株式市場でデッキを組む?『Insider Trading』が教えてくれた、欲望と破滅の紙一重

株式市場でデッキを組む?『Insider Trading』が教えてくれた、欲望と破滅の紙一重

更新: 2026年2月27日

Steam を漁っていたら、あまり見かけないようなゲームに出くわした。「Insider Trading」――日本語で言えば「インサイダー取引」である。違法行為じゃないか、と思いつつもストアページを覗いてみると、そこには株式市場を舞台にしたローグライクデッキビルダーという、一風変わったコンセプトが待っていた。

本作が扱うのはモンスターとの戦いでもポーカーの役でもない。株価だ。カードを駆使して株価を操り、利益を確定させる。そのシンプルながら奥深いゲームデザインに、気づけば何時間もプレイしていた。

株価操作という名のデッキビルダー

本作の目標は、毎週金曜日までに設定された目標金額を達成すること。プレイヤーは様々な戦略を持つトレーダーの一人となり、市場を動かすカードデッキを駆使して取引に挑む。カードを出すことで株価が上下し、その変動を利用して売買を繰り返していく。

最初は単純だ。株価を上げるカードを出し、価格が十分に上がったところで「取引」ボタンを押す。すると保有している全ての株が売却され、利益が確定される。だが、ここからがこのゲームの真髄だ。

ゲームが進むにつれて分かってくるのは、「ひたすら株価を上げればいい」わけではないということ。株価が高騰しすぎると、次に株を買う余裕がなくなり、自分自身が市場から締め出されてしまう。つまり、利益を追求しすぎると自滅する――これこそが本作が描く「欲望と破滅の紙一重」なのだ。

カードタイプとコンボが生み出す爆発力

本作には120枚以上のカードが存在し、それらは12の異なるタイプに分類されている。同じタイプのカードを1ターンに複数枚出すと「コンボ効果」が発動し、予想を超える価格変動が起こる。

例えば、Bull(強気)カードを連続で出せば株価は急騰し、Bear(弱気)カードを重ねれば株価は暴落する。だが重要なのは、この暴落すらも戦略の一部だということだ。株価が低いときに大量に買い込み、その後急騰させて売り抜ける――このサイクルをいかに効率的に回すかが、勝利への鍵となる。

さらに、50種類以上のパーク(特殊能力)が存在し、その中には強力だが危険なトレードオフを伴う「呪いのパーク」も含まれている。ハイリスク・ハイリターンな選択肢を取るか、安定志向で進むか――プレイヤーの判断が問われる。

Greed(欲望)システムがすべてを加速させる

本作で最も特徴的なシステムが「Greed(欲望)」だ。これはロケット燃料のように利益とリスクを加速させる仕組みで、プレイ中の選択次第でどんどん蓄積されていく。

Greedが高まると、利益の倍率が上がる一方で、株価の変動も激しくなり、思わぬ暴落で全てを失うリスクも高まる。あと一回だけ、もう一回だけ――そんな欲望に駆られて取引を続けた結果、市場が崩壊して破産する。これが本作の醍醐味であり、恐ろしさでもある。

PC Gamerのレビューでは、「デッキビルダーで初めて、デッキを強くしすぎて失敗した」と評されているほどだ。普通のデッキビルダーでは強いデッキを組むことが目標だが、本作では「強すぎるデッキ」が自滅の原因になる。この逆説的な面白さが、ローグライク好きを唸らせている。

個性豊かなトレーダーたちとイベントシステム

各ランでプレイするキャラクターは、それぞれ独自の戦略と初期デッキを持っている。彼らの特殊メカニクスを理解することで、新たな戦略の可能性が開かれる。

また、ランの途中でランダムに発生するイベントや「Pills(錠剤)」と呼ばれるアイテムは、計画を大きく狂わせることもあれば、起死回生のチャンスをもたらすこともある。予測不能な展開に適応する力が試される。

難易度設定とやり込み要素

本作には6段階の難易度が用意されており、初心者から上級者まで幅広く楽しめる設計になっている。最高難度では、わずかなミスが命取りになる緊張感あふれるプレイが味わえる。

また、本作はGodot Engineで開発されており、Windows、Mac OS、Linuxに対応。Steam Deckでも快適に動作するため、いつでもどこでも市場を操ることができる。

中毒性の高いサウンドとビジュアル

レトロなピクセルグラフィックスと、リズムに合わせて鳴る効果音が絶妙にマッチしている。Steam レビューでは「サウンドトラックが中毒性抜群」「UIのフィードバックが心地よい」といった声が多く、視覚と聴覚の両面でプレイヤーを引き込む作りになっている。

CRTエフェクトやノイズ、ブルーム、スクリーンシェイク、フラッシュエフェクトは個別にオン・オフ可能なので、好みに合わせて調整できるのも嬉しい。

ソロ開発者が作り上げた傑作

本作を手がけたのは、ニューヨークと韓国・水原を拠点とするソロ開発者Naiive。Naiive Studioにとって初の商業リリース作品だが、長期間のプレイテストとフィードバックを経て、驚くほど洗練されたゲームに仕上がっている。

開発者自身がSteamコミュニティで述べているように、「デモ、プレイテスト、そして無数の反復が、今のゲームを形作った」。プレイヤーの声を真摯に受け止め、改良を重ねた結果が、現在の高評価につながっている。

プレイした感想:計算と直感の狭間で

実際にプレイしてみて、最も印象的だったのは「考えすぎても、直感に頼りすぎてもダメ」というバランス感覚の重要性だ。

序盤は計算通りに進められるが、中盤以降はカードドローの運やイベントの影響で、計画通りにいかなくなる。そのときに「ここで欲張るべきか、安全策を取るべきか」という判断が勝敗を分ける。

特に印象的だったのは、ある週で目標金額の2倍以上の利益を出したとき。「このまま行けば余裕だ」と思った次の週、市場が暴落して全てを失い、ゲームオーバーになった経験だ。この「調子に乗った瞬間の転落」こそが、本作の魅力であり、教訓でもある。

対応言語と価格

本作は日本語を含む10言語に対応しており、日本のプレイヤーも安心してプレイできる。対応言語は、英語、簡体字中国語、日本語、韓国語、フランス語、ドイツ語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語。

価格は通常1,500円だが、発売記念として期間限定で15%オフの1,275円で販売中(2026年2月時点)。デモ版も用意されているので、まずは試してみるのもいいだろう。

総評:ローグライクデッキビルダーの新境地

『Insider Trading』は、株式市場という一見堅苦しいテーマを、中毒性の高いゲームプレイに昇華させた傑作だ。Balatroのようなコンボの爽快感と、Slay the Spireのような戦略性の深さを兼ね備えながら、独自の「欲望管理」という新しい要素を加えている。

「もう一回だけ」が止まらなくなるゲームデザイン、予測不能な展開、そして自分の欲望と向き合う心理戦――これらすべてが絶妙に組み合わさり、唯一無二の体験を生み出している。

ローグライクやデッキビルダーが好きなら、絶対にプレイすべき一作だ。ただし、注意してほしい。このゲームは、現実のように、あなたの欲望を試してくる。


基本情報

  • ゲーム名: Insider Trading
  • 開発者: Naiive Studio(Naiive)
  • パブリッシャー: Naiive Studio
  • リリース日: 2026年2月18日
  • 価格: 1,500円(発売記念セール中:1,275円)
  • プラットフォーム: Steam(Windows / Mac OS / Linux / Steam Deck対応)
  • 対応言語: 日本語、英語、簡体字中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語
  • ジャンル: ローグライク、デッキビルダー、ストラテジー、ターン制
  • プレイ時間: 1ラン30分〜1時間程度
  • 難易度: 6段階(初心者〜エキスパート)
  • Steam評価: 非常に好評(91%ポジティブ、107レビュー)※2026年2月21日時点

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