
小惑星に工場を建てるって、こんなに楽しいのか……
Steamストアで『Star Birds』のページを開いたとき、最初に目に飛び込んできたのはカラフルな鳥たちと、小惑星を覆う無数のパイプだった。「なんだこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃん」と思いつつも、「でも工場自動化ゲームって難しそう……」という不安もあった。

しかし、そんな心配は杞憂に終わった。2025年9月10日に早期アクセス版がリリースされた本作は、わずか5日で Steam評価「圧倒的に好評」(95%) を獲得。『Dorfromantik』を手掛けたToukana Interactiveと、教育系YouTubeチャンネル「kurzgesagt – in a nutshell」のコラボ作品として、すでに大きな話題を呼んでいる。

実際にプレイしてみると……気づけば3時間が経過していた。「あと1ステージだけ」「もうちょっと配置を最適化したい」と思っているうちに、時間があっという間に溶けていく。この中毒性、かなりヤバい。
360度建築の発想がすごい
本作の最大の特徴は、球体の小惑星上に基地を建設するという独特のシステムだ。通常の工場ゲームのような平面ではなく、ぐるりと360度回転する小惑星に施設を配置していく。

最初は「球体に建物を置くって難しそう」と思ったが、これが意外とすんなり。マウスでクルクル回転させながら、採掘施設やパイプを配置していく感覚は、まるでミニチュアの惑星を手のひらで転がしているような楽しさがある。
そして重要なのがパイプは交差できないというルール。これが絶妙なパズル要素を生み出している。鉄を精錬したい、でもパイプが他の資源ラインと干渉してしまう……そんなとき、小惑星の裏側をぐるっと回して配置する発想が生まれる。

この360度という制約が、単なる工場ゲームを立体パズルに変えている。平面では不可能だった配置が、球体だからこそ実現できる。最初は戸惑うかもしれないが、慣れてくるとこの立体的な思考が病みつきになってくる。
「失敗しても大丈夫」な優しさが心地いい
工場自動化ゲームといえば『Factorio』や『Satisfactory』のような、高度な知識と計画性が求められる作品を思い浮かべる人も多いだろう。しかし『Star Birds』は、そういったハードコアな作品とは一線を画している。

まず、時間制限が一切ない。ステージごとにクエストが用意されているが、のんびり自分のペースで進められる。資源が足りなくなっても詰むことはなく、配置をやり直すのも自由。ミスしても何のペナルティもない。
これが本当にありがたい。失敗を恐れず、「あ、この配置ダメだな」と思ったら即座に作り直せる。試行錯誤が楽しめるゲームデザインになっている。

さらに、チュートリアルが非常に丁寧。新しい施設や資源が登場するたびに、しっかり説明してくれる。「自動化ゲームは初めて」という人でも、安心して遊べる作りだ。
実際、Steam レビューでも「ジャンル初心者に最適」「癒されながら工場を作れる」といったコメントが多数見られる。ハードコアゲーマーには物足りないかもしれないが、逆にこの優しさこそが本作の魅力なのだ。
パイプのスパゲティ化が楽しすぎる問題
工場自動化ゲーム経験者なら「スパゲティ配線」という言葉を聞いたことがあるはず。計画性なく配管を引いた結果、複雑に絡み合ったパイプが麺のように見える状態のことだ。
『Star Birds』では、このスパゲティ化がむしろ楽しい。

最初はシンプルに「鉄を採掘→溶鉱炉→ロケット発射台」という流れを作るだけ。しかし進行するにつれて、複数の資源を組み合わせた複雑な生産チェーンが求められるようになる。
例えば、プラスチックを作るには原油とメタンが必要で、それぞれ別の小惑星から輸送しなければならない。さらに電力供給のためのソーラーパネルも配置して……気づけば小惑星がカラフルなパイプで覆われている。

でも、これが美しい。kurzgesagtらしいポップなカラーリングと相まって、複雑な配管すらも「アート作品」のように見えてくる。完成した小惑星基地をぐるぐる回転させて眺めるだけでも満足感がある。
そして一度スパゲティ化した配置を、より効率的に整理し直す作業もまた楽しい。「このパイプはこっちを通せばもっと短縮できる」「ハブを使えば分岐がスッキリするな」と試行錯誤する時間が、最高に心地いい。
ストーリーも意外としっかりしている
『Star Birds』には、ちゃんとストーリーキャンペーンが用意されている。宇宙を旅する鳥たちが、謎のアーティファクトを追いかけながら新しい星系を探索していく……という内容だ。

kurzgesagtの映像スタイルそのままのカットシーンが挿入され、鳥たちの軽妙な会話が物語を彩る。シリアスになりすぎず、かといって薄っぺらくもない、絶妙なバランス。
「工場ゲームにストーリーなんて必要ないでしょ」と思うかもしれないが、意外と没入感が増す。次のステージに進むモチベーションにもなるし、何より鳥たちのキャラクターが愛おしくなってくる。

特に印象的なのが、各ステージで提示されるクエスト。単に「○○を生産せよ」ではなく、「鳥たちがサングラスを欲しがっている」「核融合炉の研究をしたい」といった具体的な要求が出される。
これがゲームプレイに意味を持たせている。ただの数字を達成するのではなく、「鳥たちのために頑張ろう」という気持ちにさせてくれる。
早期アクセスでもこの完成度は異常
現在の『Star Birds』は早期アクセス版だが、その完成度はかなり高い。Steam レビューでも「バグがほとんどない」「UIが洗練されている」「パフォーマンスも良好」といった評価が目立つ。

実際、筆者のプレイ中にクラッシュやバグは一度も発生しなかった。操作性も直感的で、マウスだけで全ての操作が完結する。Steam Deckでも快適に動作するという報告も多数見られる。
早期アクセス版の内容は、2つの星系と多数のステージ、さらにプロシージャル生成される「ボーナスセクター」が含まれている。メインキャンペーンだけでも20時間以上は遊べるボリュームだ。

そして開発ロードマップも公開されており、今後さらに新しい建物、小惑星タイプ、星系、ストーリーコンテンツが追加される予定。製品版リリースは2026年を予定しているが、現時点でも十分に遊び応えがある。
逆に言えば、今から始めれば成長を見守れる楽しみもある。コミュニティも活発で、Discordでは開発者と直接フィードバックのやり取りができる。早期アクセスならではの「一緒にゲームを作っていく」体験も味わえるのだ。
『Dorfromantik』好きなら絶対ハマる
本作を開発したToukana Interactiveは、あの癒し系パズル『Dorfromantik』の制作チームだ。『Dorfromantik』を遊んだ人なら、『Star Birds』の「のんびりだけど奥深い」というゲームデザインの共通点に気づくはず。

どちらも「失敗がない」「自分のペースで遊べる」「最適化の楽しさ」という要素を大切にしている。ただし『Dorfromantik』がタイル配置パズルなのに対し、『Star Birds』は工場自動化という違いがある。
もしあなたが『Dorfromantik』で癒されつつも「もうちょっと複雑なことがしたい」と感じていたなら、『Star Birds』は完璧な次のステップになるだろう。

逆に『Factorio』や『Satisfactory』で燃え尽きた人が、「もっと気楽に工場を作りたい」と思ったときにも最適だ。本作は両者の中間地点にある、絶妙なバランスの作品なのだ。
宇宙で、鳥たちと、工場を作ろう
『Star Birds』は、工場自動化ゲームの「考える楽しさ」と、カジュアルゲームの「気楽さ」を見事に融合させた作品だ。360度建築という独自のシステム、優しいゲームデザイン、美しいビジュアル、そして中毒性の高いゲームループ。

「工場ゲームは難しそう」と敬遠していた人にこそ、ぜひ遊んでほしい。本作なら、きっとこのジャンルの魅力に気づけるはずだ。
そして既に工場ゲームが好きな人も、この「癒しの工場作り」に新鮮さを感じるだろう。パイプのスパゲティ化を楽しみ、小惑星を回転させながら眺める時間は、他のどのゲームでも味わえない体験だ。
現在Steam では10%オフの2,070円で販売中。デモ版も公開されているので、気になる人はまず試してみるといい。
気づけば何時間も経っている。そんな魔法のような体験が、『Star Birds』にはある。
基本情報
Star Birds
- 開発: Toukana Interactive
- パブリッシャー: Toukana Interactive, kurzgesagt – in a nutshell
- プラットフォーム: Steam (PC)
- リリース日: 2025年9月10日 (早期アクセス)
- 価格: 2,300円 (現在10%オフで2,070円)
- プレイ時間: 20時間以上 (早期アクセス版)
- 難易度: 初心者向け~中級者向け
- Steam評価: 圧倒的に好評 (93%, 1,500件以上のレビュー)
- 日本語対応: ○
- Steam Deck: 対応



