
「マルチプレイゲームって、フレンドを集めるのが大変じゃない?」そう思っていた筆者に、このゲームは静かに問いかけてきた。「見知らぬ32人と共に、神に立ち向かってみろ」と。
『33 Immortals』は、モントリオールのインディースタジオ Thunder Lotus Games が手がける33人同時協力プレイのローグライクアクションだ。2025年3月にEpic Games StoreとXboxで早期アクセスを開始し、2026年6月10日にSteam版が1.0として正式リリース。15ヶ月に及ぶ開発期間を経て、ついに完成版が全プラットフォームに揃った。
一聞するとハードルが高そうに感じるが、実際にはまったくの逆だ。ロビー待ちも、ボイスチャットも不要。マッチングボタンを押した瞬間、見知らぬプレイヤーと一緒にダンテの地獄へ飛び込める。そのシンプルさと、熱量の高さが唯一無二の体験を生み出している。
“33人”という数字に込められた意味

なぜ「33」なのか。これはダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』に由来している。『神曲』は「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の三部で構成され、各篇はそれぞれ33歌(カント)から成る。本作の世界観はまさにこの構造を踏まえており、プレイヤーは罪深い魂として神の裁きに叛乱を起こす「不滅者」となって、インフェルノ(地獄)→プルガトリオ(煉獄)→パラディーソ(天国)と三つの領域を駆け抜ける。
1.0版では念願のパラディーソ(第三エリア)が実装され、初めて「完全なる反乱の物語」を追体験できるようになった。早期アクセス時代からのプレイヤーにとっては待ちわびたフィナーレだ。
チャットなしで、それでも「チームになれる」

本作の最大の謎は、テキストチャットが存在しないことだ。それなのに、33人がなぜか連携して動く。
これを可能にしているのが「エモート+ピン」のコミュニケーション体系だ。方向を指し示すピン、回復を知らせるエモート、敵の場所を示すマーカー──簡素な手段だけで、ボス戦の攻略順や集合場所が共有されていく。言語の壁もなければ、誰かに怒鳴られる心配もない。まるでMMOレイドの”社会実験”を体験しているようだ。
筆者が最初のボスを撃破したとき、画面の端々で他のプレイヤーが笑顔のエモートを送ってきた。言葉はなくても、あの達成感の共有は忘れられない。
フェーズ制で進む「レイド感」の再現

ランが始まると、33人は巨大なマップに散らばるところからスタートする。序盤のフェーズ1では、各自がモンスターを狩りながら「ダスト」を集め、攻撃・体力・共感力(協力スキル)の三つのステータスを強化する。道中には「拷問部屋」と呼ばれる小型ダンジョンが点在し、最大6人で挑んでリレーを強化する。
十分に強化が進むと、マップ全体に神の怒り(大規模攻撃)が降り注ぐ警告が鳴る。これが合図だ。生き残ったプレイヤーたちが一箇所に集結し、ワールドボスへの最終決戦フェーズへ突入する。

ボスはMMOレイドさながらのメカニクスを持つ。インフェルノの番人「ルシファー」は、詠唱フェーズ中に特定の処理をしなければ全体即死級のダメージを叩き込んでくる。プルガトリオの「アダムとイブ」はバリア展開中に「徳の果実」を破壊しなければダメージが通らない。ちょうどMMOの本番レイドが「全員で動く」ことを要求してくるのと同じ緊張感だ。
全滅すれば終わりだが、誰かが生き残っている間は戦い続けられる。「あと一人が耐えてくれれば」という状況が頻繁に生まれ、全員が必死になる瞬間が何度も訪れる。
ローグライクとしての進化要素

毎ランで全員が初期状態から始まるが、セッション外でも成長要素がある。「永遠の欠片(Eternal Shards)」を使った永続強化ツリー、武器のアップグレード、パークのアンロック──これらはセッションをまたいで保持されるため、ランを重ねるほど戦略の幅が広がる。

武器は弓・剣・短剣・杖の4種類(1.0でチャリティ武器が追加)。それぞれ異なる戦闘スタイルを持ち、「攻撃特化でボスに圧力をかける」「回復・支援に徹してチームを生かし続ける」「機動力を活かして雑魚処理に専念する」など役割分担が自然と生まれる。
難易度は「試練(Ordeal)」システムで調整でき、最大12段階のモディファイアを付加することで報酬も増加する。やり込み派には一生遊べるスケーリングが用意されている、といっても過言ではない。
美しい手描きアートと、Spiritfarerスタジオの底力

Thunder Lotus Gamesは、感動的な別れをテーマにしたインディー傑作『Spiritfarer』で知られるスタジオだ。本作はその系譜を受け継ぐ美麗な手描きアートが随所に息づいている。地獄の炎、煉獄の霧、天国の光──各エリアに固有のビジュアルがあり、ボスのデザインも圧倒的な存在感を放つ。
ゲームデザインは『Spiritfarer』とは全く異なり、本作ではオンラインマルチプレイに特化した専門チームを新設。クリエイティブディレクターのStephan Logierはオンライン大規模マルチプレイの経験豊富な業界ベテランで、「MMOレイドの精髄だけを抽出する」という野心を持ってこのゲームを設計した。
課題と正直な評価
もちろん、100点満点というわけではない。現状での懸念点も正直に伝えておく。

ランの序盤(フェーズ1)は、個人が各自で雑魚を狩るソロプレイ的な時間がしばらく続く。「33人協力」の醍醐味はむしろ後半フェーズに集中しており、前半の30分近くが単調に感じるプレイヤーも少なくない。
また、上級プレイヤーが新規ロビーに混在すると、難易度バランスが崩れる場合がある。慣れたプレイヤーが無意識にボスをずたずたにすれば、初心者は達成感を得る前に戦闘が終わってしまう。1.0で三つ目のエリア「パラディーソ」が追加されたことでプレイヤー分散が進むとは思うが、長期的には改善余地がある部分だ。
Steamレビューは「ほぼ好評(76%)」と健闘しているものの、この部分が評価を分けている主因と見ていい。
Steam上陸のタイミングは絶妙だった
本作は早期アクセス期間中、あえてSteamに参入しなかった。その理由は明快だ──「33人が必要なゲームで、プレイヤーが少ないと成立しない」。Xbox Game Passで初期ユーザーを確保し、コアなコミュニティを育ててから、1.0完成版でSteamに殴り込む戦略が功を奏した。Steamリリース後、ピーク同時接続7,811人を記録し、現在も3,000人超がオンライン中だ。
クロスプレイが完全に機能しており、Steam・Epic・Xbox・Microsoft Storeのプレイヤーが同一マッチングプールに入る。どのプラットフォームから参加しても、33人が揃わないリスクは現時点ではほぼないと言っていい。
まとめ──「MMOレイドに憧れていたけど踏み出せなかった人」へ
『33 Immortals』は、MMOレイドの「最高に盛り上がる瞬間」だけを凝縮した体験だ。ギルドを探す必要もなく、スケジュールを合わせる必要もない。起動して30秒後には、見知らぬ32人と肩を並べてボスに挑んでいる。

言語も、ボイスチャットも関係ない。エモート一つで「助けてくれ」が伝わり、ピン一つで「ここに来い」が通じる。そうして積み重なった小さな協力の積み重ねが、ボス撃破の瞬間に爆発する。あの瞬間の達成感は、言葉にし難い。
完全1.0版として三つの世界とすべてのボスが揃った今が、入門の絶好機だ。まずは無料デモで体験し、気に入ったら購入を検討してみてほしい。神への反乱軍は、常に新しい戦士を待っている。
基本情報
開発: Thunder Lotus
販売: Thunder Lotus / Kepler Ghost
リリース日: 2026年6月10日(1.0正式版)※早期アクセス開始:2025年3月18日
価格:1,887円(通常価格)
プラットフォーム: PC(Steam、Epic Games Store)/ Xbox Series X|S / Microsoft Store
プレイ人数: 1〜33人(オンライン協力)
言語: 日本語対応あり(インターフェース)
ジャンル: 協力アクションローグライク / 大規模マルチプレイヤー Steam評価: ほぼ好評(76% – 1,376件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/958520/33_Immortals/ Epic Games Store:https://store.epicgames.com/p/33-immortals-9873a2
Xbox / Game Pass: https://www.xbox.com/games/33-immortals
公式リンク
公式サイト: https://thunderlotusgames.com/games/33-immortals/
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