「Disco Elysiumの後継者」なんてレベルじゃない。TRPG好きが30年待ち続けた”あの感覚”を完全再現した『Esoteric Ebb』

「Disco Elysiumの後継者」なんてレベルじゃない。TRPG好きが30年待ち続けた”あの感覚”を完全再現した『Esoteric Ebb』

更新: 2026年3月10日

「Disco Elysiumみたいなゲーム、また出ないかな……」そう諦めかけていた矢先のことだった。

2026年3月、PC Gamerはこう断言した。「まだ3月だが、断言しよう。『Esoteric Ebb』は2026年最高のRPGであり、Disco Elysiumの真の後継者だ」と。メタスコア88点、OpenCritic89点、Steam評価96%(295件のレビュー)──数字だけ見ても只者ではない雰囲気が漂う本作だが、実際にプレイしてみると、そこにはただの「模倣作」では片付けられない圧倒的な独自性があった。

本作を手掛けたのは、スウェーデンの開発者Christoffer Bodegård。なんと2018年から8年間、ほぼソロで開発を続けてきたという狂気のプロジェクトだ。途中からイラストレーターや音楽プロデューサーが加わったものの、プログラミング、デザイン、そして75万語以上(指輪物語三部作を超える分量!)に及ぶダイアログの執筆まで、すべて彼一人の手によるものである。

D&Dルールで動く会話バトル、これぞ「Disco-like」の真骨頂

『Esoteric Ebb』の舞台は、アルカネパンク・ファンタジー世界「エソテリック・コースト」。魔法大戦の余波が残るこの世界では、ゴブリンが街角で新聞を売り、イデオロギーが死神の囁きを覆い隠している。そしてあなたは「聖職者(The Cleric)」──政府の下っ端として働く、秘儀的事件の専門家だ。

ゲームは衝撃的なオープニングから始まる。あなたは死体安置所で目覚める。川底から引き上げられ、腐ったリンゴに囲まれ、いくつかの死体とゾンビ一匹と共に。そう、あなたは一度死んでいたのだ。

そして任務が下る。5日後に控えた史上初の選挙を前に、街の中心でゴブリンの茶店が爆発した。原因は? 犯人は? 政治的動機があるのか? あなたには5日間という制限時間の中で、この謎を解明しなければならない。

本作の最大の特徴は、D&D第5版ルールをDisco Elysiumスタイルの会話システムに完全統合したことだ。キャラクター作成では、STR(筋力)、DEX(敏捷)、CON(耐久)、INT(知力)、WIS(判断力)、CHA(魅力)という6つの能力値を配分する。そしてこれらの能力値が、Disco Elysiumの「スキル」のように内なる声として語りかけてくるのだ。

INTは冷徹で時に残酷だ。野心を煽り、世界にはあなたのような指導者が必要だと囁く。それ自体は「秩序にして悪」であり、非政治的だ。一方でWISは共感的で、他者の痛みを理解しようとする。この能力値たちは互いに議論し、時には味方し、時には驚くような発言をする──まるで本当のTRPGセッションで、GMが各プレイヤーの性格を演じ分けているかのように。

そして重要な選択や行動の多くはダイスロールで成否が決まる。会話中の説得判定、戦闘、さらには「恥ずかしいことを認める」ような場面でさえダイスが振られる──そして失敗すれば死ぬこともある。装備やD&D呪文(「Enhance Ability」や「Charm Person」など)を使えば判定に有利な修正を得られるが、運命の女神は気まぐれだ。

この「ダイスの不確実性」こそが、本作にリプレイ性緊張感をもたらしている。筆者は初日、リンゴを大量に食べようとして腹痛で死亡した。ゾンビを説得して自殺させることに成功したかと思えば、次の瞬間には天使への口説きに大失敗して恥をかいた。

本作は「クレリック」という職業の皮を被った自由奔放なロールプレイング

さて、あなたは「聖職者」のはずだが、実はこれ、まったくの建前である。

ゲーム開始直後から、あなたは他人に「実は俺、ローグなんだ(Dick-Ass Rogue)」と言い張ることができる。そして驚くべきことに、ゲームはそれを受け入れる。キャラクターシートまで変更される。「アルカナの聖職者」として魔法使い呪文を習得することもできるし、隠しクラスをアンロックすることも可能だ。

レビュアーたちは口を揃えて言う。「俺は病弱なローグ聖職者でアイデンティティ危機を抱えたキャラを作った」「俺は常にDick-Ass Rogueだと主張し続けた、笑える結果になった」と。そう、本作は「あなたが何者であるか」すら、あなた自身の選択に委ねているのだ。

そしてこの自由度は選択肢にも表れている。冒頭で出会う移民の村、ドルイド、ゴブリンの三つ巴状況において、あなたは:

  • ドルイドを助けてゴブリンのキャンプから仲間を救出する
  • 移民たちに警告して防衛準備を整える
  • ゴブリンに協力して村を襲撃する

すべてが可能だ。そしてどの選択をしても、物語は分岐し、意味を持ち、そして進んでいく。あるプレイヤーは友人と4人マルチプレイし、「移民もドルイドもゴブリンも全員虐殺する」というジェノサイドルートを達成したという。モンクのハーフオークが波動拳でゴブリンをナムアミダブツする光景は、きっと忘れられない思い出になっただろう。

これはDisc──いや、「Discworld」だ

あるレビュアーが鋭い指摘をしている。「本作の核心はDiscoではなく、Discだ。Discworld、つまりテリー・プラチェットだ」と。

確かに、本作はD&Dというシステムをプラチェットのようにユーモアと皮肉を込めて扱っている。「Charm Person」呪文や「Speak with Dead」が社会でどう規制されているか、アライメント(属性)システムが形而上学的にどう機能するのか──こうした設定を、登場人物たちは当たり前のこととして受け入れている。狂っているのは、むしろプレイヤーのほうなのだ。「なぜこんな世界なんだ?」と問いかけるのは、我々だけである。

ノルヴィク市は「ガーズ!ガーズ!」や「ソウル・ミュージック」を思わせる。暗い階級闘争よりも、不条理を受け入れながら「それでも生きていく」人々の姿がそこにはある。

そして探索要素も素晴らしい。本作には地下都市(City Below)が広がっており、秘密を発見し、パズルを解き、戦闘に挑むダンジョン探索がTRPG的なドラマチックさで展開される。ある時あなたは巨大化しすぎたゼラチナス・キューブに遭遇し、別の時には法律顧問として働く本物の悪魔と契約書の条項について議論する。

「クエスティング・ツリー」──クエストログ、スキルツリー、マインドマップが融合した革新的システム

本作独自のシステム「Questing Tree(クエスティング・ツリー)」も見逃せない。これはクエストログであり、スキルツリーであり、マインドマップでもある。

クエストを完了すると、それが「根を張り」、あなたの心に定着する。そしてFeat(特技)としてゲームプレイに影響を与える。例えば「異性への判定に有利な修正」を得たり、新しいクラスをアンロックしたりできる。クエストは大小さまざまで、茶店爆発という大事件から、猫探し、許可証の問題解決といった小さなものまで多岐にわたる。

そして本作は時間制限がある。5日後には選挙が行われ、物語は終わる。会話するたびに時間が進み、キャラクターは特定の時間・場所にしか現れない。すべてをこなすことは不可能だ。だからこそ、「今回は何をするか」「次回のプレイで何を試すか」という選択の重みが生まれる。

技術的な問題はあるが、それを補って余りある魅力

公平を期すため、欠点も述べておこう。一部のレビューでは技術的な問題が報告されている。画面が緑色のフィルターで覆われる不具合、影が奇妙に伸びるグラフィックバグ、Steam Deckでのパフォーマンス問題などだ。また、UI(特にインベントリ管理)がSteam Deckのゲームパッドでは扱いにくいという指摘もある。

序盤の会話がやや「チュングス的」(※訳注:「ちょっと個性的すぎる」ニュアンス)で、トーンが安定しない部分もあるとの声もある。そして音声なしであるため、膨大なテキストを読む覚悟が必要だ(日本語は未対応)。

だが、それでもなお──本作は傑作だ。

開発者は「75万語以上(ロード・オブ・ザ・リング全三部作より多い)のテキスト」を用意しており、ローカライズには莫大なコストがかかると述べている。しかし、この文章量こそが本作の魅力の源泉でもある。会話の選択肢には「優しく」「冗談っぽく」といったトーン指定があり、主人公になりきって物語を紡ぐ体験は、まさにTRPGそのものだ。

「これこそTRPGだ」──30年待ち続けた感覚がここにある

筆者が最も感銘を受けたのは、本作がTRPGの「あの感覚」を完璧に再現していることだ。

優秀なGMがいるセッション。プレイヤーが無茶な行動をしても、GMはそれを受け止め、即興で対応し、物語を転がしていく。ダイスの出目に一喜一憂し、予想外の展開に笑い、仲間との掛け合いに心温まる──。

Baldur’s Gate 3が「D&Dの究極のサンドボックス」なら、『Esoteric Ebb』は「史上最高のDMとのキャンペーン」だ。PC Gamerのレビュアーは「これまでTRPGの魔法をここまでゲームに落とし込んだ作品は見たことがない」と絶賛している。

そしてもう一つ特筆すべきは、本作にバッドエンドは存在しないということだ。どんな選択をしても、それに応じたエンディングが用意されている。50以上のエンディングパターンがあり、仲間の運命、主人公の選択、政治状況の帰結──すべてが複雑に絡み合う。

「あのとき別の選択をしていたら?」という問いが、次のプレイスルーへの強烈な動機になる。筆者は現在2周目だが、1周目では見落としていたキャラクター、選ばなかった選択肢、気づかなかった伏線──すべてが新鮮だ。

人生が足りない。だが、それでも遊ぶ価値がある

冒頭で『バルダーズ・ゲート3』を引き合いに出したが、『Esoteric Ebb』もまた「人生が足りない」ゲームだ。

1周クリアに約20~30時間。50以上のエンディング、無数の分岐、膨大な会話の組み合わせ──すべてを見ようと思えば、確実に数百時間は必要だろう。そして開発者が「高INT(知力)プレイヤーだけが読むに値する不必要な設定資料」と称する開発ブログまで読み始めたら、もう抜け出せない。

だが、それでいいのだ。本作は「効率よくクリア」するゲームではない。あなた自身の物語を紡ぎ、選択の重みを感じ、ダイスの出目に運命を委ね、そして笑い、驚き、時には後悔する──そんな体験こそが、本作の真の価値なのだから。

PC Gamerは「2026年3月の時点で断言する。『Esoteric Ebb』は今年最高のRPGだ」と言った。GameSpotは「ビデオゲームストーリーテリングの到達点であり、最も魅力的で笑える没入型RPG体験のひとつ」と評した。そしてプレイヤーたちは「Disco Elysiumの後に何を遊べばいいか分からなかった。今ならはっきり言える。『Esoteric Ebb』を遊べ」と声を揃える。

もしあなたがTRPG好きなら、Disco Elysiumファンなら、あるいは単に「他では味わえない物語体験」を求めているなら──迷わず本作を手に取ってほしい。

ダイスを振ろう。ゴブリンの茶店が爆発した謎を解こう。そして、あなただけの物語を紡ごう。ノルヴィクの街が、あなたを待っている。


基本情報

開発: Christoffer Bodegård
販売: Raw Fury
リリース日: 2026年3月3日
価格: 2,800円(発売記念10%オフで2,520円 3月15日まで)
プラットフォーム: PC (Steam)
プレイ人数: シングルプレイヤー
言語: 英語(日本語未対応)
ジャンル: CRPG、ストーリーリッチ、選択重視、アイソメトリック、ダンジョンズ&ドラゴンズ
Steam評価: 圧倒的に好評 (96% – 295件のレビュー)

購入リンク

Steam: https://store.steampowered.com/app/2057760/Esoteric_Ebb/

公式リンク

公式サイト: https://esotericebb.com/
X (Twitter): https://x.com/chrisbodegard
Discord: https://steamcommunity.com/linkfilter/?u=https%3A%2F%2Fdiscord.gg%2FHsJnXfRXnC
Bluesky: https://bsky.app/profile/esotericebb.bsky.social

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