
ホラーゲームなのに……加害者側!?
ホラーゲームといえば、プレイヤーは逃げる側、怯える側が定番だ。幽霊や怪物から必死に逃げ、隠れ、生き延びる……そんなドキドキハラハラの体験こそがホラーゲームの醍醐味だと思っていた。
ところが、PC(Steam)向けゲーム『Deck of Haunts』は、その常識を真っ向から覆してくる。本作でプレイヤーが操るのは、なんと恐怖の館そのもの。侵入してくる人間たちを恐怖に陥れ、精神を追い詰め、魂のエキスを搾り取る……。完全に加害者側なのだ。

最初にストアページを見たとき、「館になるってどういうこと?」「デッキ構築と館の建築が合体?」と、正直かなり困惑した。が、プレイしてみると、この発想の転換がとんでもなく面白い。被害者になって怯えるのではなく、加害者として恐怖を演出する――この逆転の構図が、『Deck of Haunts』を唯一無二のホラー体験へと昇華させているのだ。
昼は建築、夜は恐怖――二段構えのゲームシステム
ゲームの基本的な流れは非常にシンプル。昼間に館の間取りを設計し、夜になると侵入者が現れるので、カードを駆使して恐怖を与えていく。この昼夜のサイクルを28日間繰り返し、館の核となる「ハートルーム」を守り抜けばクリアだ。
昼間のフェーズでは、タイル状のグリッドに部屋を配置して館を建築していく。ゲストルーム、リビング、キッチンといった基本的な部屋から、フォビアルーム(恐怖の部屋)、メカニカルルーム(機械仕掛けの部屋)、サクリファイスルーム(生贄の部屋)など、特殊な効果を持つ部屋まで用意されている。

部屋の配置は自由度が高く、迷路のような複雑な構造を作り上げることも可能だ。ハートルームを守るため、侵入者を効率的に迷わせ、消耗させるレイアウトを考えるのが、このゲームの戦略の要となる。
夜間のフェーズになると、館に人間たちが侵入してくる。彼らはそれぞれ体力と正気度のパラメータを持っており、プレイヤーはカードを使ってこれらを削っていく。悲鳴を上げさせる、床をきしませる、幽霊を召喚する、壁を動かす……手札のカードを駆使して、訪問者を精神的に追い詰めていくのだ。

カードにはダメージカード、正気度を削るドレインカード、緊張感を高めるテンションカードなどがあり、それぞれ使用条件が設定されている。たとえば「部屋に一人きりの状態でないと使えない」といった制限があるため、単純にカードを出せばいいわけではない。部屋の配置と訪問者の動きを読み、タイミングを見計らってカードをプレイする――このパズル的な戦略性が、じわじわと病みつきになってくるのだ。
死んでも学べるローグライクの妙味
ゲームオーバーになっても、集めたカードや解放した部屋は次のランに引き継がれる。つまり、死ぬたびに戦略の選択肢が広がっていく、典型的なローグライクのメタプログレッションだ。

最初のランでは、基本的なカードと部屋しか使えず、侵入者に圧倒されてあっさりハートルームを破壊されてしまうことも多い。が、ランを重ねるごとに強力なカードが手に入り、特殊な部屋も使えるようになっていくと、徐々に館の恐怖支配が板についてくる。
特に面白いのが、侵入者の種類が増えていくことだ。最初は一般市民だけだが、悪名が高まると警察官、神父、そして謎の組織「ストーン・メイソン」まで現れる。彼らはそれぞれ特殊能力を持っており、たとえば「Pathfinder」というトレイトを持つ敵は、入口ではなくランダムな部屋からスタートする。

これがまたやっかいで、下手をするとハートルームのすぐ隣に出現することもある。そんなときは「え、初手でこれ!?」と絶望するが、そういう理不尽さも含めてローグライクの魅力だ。対処できるカードがなければ潔く諦め、次のランで対策を練る――このトライ&エラーの繰り返しが、プレイヤーを成長させてくれる。
Steam評価84%の高評価、だが課題も

Steam上での評価は「非常に好評」で、708件のレビューのうち84%が好意的だ。特に「デッキ構築とタワーディフェンスの融合が斬新」「館の建築が楽しい」といった声が多く、独特なゲームデザインが高く評価されている。
ただし、いくつかの課題も指摘されている。最も多いのが「反復性が高い」という点だ。28日間のランは毎回同じスタートカードと館レイアウトから始まるため、15日目あたりから既視感が強くなってくる。また、正気度を削る戦略よりも直接ダメージを与える方が効率的なため、戦略の幅が狭まりがちだという意見もある。

加えて、部屋配置の自由度は高いものの、最初のグリッドが小さく、ハートルームの位置が固定されているため、創造性に限界があるとも言われている。とはいえ、開発元のMantis Gamesは継続的にアップデートを行っており、シナリオビルダー機能も実装予定とのことだ。Steam Workshopとの連携も計画されているため、コミュニティによる拡張に期待が高まる。
1970年代アメリカのゴシックな雰囲気
本作の舞台は1970年代のアメリカ。アールデコ調の不気味な館と、ゴシックホラーの美学が見事に融合した世界観が、プレイヤーを引き込む。

グラフィックはアイソメトリック視点の2.5Dで、ドット絵ではないがスタイライズされた表現が特徴的だ。暗い色調とシネマティックな演出が、古典的なホラー映画を彷彿とさせる。
BGMも秀逸で、不協和音を効かせた不穏な旋律が、館の邪悪さを際立たせている。侵入者が発狂するときの演出も凝っており、ホラーゲームとしての没入感は十分だ。
プレイ時間は20~100時間以上! リプレイ性の高さ
一度のランは28日間で、クリアまでの所要時間は約2~3時間程度。だが、複数のエンディングが用意されており、選択肢によって結末が変化するため、リプレイ性は高い。

さらに、カードや部屋の組み合わせによって全く異なる戦略が取れるため、「今度は正気度特化で攻めてみるか」「特殊部屋を駆使した迷宮を作ろう」といった試行錯誤が楽しめる。筆者は現在30時間ほどプレイしているが、まだ全カードを解放しきれていない。100時間以上遊べるコンテンツ量があると言っても過言ではないだろう。
難易度は初心者向け~上級者向けの3段階
本作には3段階の難易度設定があり、初心者でも安心して楽しめる。イージーモードでは侵入者の体力が低く、ハートルームへのダメージも少ないため、じっくりとゲームシステムを学べる。

逆にハードモードでは、初日から強力な敵が押し寄せ、一瞬の判断ミスが命取りとなる。ローグライク上級者やデッキ構築ゲームのベテランなら、ハードモードでの完全クリアを目指してほしい。
基本情報
タイトル: Deck of Haunts
開発: Mantis Games
パブリッシャー: DANGEN Entertainment, Game Source Entertainment
プラットフォーム: PC(Steam)※コンソール版は2025年後半予定
リリース日: 2025年5月7日
価格: 2,300円(税込)
プレイ時間: 20~100時間以上
難易度: 初心者向け~上級者向け(3段階設定)
Steam評価: 非常に好評(84%)
日本語対応: あり
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