
このゲーム、ゾンビが跋扈(ばっこ)する世界で店を経営するというぶっ飛んだコンセプトなのだが、実際にプレイしてみるとこれが驚くほど面白い。店舗経営シミュレーションとサバイバルアクションを融合させた本作は、「売上を伸ばすか、生き延びるか」という究極の選択を迫ってくる。そしてその答えは……両方だ。
昼は接客、夜は防衛——そして朝はバッテリー回収

本作の舞台は、文明が崩壊した後の世界。人々はまだ生きている。そして驚くべきことに、彼らは依然として買い物をする。缶詰、バッテリー、武器、防具——生き残るために必要なものすべてが、あなたの店で取引される。
ゲームは非常にシンプルなところから始まる。荒廃した店舗を掃除し、ゴミを片付け、棚を設置する。この作業が意外と満足感がある。何もない廃墟が、少しずつ機能する店へと変わっていく過程は、シミュレーションゲーム好きならたまらないだろう。
だが、この平穏は長く続かない。
客が来る。普通の客もいれば、武装した荒くれ者もいる。そして日が暮れると……ゾンビが襲ってくる。ここから本作の本領が発揮される。
物理演算地獄とクラフト——そしてまた物理演算地獄

『The Walking Trade』の最大の特徴であり、最大の悩みの種が「物理演算」だ。商品はすべて実体を持っており、棚に丁寧に並べても、客が少し触れただけで崩れ落ちる。10分かけて積み上げた弾薬の箱が、NPCの肩が当たっただけで爆発したように散乱する光景は、もはや日常だ。

しかし、この物理演算があるからこそ、店作りには独特の達成感がある。商品を投げて陳列することもできるが、きれいに並べたいという欲求が湧いてくる。缶詰を一つひとつ積み上げ、完璧な陳列を作り上げたときの満足感は格別だ——それが客によって破壊されるまでは。
クラフトシステムも非常に手作業重視。作業台に材料を持っていき、レシピを選び、完成品を取り出す。すべてが手動だ。効率は悪いが、この手間こそが本作の魅力でもある。武器を作り、棚を作り、バリケードを作る。すべてが自分の手で行われる感覚は、他の経営シミュレーションにはない没入感を生み出している。
従業員マネジメント——彼らは時に役立ち、時に邪魔をする
一人で店を回すのには限界がある。そこで登場するのが従業員システムだ。生存者を雇い、レジ係、清掃員、警備員などの役割を割り振る。星評価で能力が分かれており、優秀な人材を確保することが重要……なのだが、現実はそう甘くない。
AIがかなり粗い。清掃員は死体を片付けるべきなのに、なぜか放置する。警備員は時折、味方を攻撃する。レジ係は客が並んでいても動かないことがある。ソロ開発者が懸命にパッチを出してはいるが、まだまだ改善の余地がある。
それでも、うまく機能したときの達成感はすごい。従業員が整然とレジを回し、清掃員が店内をきれいに保ち、警備員がゾンビを撃退する——このサイクルが回り始めると、店は一気に拡大していく。
「善良な商人」か「サイコパス略奪者」か——選択はあなた次第

本作が他のシミュレーションと一線を画すのは、プレイヤーの選択に驚くほどの自由があることだ。
正攻法で行くなら、適正価格で商品を売り、客を大切にし、評判を築く。評判が上がれば客足も増え、店は繁盛する。
だが……別の道もある。
ある客がAK-47を買った。バッテリーの束を支払い、満足そうに店を出ようとする。その背中にバールを振り下ろす。バッテリーを回収し、AK-47を拾い、また棚に戻す。完璧なビジネスモデルだ。
もちろん、他の客に目撃されれば評判は地に落ちる。客足が途絶え、店は破綻する。しかし、目撃者がいなければ……?
この倫理観のない自由さが、本作を単なる経営シミュレーションから「何でもありのサバイバルゲーム」へと昇華させている。善人を演じるもよし、サイコパスに徹するもよし。すべてはあなた次第だ。
ソロ開発者の情熱が詰まった、バグと可能性のカオス

『The Walking Trade』はMicrowave Gamesによるソロ開発作品だ。彼の前作『Against All Odds』は2Dアクションプラットフォーマーであり、本作とはまったく異なるジャンル。それでもこの挑戦的なプロジェクトに挑んだ彼の情熱は、ゲームのあちこちに感じられる。
リリースから連日パッチがリリースされており、開発者の熱意は本物だ。Steam コミュニティでのフィードバックにも積極的に対応しており、バグ報告を次々と修正している。現在のバージョンは1.0.5で、安定性は着実に向上している。
ただし、それでもバグは多い。物理演算の暴走、AIの迷走、予期せぬクラッシュ——こうした問題はまだ残っている。しかし、それを補って余りあるゲーム性がある。コア体験がしっかりしているからこそ、多少のバグは「ご愛嬌」で済ませられるのだ。
低ポリ美学——廃墟と希望が混在する世界

グラフィックスタイルは昨今のインディーゲームでよく見られる低ポリゴンスタイル。『SurrounDead』や『Rise of Gun』といった作品と同じ系統だが、本作はシェーディングとディテールでさらに洗練されている。
キャラクターは継ぎはぎの服、擦り切れた防具、傷跡、タトゥーで個性が表現されており、ポストアポカリプスの世界観がよく伝わってくる。ゾンビのデザインも多彩で、ステージごとに異なる敵が登場する。
照明効果も秀逸だ。昼間の明るい店内と、夜のフラッシュライトに照らされる闇——このコントラストが、緊張感と安堵感を巧みに演出している。
Steamレビュー80%——賛否両論だが、確実に刺さる人には刺さる
Steam評価は「非常に好評」で、456件のレビュー中80%が肯定的だ。多くのプレイヤーが「バグは多いが、コンセプトが素晴らしい」と評価している。
肯定的なレビューでは、「店舗経営とサバイバルの融合が最高」「物理演算が面白い」「倫理観のない自由さがたまらない」といった声が目立つ。一方、否定的なレビューでは「AIが酷い」「物理演算がストレス」「バグが多すぎる」といった指摘がある。
つまり、本作は「バグとカオスを楽しめる人向け」のゲームだ。完璧に磨き上げられた体験を求める人には向かないが、荒削りながらも独創的なゲームを求める人には最高の選択肢となる。
PlayWay S.A.パブリッシング——シミュレーションゲームの名門

本作のパブリッシャーはPlayWay S.A.。ポーランドを拠点とする同社は、シミュレーションゲームに特化したパブリッシャーとして知られており、数多くの「○○シミュレーター」シリーズを世に送り出してきた。
PlayWayのゲームは、ニッチなテーマを深掘りし、マニアックなシミュレーション体験を提供することで定評がある。『The Walking Trade』もその系譜に連なる作品であり、「ゾンビ黙示録×店舗経営」という一見無茶なコンセプトを、しっかりとしたゲームに仕上げている。
基本情報
開発: Microwave Games
販売: PlayWay S.A.
リリース日: 2026年3月5日
価格: 1,200円(発売記念10%オフで1,080円、3月20日まで)
プラットフォーム: PC(Windows)
プレイ人数: 1人
言語: 日本語対応(インターフェース、字幕)
ジャンル: 店舗経営シミュレーション、サバイバル、アクション
Steam評価: 非常に好評 (80% – 456件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/3398110/The_Walking_Trade/



