正直に告白しよう。最初に『Mewgenics』のトレイラーを見た時、筆者は困惑していた。画面にはキモ可愛い猫たちがうろうろしており、なぜか戦闘をしている。かわいいのか、気持ち悪いのか、頭がいいゲームなのか、悪ふざけなのか。第一印象はかなり混乱していた。
しかし、実際に触ると印象は変わる。これは単なる「猫ゲー」ではない。猫を繁殖させ、血統をつなぎ、変な能力を受け継がせ、ターン制の戦場へ送り出す。笑ってしまうほど悪趣味なのに、判断のひとつひとつはかなり硬派だ。『The Binding of Isaac』のEdmund McMillenと、『The End Is Nigh』のTyler Glaielが、長い時間をかけて煮詰めたシステムの怪物である。
2026年7月時点で、この記事は少し見直す必要がある。発売直後の熱狂は本物だったが、Steamでは直近レビューが「やや落ち着いた」見え方になっている。さらに、Steamストア上の対応言語に日本語は含まれていない。Steam Deckでもレビュー絞り込みはできるが、操作感には人を選ぶ部分がある。つまり今の『Mewgenics』は、ただ絶賛して終わるより、「どこが刺さり、どこで引っかかるか」を整理した方が読み手に親切なゲームになっている。
猫を育てるというより、血統をこじらせていくゲーム
まさかの遺伝システム!猫の血統管理がこんなに奥深いなんて
『Mewgenics』の核となるのは、猫の繁殖と世代継承だ。プレイヤーは自宅で猫を増やし、クラスや能力、突然変異、変なクセを見ながら、次の冒険に送り出す猫を選んでいく。
ここで面白いのは、強い猫を作る作業が、きれいな育成計画になりきらないことだ。理想の血統を目指しているはずなのに、妙な欠点を持った猫が生まれたり、思ってもいない組み合わせが急に噛み合ったりする。数字を最適化しているつもりが、いつの間にか「この猫はちょっと残したい」と思っている。
この感覚はかなり人間くさい。システム的には遺伝とビルドの管理なのだが、画面上では奇妙な家族を増やしているように見える。かわいがっているのか、実験しているのか、自分でも分からなくなる。その居心地の悪さが、妙に『Mewgenics』らしい。
戦闘はふざけていない

繁殖で生まれた猫たちは、4匹のチームを組んで冒険へ向かう。戦闘はグリッド形式のターン制で、位置取り、クラス構成、アビリティの組み合わせ、アイテムの使い方が勝敗を大きく分ける。
見た目はかなりふざけている。猫が暴れ、変な敵が出てきて、下品な効果も飛び交う。しかし、戦術ゲームとしては思った以上に真面目だ。1マスの移動を間違えたせいで被弾が増えたり、温存したかった猫を危険にさらしたりする。雑に遊ぶと、ちゃんと痛い目を見る。
Steamストアでは、1000以上のアビリティ、900以上のアイテム、200以上の敵やボス、281の実績が紹介されている。数字だけ聞くと盛りすぎに見えるが、実際の魅力は「大量にある」ことより、「変なもの同士が噛み合った時に、ちゃんと戦術になる」ことにある。悪ふざけの皮をかぶった、かなり手触りの重いローグライクだ。
Isaacの影があるからこそ、今また見られている
2026年6月末から7月にかけて、『The Binding of Isaac: Rebirth』がSteamで再び大きく注目された。大幅なセールをきっかけに同時接続プレイヤー数の記録を更新し、GamesRadar+やPC Gamerでも、IsaacがMewgenicsのピークを上回ったことが取り上げられている。
これは『Mewgenics』にとって悪い話ではない。むしろ、Edmund McMillen作品を追っている人にとって、「Isaacの次に何を作ったのか」「Isaacと比べてどう違うのか」という関心が戻ってきている。
ただし、両者は同じローグライク文脈にいても、かなり別物だ。Isaacは反射神経と瞬間判断の比重が強い。一方で『Mewgenics』は、戦闘前の準備、血統、長期的なリソース管理が重い。Isaacのノリだけを期待すると、テンポの違いに戸惑うかもしれない。
気になる点も正直に
まず、Steamレビューの見え方は記事公開当初から変わっている。Steamストア上では全言語レビュー50,693件で「非常に好評」だが、直近30日のレビューは1,896件中70%ポジティブで「やや好評」に近い表示になっている。英語レビューは27,316件中91%ポジティブでかなり強い一方、最近の評価だけを見ると、発売直後の熱狂よりは落ち着いてきた。
理由として大きいのは、遊びの癖が強すぎることだと思う。長く遊べる、奥が深い、変なことが起きる。それは確かに魅力だが、裏返すとテンポが重く、情報量が多く、ユーモアも人を選ぶ。刺さる人には何百時間でも遊べるが、合わない人は序盤から「これは自分向けではない」と感じやすい。
次に、日本語対応には注意したい。以前の記事では日本語対応ありとしていたが、2026年7月時点のSteamストアでは、対応言語は英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語(ブラジル)で、日本語は確認できない。カード効果、クラス、イベント、遺伝要素を読み続けるゲームなので、英語に不安がある人にはここがかなり大きな壁になる。
Steam Deck目的の人も、少し慎重に見た方がいい。Steamストアのレビュー欄には「Steam Deckで主にプレイ」の絞り込みがあるため、実際に遊んでいる人はいる。ただし、家庭用ゲーム機向けのレイアウトを待ちたいという声もあり、細かい操作や文字量を考えると、完全に寝転び向きのゲームとは言い切れない。
そして、悪趣味なユーモアは本当に悪趣味だ。血、排泄物、性的なニュアンス、身体の壊れ方、気まずいジョークが普通に出てくる。McMillen作品らしさではあるが、「猫がかわいいから癒やされたい」という入口で来ると、だいぶ違うものを渡される。
長く遊ぶほど、変な愛着が出てくる

『Mewgenics』は、最初からすべてを理解させてくれるゲームではない。猫の能力、家のアップグレード、血統のつなぎ方、戦闘での役割分担が少しずつ見えてくる。最初は混乱していたはずなのに、気づくと「この系統の猫をもう少し残したい」と考えている。
このゲームの怖いところは、失敗しても完全には終わらないことだ。失敗は血統や家の記憶として残り、次の判断ににじむ。ローグライクらしいリセット感と、育成ゲームらしい未練が同時にある。
だから、きれいな攻略チャートをなぞるより、自分の家に変な猫が増えていく過程を楽しめる人に向いている。強いビルドを作るだけではなく、事故や失敗を含めて「うちの猫たちの歴史」になっていく。その感覚が出てくると、かなり抜け出しにくい。
早く触る人、少し待つ人

今の『Mewgenics』を楽しみやすいのは、英語のテキストを読むことに抵抗がなく、ターン制戦術とローグライクの長期的な試行錯誤が好きな人だ。『The Binding of Isaac』の悪趣味さをある程度知っていて、それでも「今度は猫の血統管理でやるのか」と笑える人なら、かなり深く刺さる可能性がある。
逆に、日本語で快適に遊びたい人、テンポよく1周を回したい人、Steam Deckだけで細かい戦術を全部こなしたい人、下品なジョークが苦手な人は、少し様子を見てもいい。コンソール版や今後の調整、DLCの展開によって、遊びやすさの印象が変わる可能性はある。
それでも、他のゲームではなかなか味わえない変な厚みがある。猫を増やしているはずなのに、いつの間にか戦術、血統、失敗、愛着がぐちゃっと絡まっている。整った優等生ではないが、インディーゲームにしか残せない変な手触りがある作品だと思う。
基本情報
開発者: Edmund McMillen, Tyler Glaiel
パブリッシャー: Edmund McMillen, Tyler Glaiel
プラットフォーム: Steam
リリース日: 2026年2月10日
価格: 通常価格 $29.99。2026年7月9日までSteam上で25%オフ表示あり
プレイ時間: メインキャンペーン200時間以上、やり込みで数百時間
難易度: 高
日本語対応: 2026年7月時点のSteamストアでは日本語非対応
Steam評価: 全言語レビューは非常に好評(50,693件)。直近30日は1,896件中70%ポジティブ。英語レビューは非常に好評(91%ポジティブ、27,316件)
ストアページ
Steam: https://store.steampowered.com/app/686060/Mewgenics/
公式リンク
公式サイト: https://www.mewgenics.info/
Edmund McMillen X: https://twitter.com/edmundmcmillen
Tyler Glaiel X: https://twitter.com/tylerglaiel
- タイトル
- Mewgenics
- 開発
- Edmund McMillen, Tyler Glaiel
- ジャンル
- シングルプレイヤー / ストラテジー / ターン制 / ホラー / ローグライク
- 対応
- PC (Steam)
- 難易度
- 上級者向け
- プレイ時間
- メインキャンペーン200時間以上、やり込みで数百時間
- Steam評価
- 非常に好評(全言語レビュー50,693件)/直近レビューはやや低下(1,896件中70%ポジティブ)
- 配信日
- 20260210
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