
「『Thief』の精神的続編が出るらしい」——そのひと言を聞いたとき、筆者は思わず椅子から身を乗り出した。1990年代から2000年代にかけて、没入型シム(イマーシブシム)というジャンルを切り拓いた男、ウォーレン・スペクター。『Deus Ex』や『Thief: Deadly Shadows』を手がけた彼が、新作ステルスゲームで帰ってくる。しかも価格は驚きのわずか700円以下。これはプレイしないわけにはいかないだろう。

「盗賊」である喜びを、もう一度
舞台は1910年代のスコットランド、キルケアンという架空の都市。魔法と黎明期の科学技術が入り混じる独特の世界観で、プレイヤーは盗賊ギルドの新米として頭角を現していく。

本作を開発したのはOtherSide Entertainment。共同創設者であるウォーレン・スペクター(スタジオディレクター・『Deus Ex』『Thief: Deadly Shadows』)とポール・ニューラス(エグゼクティブプロデューサー・『Thief: The Dark Project』『Thief: The Metal Age』)という、まさにイマーシブシムの生みの親ふたりが揃い踏みしているスタジオだ。2016年の設立以来、「プレイヤーに選択の自由を与える没入体験」を目標に掲げてきた彼らが、満を持して世に送り出したのが本作である。
影に潜む、ふたりの盗賊
本作のキャラクターは現在2種類。デフォルトで使えるスパイダーと、コントラクト(ミッション)を重ねることで解放されるカメレオンだ。

スパイダーはその名の通り、機動力に特化したキャラクター。グラップルガン(ジップワイヤー)で高所へひらりと登り、煙幕グレネードで追っ手の視界を断ち、ピックポケットフェアリーと呼ばれる妖精を使って遠くのスイッチを操作する。「いかに見つかれずに動き回るか」を突き詰めたいプレイヤー向けだ。

一方のカメレオンは変装能力が売り。衛兵に扮して堂々と歩き回れる「グラマー(幻惑)」スキルを持つ。こちらは第8コントラクト前後で解放されるため、まずスパイダーで世界観とシステムを学ぶ流れになっている。
16のコントラクトが描く、ステルスの醍醐味
ゲームの舞台となるマップは現在2つ——警察署(コンスタブルズ・ギルドホール)とエルウェイ邸。一見シンプルに思えるが、このふたつのマップが実に丁寧に設計されている。

各マップは複数のサブエリアに分かれており、「安全な場所」と「危険な場所」が交互に配置されている。これがステルスゲームの根幹をなすリズム——隠れて観察し、隙を見て動く——を自然に体験させてくれる構造だ。
さらにポイントとなるのが難易度システム。ノービスからマスターシーフまで設定でき、難易度を上げるたびに衛兵の配置やセキュリティ機器のレイアウトがランダムに変化する。つまり、同じマップで何度プレイしても違う展開になる。開発チームがこだわった「システミックなリプレイ性」がここに凝縮されている。
ゲームプレイの基本はクラシックなステルス——影に隠れ、衛兵のパトロールルートを読み、音を立てずに動く。入手したヴィスタラ・ダイヤモンドという魔法のアイテムを使えば壁越しに衛兵の動きを把握でき、状況に応じてスリザーサップ(セキュリティライトのショートサーキット)やスモークボムを使い分けていく。
ソロかコーペレイティブか、それが問題だ
本作はソロプレイとオンラインco-op(最大2人)の両方に対応している。海外レビュアーたちの評価を見ると、co-opこそが本作の真骨頂という声が多い。パートナーと連携して衛兵を誘導し、お互いの動きを補完し合う——その瞬間に生まれるアドリブ感とカオスが、本作の最大の魅力だという。

ただし、いくつかの注意点もある。海外レビューでは「コンテンツ量がやや少ない」「ソロ時のAIの難易度が低め」という指摘も散見された。実際、マップは2つ、コントラクトは16本、プレイ時間の目安は4時間程度。これをコンパクトな入門版と捉えるか、もの足りないと感じるかは、プレイヤー次第だろう。
開発チームは「これはThick As Thievesの世界への入り口だ」と明言しており、今後のアップデートでコンテンツが追加されていく構想を持っている。
伝説の遺伝子を継ぐ、655円の小さな大作
Steam評価は執筆時点で「ほぼ好評」(71%・712件)。手放しで絶賛とはいかないが、「655円でこのクオリティは十分すぎる」という声が多く、価格に対するコストパフォーマンスへの評価は高い。

ウォーレン・スペクターは本作についてこう語っている。「プレイヤーが自分自身のストーリーを作れる世界。観察と機知と創造性を大切にするゲームを作りたかった」——その言葉は、往年の名作に流れるフィロソフィーとまったく同じだ。
まだ荒削りな部分もある。しかし、その底に流れるイマーシブシムの精神は確かに本物だ。ステルスゲームの古典を愛する人、そして「盗賊になる」体験を味わってみたいすべての人に、この価格ならまず試してほしい一本である。
基本情報
開発: OtherSide Entertainment
販売: Megabit Publishing
リリース日: 2026年5月20日
価格: ¥655
プラットフォーム: PC(Steam)※PS5・Xbox Series X/S は後日配信予定
プレイ人数: 1〜2人(オンラインco-op対応)
言語: 英語(日本語未対応)
ジャンル: ステルスアクション / イマーシブシム
Steam評価: ほぼ好評(71% ・ 712件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/3341000/Thick_As_Thieves/
公式リンク
公式サイト: https://bit.ly/4hXOod3
X (Twitter):https://x.com/playTaTgame
Discord: https://discord.gg/cBqnatMYdA
YouTube: https://www.youtube.com/@megabit-publishing


