マフィアの後始末はお任せあれ!『Crime Scene Cleaner』でモップ一本、犯罪現場の掃除人ライフ

更新: 2025年9月1日
マフィアの後始末はお任せあれ!『Crime Scene Cleaner』でモップ一本、犯罪現場の掃除人ライフ

清掃シミュレーター? それとも犯罪映画?

Steamで98%という驚異的な高評価を誇る『Crime Scene Cleaner』。タイトルを見た瞬間「ついに犯罪現場の清掃シミュレーターまで出たのか……」と思ったものの、プレイしてみるとそこにあったのは想像以上にハードで、それでいて妙に癒やされる清掃体験だった。

President Studioが開発し、『House Flipper』や『Car Mechanic Simulator』などのシミュレーション系ゲームを手がけるPlayWayがパブリッシングを担当する本作。一見するとニッチすぎるテーマながら、蓋を開けてみれば完成度の高いゲームプレイと練り込まれたストーリーで多くのプレイヤーを虜にしている。

学校の管理人から、マフィアの清掃人へ

主人公のコヴァルスキーは、本業は学校の管理人をしている普通のお父さん。しかし妻を亡くし、病気の娘エレナの治療費に頭を悩ませる毎日を送っている。そんな彼がひょんなことから殺人現場の清掃を依頼され、あまりにも見事に「何も起こらなかったかのように」現場をきれいにしたことで、街最大のマフィアのボス「ビッグ・ジム」に雇われることになる。

娘の治療費のため、コヴァルスキーは組織の汚れ仕事の後始末を請け負うことに。モップとバケツを武器に、血まみれの現場を証拠隠滅レベルまで清掃していく──これが『Crime Scene Cleaner』の基本的なゲームプレイだ。

思わず夢中になる、意外と奥深い清掃システム

最初は「血痕をモップで拭き取って、死体を片付けるだけでしょ?」と軽く考えていたが、実際にプレイしてみると清掃作業は想像以上に奥が深い。

基本的な道具はモップ、スポンジ、バケツの3つ。血痕の種類によって効果的な清掃方法が変わり、頑固な汚れには「オゾネーター」という特殊機械で汚れを弱らせてから清掃する必要がある。さらに高い場所の清掃には高圧洗浄機を使い分けるなど、適材適所の道具選択が重要になってくる。

特に素晴らしいのが「クリーナーセンス」機能(Qキー)。これを使うと血痕や移動させるべき家具がハイライト表示され、見落としを防いでくれる。最初はこの機能に気づかずに苦労したが、一度覚えてしまえば清掃効率が格段に上がる。

家具を元の位置に戻したり、証拠品を回収したり、時には換気扇を回して臭いを消したりと、やることは多岐にわたる。単純作業のようでいて、パズルゲームのような頭を使う要素もあり、気がつくと時間を忘れて没頭してしまう。

モップを極めろ! スキルシステムが楽しい

レベルが上がるとスキルポイントを獲得でき、清掃道具をパワーアップできる。モップなら清掃速度アップや汚れにくさの向上、スポンジなら「二刀流スポンジ」で効率アップなど、RPGさながらの成長要素が用意されている。

個人的におすすめなのが「UV懐中電灯」のスキル。暗い現場でも血痕を簡単に発見できるようになり、作業効率が劇的に改善される。また、「クリーナーセンス」のクールダウン時間を無くすスキルも、完璧主義者には必須だろう。

現場に隠された”お宝”を見つけるのも楽しみの一つ。指輪やネックレス、時には現金や麻薬まで……コヴァルスキーも家計が苦しいので、ちゃっかり懐に収めてしまう。罪悪感? 娘の治療費と考えれば、そんなものは吹き飛んでしまうのだ。

血の向こうに見える人間ドラマ

『Crime Scene Cleaner』の魅力は、単なる清掃シミュレーターに留まらないストーリーテリングにある。各ミッションでは事件の概要が簡単に説明されるが、詳細な経緯は現場の状況から推理する形になっている。

散らばった証拠品、血痕の飛び散り方、崩れた家具の配置……これらすべてが無言でその場で起こった悲劇を物語る。環境ストーリーテリングの見事な例と言えるだろう。

ミッション間には自宅でのシーンが挟まり、娘からのメールや次の仕事の電話が入る。コヴァルスキーの苦悩や愛犬デクスターとの会話を通して、彼の人間性が浮き彫りになる。犯罪の片棒を担いでいることへの罪悪感と、家族を守りたい一心との葛藤が丁寧に描かれており、プレイヤーは次第に彼の状況に感情移入していく。

ダークユーモアも本作の持ち味で、コヴァルスキーの独り言や状況に応じたツッコミが時折クスリと笑わせてくれる。重いテーマを扱いながらも、適度なユーモアで息抜きできるバランス感覚は絶妙だ。

細部まで作り込まれた犯罪現場

グラフィックは最新のAAAタイトルと比べれば控えめだが、雰囲気作りは一級品。薄暗い現場の不気味さ、血痕のリアルさ、散乱した家具が醸し出す生活感など、細部まで作り込まれている。

特に印象的だったのが「Toxic Love」ミッション。2階の浴室で起こった悲劇は、まさに「パンチを食らったような」衝撃を与えてくれた。開発者が意図的に演出した場面だと思うが、単なるお掃除ゲームを超えた重みを感じさせる。

音響面では、各現場の環境音や清掃道具の効果音がリアルで、没入感を高めている。また、現場で見つけられるカセットテープには実際に音楽が収録されており、コレクション要素としても楽しめる。

PowerWash Simulatorとは一味違う清掃体験

同じ清掃系シミュレーターとして『PowerWash Simulator』との比較は避けて通れないだろう。しかし両作品は似ているようで全く異なる体験を提供している。

『PowerWash Simulator』が瞑想的で平和な清掃体験を重視するのに対し、『Crime Scene Cleaner』はストーリー性、時間制限、倫理的ジレンマなどの要素を組み込んだ、よりドラマチックな作品に仕上がっている。どちらも素晴らしい作品だが、物語性を求めるなら断然『Crime Scene Cleaner』をおすすめしたい。

現在は10のメインミッションに加え、アップデートで「ナイトメアモード」と「トゥルークリーナーモード」が追加され、やり込み要素も充実している。各ミッションには隠し要素やコレクティブルも用意されており、完全攻略を目指すなら相当な時間を楽しめるだろう。

一風変わった設定ながら、丁寧な作り込みと心に響くストーリーで多くのプレイヤーを魅了している『Crime Scene Cleaner』。モップ一本で始まる父親の奮闘を、ぜひ体験してほしい。

基本情報

タイトル: Crime Scene Cleaner
開発: President Studio
販売: President Studio, PlayWay S.A.
プラットフォーム: PC (Steam), PlayStation 5, Xbox Series X|S
配信日: 2024年8月14日
定価: 2,800円 (Steam)
日本語: 対応
プレイ時間: 約12-15時間(メインストーリー)
Steam評価: 98%が好評(圧倒的に好評)

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