動物たちが織りなす獄中サバイバルドラマ『Back to the Dawn ~ブレイク・ザ・アニマル・プリズン~』。冤罪の記者が挑む刑務所からの脱出劇

更新: 2025年8月8日
動物たちが織りなす獄中サバイバルドラマ『Back to the Dawn ~ブレイク・ザ・アニマル・プリズン~』。冤罪の記者が挑む刑務所からの脱出劇

まさか刑務所ゲームでここまで夢中になるとは……

Steam で 93% という驚異的な高評価を誇る『Back to the Dawn ~ブレイク・ザ・アニマル・プリズン~』。動物たちだけが住む世界を舞台にした刑務所脱出 RPG という、一見すると子ども向けのような設定に最初は戸惑ったものの、プレイしてみるとその奥深さに完全に引き込まれてしまった。

Metal Head Games が開発し、2023年11月から早期アクセスが始まった本作は、2025年7月18日についに正式版がリリース。キツネの記者トーマスとパンサーの潜入捜査官ボブ、2人の主人公それぞれの視点から描かれる壮大な陰謀劇が完成した。

冤罪をかけられた記者の運命

物語の主人公は、調査報道で政府の汚職を追っていた新聞記者のキツネ・トーマス。真実を追求する正義感の強い彼だったが、市長の陰謀によって冤罪で投獄されてしまう。刑務所の中から弁護士の友人リードと連携し、「内と外」から市長の汚職の証拠を集めて無実を証明するのが目的だ。

もう一方の主人公、パンサーのボブは潜入捜査官として刑務所に送り込まれた男。それぞれ異なる目的を持つ2人だが、どちらも腐敗した権力構造との戦いに巻き込まれていく。各主人公で20時間以上の濃密なストーリーが用意されており、選択によって結末が大きく変化するのも魅力的だ。

21日という限られた時間との戦い

本作の大きな特徴は、刑務所内での生活に21日間という制限時間が設けられていること。毎日決められたスケジュールの中で、証拠集め、仲間作り、スキル向上、そして脱出計画の立案を並行して進めなければならない。

朝の点呼から始まって作業時間、昼食、自由時間、夜間の施錠まで、リアルな刑務所生活が描かれる。読書で知識を高めたり、筋トレで体力をつけたり、他の囚人と交流して情報を得たりと、限られた時間をどう使うかがカギとなる。

時間管理の難しさは確かにある。複数のサブクエストを同時に抱えながら、メインストーリーも進めつつ、体調管理もしなければならない。まさに本当の刑務所生活のような窮屈さを感じることもあるが、それがかえってゲームへの没入感を高めている。

48人の個性的な囚人たち

刑務所内には48人もの囚人が登場し、それぞれに背景やストーリーがある。3つのギャングが体育館、図書館、娯楽室を支配しており、どの勢力と手を組むかで攻略法が大きく変わってくる。

囚人たちとの関係構築は非常に重要で、彼らから有用なスキルを教わったり、脱出に必要な情報やアイテムを入手したりできる。ただし、ある囚人と親しくなると別の囚人から敵視されることもあり、人間関係の複雑さがリアルに描かれている。

特に印象的だったのは、各囚人が持つ「好みのアイテム」システム。プレゼントを渡すことで好感度を上げられるのだが、何を好むかは実際に話してみないとわからない。トライ&エラーで関係を深めていく過程が、まるで本当の人間関係のようでリアルだった。

ダイス判定が生む緊張感

本作の行動判定にはダイスロールが採用されており、筋力、敏捷性、知性、カリスマの4つのステータスによって成功率が変わる。金庫破り、情報収集、喧嘩など、あらゆる場面でダイスの目が運命を左右する。

この確率要素があることで、同じ選択肢を選んでも結果が変わり、リプレイ性が大幅に向上している。失敗したときの落胆と、成功したときの達成感がたまらない。特に重要な場面でのダイス判定は手に汗握る緊張感がある。

複数の脱出ルートと結末

100以上のクエストと複数の脱出ルートが用意されており、プレイヤーの選択次第で物語は様々な方向に分岐する。力ずくで脱出するもよし、巧妙な計画で密かに抜け出すもよし、はたまた刑務所内で権力を握るという選択肢もある。

50万語を超える膨大なテキスト量で描かれる物語は、一度クリアした後も「あのとき別の選択をしていたら……」と思わせる魅力に満ちている。筆者も既に3回プレイしているが、毎回新しい発見がある。

ケモノ設定の絶妙なバランス

動物キャラクターという設定は最初こそ違和感があったものの、プレイしているうちに自然に馴染んでくる。むしろこの設定があることで、重いテーマを扱いながらも適度なユーモアが保たれ、プレイしやすくなっている。

巨大なカバとの喧嘩や、ガチョウの看守に見つからないよう隠れるシーンなど、動物ならではの表現が物語に彩りを添えている。シリアスになりすぎない絶妙なバランス感覚が光る。

Steam Deck でも快適プレイ

本作は Steam Deck での動作も良好で、携帯機でじっくりと物語を楽しめる。HD 2D のビジュアルは小さな画面でも見やすく、3時間以上のバッテリー持続時間も確保できる。通勤時間などに少しずつ進められるのも魅力だ。

まとめ:脱獄ゲームの新たな名作

『Back to the Dawn ~ブレイク・ザ・アニマル・プリズン~』は、単なる脱獄ゲームを超えた、社会派ドラマとしての側面も持つ優れた作品だ。権力の腐敗、司法制度の問題、人間関係の複雑さなど、現実世界にも通じるテーマが丁寧に描かれている。

時間制限やダイス判定といったシステムが生み出す緊張感、48人の囚人たちとの人間ドラマ、複数の結末への分岐など、何度でも楽しめる要素が詰まった傑作 RPG と言えるだろう。

刑務所という閉鎖空間で繰り広げられる人間ドラマと社会派ストーリー。動物という設定に騙されず、ぜひ一度この濃密な体験を味わってほしい。

基本情報

  • タイトル: Back to the Dawn ~ブレイク・ザ・アニマル・プリズン~
  • 開発: Metal Head Games
  • 販売: Spiral Up Games
  • プラットフォーム: Steam、Xbox Series X|S、Xbox Game Pass
  • リリース日: 2025年7月18日(正式版)
  • 価格:2,700円
  • 日本語: あり
  • プレイ時間: 各主人公20時間以上
  • ジャンル: RPG、アドベンチャー、シミュレーション

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