタマイズ性――刀剣マニアが求める全てがここにある。
クリエイター気質の人にも強くオススメしたい。クリエイティブモードでの制作、コミュニティでの作品共有、3Dプリント出力――「自分だけの作品を作り、世界に発信する」という体験は、他では得られない満足感をもたらすだろう。
物語重視のプレイヤーにとっても、エレンの砦を巡る陰謀、派閥間の政治闘争、そして選択によって変化する結末は十分に魅力的だ。テキストベースのRPG『Disco Elysium』や『Citizen Sleeper』が好きな人なら、本作のナラティブにも夢中になるはずだ。
そして、Kingdom Come: Deliveranceのような「職人シミュレーター」が好きな人。本作は剣を作るだけでなく、刀鍛冶として生きる体験を提供してくれる。依頼をこなし、素材を集め、技術を磨き、評判を高めていく――このライフシミュレーション的な側面が、驚くほど中毒性が高いのだ。
唯一無二の鍛冶体験――刀鍛冶という生き方
『Bladesong』は、単なる「剣作りゲーム」ではない。これは刀鍛冶として生きること、その喜びと苦悩、創造の興奮と依頼達成の達成感、そして終末世界で技術によって人々を支えるという使命感を体験させてくれる作品だ。

スライダーを0.1度調整する。素材を吟味する。依頼人の真意を読み取る。夜の街で情報を集める。そして完成した一振りを手渡す――この一連の流れが、驚くほど「生きている」のだ。
Steam評価95%という数字は、決して偶然ではない。本作は刀剣、クラフティング、物語、そして選択の全てを高次元で融合させた、真に「究極の刀鍛冶ゲーム」なのだから。
エレンの砦はあなたを待っている。鋼を叩く音が、今日も鳴り響く。
基本情報
開発: SUN AND SERPENT creations
販売: Mythwright
リリース日: 2026年1月22日(早期アクセス)
価格: ¥2,300(通常版)
プラットフォーム: PC(Steam / Epic Games Store)、PlayStation 5(予定)、Xbox Series X|S(予定)
プレイ人数: 1人
言語: 日本語、英語、ドイツ語、ポーランド語、簡体字中国語
ジャンル: 刀鍛冶シミュレーター、テキストベースRPG
Steam評価: 圧倒的に好評(95% – 944件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/2305640/Bladesong/
Epic Games Store: https://store.epicgames.com/ja/p/bladesong-441f44
公式リンク
公式サイト: https://mythwright.com/games/bladesong
X (Twitter):https://x.com/bladesonggame
Discord: https://discord.gg/SM2jyxt7qM
Reddit:https://www.reddit.com/r/bladesong/



