ガラスの悪魔がスケボーで月を喰らう『Skate Story』。地獄の9層を滑り抜ける異色のスケートアドベンチャー

ガラスの悪魔がスケボーで月を喰らう『Skate Story』。地獄の9層を滑り抜ける異色のスケートアドベンチャー

更新: 2025年12月29日

『Skate Story』。「ガラスと苦痛で作られた悪魔がスケートボードで月を食べる」という、一見すると意味も突拍子もない設定に最初は困惑したものの、実際にプレイしてみるとその奥深さと美しさに完全に魅了されてしまった。

これは単なるスケートボードゲームではない。6年の歳月をかけて個人開発者 Sam Eng 氏が作り上げた、スケート文化の魂を込めた芸術作品とも呼べる作品だ。ニューヨークの夜を滑る感覚を冥界に移し替えた、唯一無二の体験がここにある。

この設定、アリなの? ガラスの悪魔と悪魔王の契約

プレイヤーは冥界の悪魔となり、悪魔王から一枚のスケートボードを渡される。契約の内容は至ってシンプル──「月を食べて冥界の9つの層を制覇し、自分の魂を取り戻せ」。月を食べるたびに重くなった体が下の層へと沈んでいき、最終的に悪魔王との対峙を目指すというストーリーだ。

最初は「スケボーで月を食べるって何それ?」と思わずツッコんでしまったが、プレイしてみると不思議としっくりくる。ガラスでできた半透明の体が街の光を反射させながら滑る様子は、まさに幻想的で美しい。開発者の Sam Eng 氏がニューヨークの夜をスケートしながら聴いていたシンセウェーブ音楽の世界観が、見事に冥界の設定に昇華されているのだ。

Blood Cultures が奏でる、極上のサイケデリック・サウンドトラック

本作の音楽を手がける Blood Cultures は、ニューヨークを拠点とするエニグマティックなアーティスト。彼らが作り出すサイケデリックなサウンドは、まさに「地獄のスケート」にピッタリだった。

滑走中のチルなトラックから、ボス戦での激しいビートまで、音楽とゲームプレイが完璧にシンクロしている。特に印象的だったのは、長い通路をただ滑り抜けるだけのシーンで流れる楽曲。複雑なトリックは必要ない、ただパワースライドでカーブを攻めて、オーリーで段差を越えていくだけなのに、音楽と相まって言葉にできないカッコよさがある。

筆者は音楽に詳しくないが、どこか Crystal Castles のような Witch House 系の雰囲気も感じられて、魂で「よく分からんけど好き」と感じてしまう類のサウンドだ。このゲームをプレイするなら、ぜひヘッドホンで体験してほしい。

70種類以上のトリックと、奥深いスケートメカニクス

一見すると「雰囲気ゲー」に見えるかもしれないが、本作のスケートシステムは驚くほど本格的だ。基本のオーリーやキックフリップから始まり、最終的には 70 種類以上のトリックを習得できる。

特に感動したのは、トリックを決めたときの「重み」の表現。スケートボードとガラスの体が一体となって回転する感覚、着地時に足を踏みつけるような生々しい手応え。これらすべてが、実際のスケート文化が持つ「ボードとの一体感」を見事に再現している。

ボス戦では、トリックで稼いだコンボポイントを「攻撃力」として活用する独特のシステムを採用。月や巨大な敵に対して、360フリップで攻撃を仕掛けたり、パワースライドで回避したりと、スケートが戦闘そのものになる体験は他では味わえない。

魂を通貨にしたカスタマイゼーション要素

冥界で集める「魂」を使って、デッキ、ホイール、トラック、ステッカーなどでスケートボードをカスタマイズできる。70種類以上のアイテムが用意されており、自分だけのボードを作り上げる楽しさは格別だ。

面白いのは、スケートボードが使用するにつれて実際に傷んでいくところ。現実のスケートと同じように、愛用のデッキにも寿命がある。ただし、傷ついたボードにも愛着が湧いてくるのがスケーターの性──ボロボロになったデッキでも、なかなか新しいものに交換する気になれなかった。

冥界の9層、それぞれが持つ独特の世界観

各層には個性豊かなキャラクターたちが住んでおり、彼らとの交流も本作の魅力の一つ。物忘れの激しいカエルを助けたり、巨大な哲学者の石の頭と対話したり、洗濯物として逃げ出した悪魔の服を追いかけたり……。シュールながらもユーモラスなエピソードの数々が、地獄という設定を親しみやすいものにしている。

各層のビジュアルデザインも秀逸で、ドット絵でありながら post-processing の技術によって現代的な美しさを実現している。ガラスの体が光を屈折させる表現や、街の光がボードに反射する様子など、細部へのこだわりが随所に感じられる。

Steam Deck でも快適、ただし後半は要注意

Steam 公式認証を受けているだけあって、Steam Deck での動作は基本的に良好。60FPS で滑らかなスケート体験を楽しめる。ただし、チャプター3以降の複雑なステージでは 45FPS 程度まで落ち込むことがあるため、安定性を重視するなら最初から 45FPS 制限をかけることをオススメしたい。

これぞ真のインディーゲームの傑作

『Skate Story』は、確実に人を選ぶゲームだ。万人受けするタイプの作品ではない。しかし、その独特の世界観とアート性、そして何より「スケート文化への深い愛情」を感じ取れる人にとっては、間違いなく今年のベスト級の体験となるだろう。

開発者の Sam Eng 氏が 6 年かけて注ぎ込んだ情熱が、ゲーム全体から溢れ出している。これは単なるゲームではなく、一つの芸術作品として完成されている。

プレイ時間は 6-7 時間程度と短めだが、その密度は計り知れない。「夢中で遊び尽くす」という言葉がピッタリの、濃縮された体験がここにある。

基本情報

タイトル: Skate Story
開発: Sam Eng
パブリッシャー: Devolver Digital
プラットフォーム: Steam, PlayStation 5, Nintendo Switch 2
プレイ時間: 6-7時間
難易度: 初心者向け〜中級者向け
Steam評価: 圧倒的に好評 (96%)
リリース日: 2025年12月9日
価格: 2,300円
日本語対応: 完全対応

購入リンク:

公式リンク:

他の最新記事を見る

見た目はポーカー、中身はとんでもクリッカー!『This Ain’t Even Poker, Ya Joker こんなのポーカーじゃない』で脳汁ドバドバな放置ライフが始まった

見た目はポーカー、中身はとんでもクリッカー!『This Ain’t Even Poker, Ya Joker こんなのポーカーじゃない』で脳汁ドバドバな放置ライフが始まった

タイトルを見た瞬間に困惑した…… Steamのストアページでこのゲームを初めて目にしたとき、正直言って最初はスルーするつもりだった。『This Ain’t Even Poker, Ya Joker こんなのポ

猿が駆け抜ける痛快ローグライク! 『ダンジャングル』で味わう中毒性抜群のジャングル大冒険

猿が駆け抜ける痛快ローグライク! 『ダンジャングル』で味わう中毒性抜群のジャングル大冒険

サルのゲームってこんなにアツかったのか…! Steam で初めて『ダンジャングル』のストアページを見たとき、正直そんなに期待していなかった。ドット絵の可愛いサルが主人公の 2D アクション…「まあ、よくあるインディーゲー