極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

更新: 2026年3月4日

「ただのコンビニバイトだろ?」……と舐めていたら……

Steamのストアページで『HELLMART』を初めて見たとき、正直「またスーパーマーケット系シミュレーターか」と思った。ここ数年、レジ打ちや品出しをするだけのゲームが乱立していたからだ。

しかし、この『HELLMART』は違った。24時間営業のコンビニで働く夜勤バイトという設定、極北の地という舞台、そして何より──「夜になると、奇妙な客が来る」という一文。これは、ただの経営シミュレーションではない。

開発は、GAZE IN GAMESというスタジオ。創業者のOleg Gazeが率いる新進気鋭のチームで、本作が実質的なデビュー作となる。2026年1月28日に正式リリースされ、Steam評価は767件のレビューで75%が好評という「やや好評」の評価を獲得している。

ジャンルとしては「ホラーシミュレーション」。昼間は普通のコンビニバイト、夜は超常的な脅威に立ち向かうサバイバルホラーという二面性が特徴だ。価格は1,700円で、デモ版も無料配信されている。

昼は接客業、夜はサバイバル──二つの顔を持つゲームループ

『HELLMART』のゲームプレイは、明確に「昼」と「夜」に分かれている。

昼間のシフト:ひたすら接客とレジ打ち

昼間の仕事は至ってシンプル。来店する客に商品を販売し、売上目標を達成する。レジ打ち、商品の補充、店内清掃、そして客への丁寧な対応──これらすべてが評価対象となる。

ここで重要なのが、「客に失礼な態度を取らない」というルール。どんなに忙しくても、どんなに変な客が来ても、昼間は笑顔で接客しなければならない。実はこれ、夜のサバイバルにも直結する重要な要素なのだ。

売上目標を達成できなければ、店のアップグレードに必要な資金が得られない。逆に、しっかりと売上を立てれば、夜間の防衛に必要な設備を購入できる。この「稼ぎ」と「生存」のバランスが、本作の戦略性を生み出している。

夜間のシフト:監視カメラと発電機が命綱

日が沈むと、店の様相は一変する。

まず、夕方の時間帯に準備作業が必要だ。発電機の燃料チェック、ドアへのバリケード設置、防犯カメラの動作確認、そして防衛用アイテムの購入。これらを怠ると、確実に夜を乗り切れない。

夜間、最も重要なのは「誰を店内に入れるか」の判断だ。深夜に来店する客の中には、人間に擬態した「何か」が紛れ込んでいる。見た目は普通の客だが、よく観察すると微妙に動きがおかしかったり、不自然な笑顔を浮かべていたりする。

この判断を誤ると──つまり、怪物を店内に入れてしまうと──命の危険に晒される。逆に、普通の客を締め出してしまうと、その客の運命は……まあ、想像に難くない。

プレイヤーの選択が客の生死を左右する。このモラル的ジレンマが、『HELLMART』のホラー要素をさらに深めている。

隠れたシステムが生み出す緊張感──「見えないプレッシャー」の正体

『HELLMART』の恐怖は、ジャンプスケアだけではない。むしろ、ゲームが明示しない「隠れたシステム」こそが、プレイヤーを真綿で首を絞めるように追い詰めていく。

コミュニティの検証によれば、本作には少なくとも3つの隠しパラメータが存在する。

1. 時間プレッシャー
営業時間を延長すればするほど、異常現象の発生頻度が上がる。売上を伸ばしたい気持ちと、早く店を閉めたい恐怖のせめぎ合いだ。

2. ノイズレベル
商品を落としたり、慌てて動き回ったりすると、「何か」を引き寄せてしまう。静かに、慎重に行動することが生存率を上げる。

3. ストレスメーター
タスクを放置したり、ミスを重ねたりすると、主人公の反応速度が鈍くなる。画面には表示されないが、確実にプレイヤーを不利にしていく。

これらのシステムは、ゲーム内で一切説明されない。プレイヤーは試行錯誤を繰り返す中で、「なぜか今日は敵が多い」「なぜか反応が遅れる」と感じ、自然とゲームのルールを学んでいく。

この「暗黙のルール」こそが、『HELLMART』独特の緊張感を生み出している。

3つのエンディング──あなたの選択が結末を決める

『HELLMART』は7日間のキャンペーンモードで構成されており、プレイヤーの行動によって3つ(一部情報では4つ)の異なるエンディングが用意されている。

  • グッドエンディング:客を守り抜き、すべてのルールを遵守した場合
  • バッドエンディング:自己保身に走り、客を見捨てた場合
  • シークレット/トゥルーエンディング:特定の条件を満たした場合(詳細は伏せる)

重要なのは、「どのエンディングが正解」ということではない。『HELLMART』は、プレイヤーに道徳的な選択を迫る。生き延びるために客を見捨てるのか、それとも人間性を守り抜くのか。

この選択の重みが、単なるホラーゲームを超えた体験を生み出している。

賛否両論の評価──「期待と現実のギャップ」が生んだ批判

Steam評価75%という数字は、決して低くはない。しかし、「圧倒的に好評」とも言い難い微妙なラインだ。

主な批判点は以下の3つ。

1. グラフィックのダウングレード
トレイラーで見せた美しいライティングや商品の質感が、製品版では劣化していると指摘する声が多い。特にロシア語圏のレビューで顕著だ。

2. 夜間パートが短すぎる
昼間の単調な作業に対して、夜の恐怖体験が物足りないという声。期待していたホラー要素が薄いと感じるプレイヤーも。

3. 反復作業の多さ
7日間同じことを繰り返すだけで、新しい展開が少ない。リプレイ性を謳っているが、実際には変化に乏しいという批判。

一方で、擁護する声も少なくない。「この価格でこのクオリティなら十分」「雰囲気だけで元が取れる」「続編やアップデートに期待」といった肯定的な意見も目立つ。

似て非なるゲーム──『僕、アルバイトォォ!!』との比較

コンビニを舞台にしたゲームとして、『僕、アルバイトォォ!!』との比較は避けられない。

『僕、アルバイトォォ!!』は、迷惑客をバールで殴り飛ばすコメディアクション。ネットミームを多用し、笑いを重視した作品だ。価格も700円と非常に安い。

対して『HELLMART』は、真面目にホラー体験を追求している。笑いではなく、恐怖と緊張感。そして、プレイヤーの選択に意味を持たせている。

どちらが優れているかではなく、どちらを求めているかだ。気軽に笑いたいなら『僕、アルバイトォォ!!』、じっくりと恐怖に浸りたいなら『HELLMART』。同じコンビニでも、まったく異なる体験が待っている。

Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合

海外メディアGameSpewは、『HELLMART』を「Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合」と評した。的確な表現だと思う。

『Silent Hill』シリーズが持つ、日常に潜む狂気。普通の街が、普通のコンビニが、夜になると別の顔を見せる。その恐怖は、派手なモンスターではなく、「いつもと何かが違う」という微細な違和感から生まれる。

『HELLMART』も同じアプローチを取っている。昼間の平凡な接客業が、夜には生死を賭けたサバイバルに変わる。この落差こそが、本作最大の魅力だ。

GameSpewのレビュアーは、デモ版をプレイした後、「着替えを持ってくるべきだった」とコメントしている。それほどまでに、本作の恐怖は予想外だったのだろう。

極北の孤独──ロケーションが生み出す絶望感

『HELLMART』の舞台は、極北の地にある24時間営業のコンビニ。周囲は雪と森に囲まれ、最も近い街まで何キロも離れている。

この「孤立」こそが、ゲームの恐怖を増幅させている。助けは来ない。逃げる場所もない。ただひたすら、7日間を生き延びるしかない。

実際、ゲーム内では「なぜこの仕事を選んだのか」という主人公の動機が語られる。都会の喧騒から逃れたい。人と関わりたくない。簡単に稼げると思った──そんな理由で極北へ来たのだ。

しかし、現実は甘くなかった。人里離れた場所だからこそ、「人間以外のもの」が跋扈する。皮肉にも、人を避けた結果、もっと恐ろしいものと向き合うことになったのだ。

デモ版で試せる「最初の3日間」

製品版の購入を迷っているなら、まずデモ版をプレイすることを強く推奨する。

デモ版では、最初の3日間(3シフト)を無料で体験できる。昼間の接客業務から、夜間のホラー要素まで、ゲームの核心部分はすべて含まれている。

デモ版のSteam評価は712件で87%が好評──製品版よりも高い評価だ。これは、デモの範囲内では非常に完成度が高いことを示している。逆に言えば、製品版の低評価は「デモ以降の展開が期待外れ」という声が多いのだろう。

デモ版をプレイして、この雰囲気が気に入ったなら購入する。それで十分だと思う。

日本語完全対応──ローカライズの質も高い

『HELLMART』は、インターフェース、音声、字幕すべてが日本語対応している。しかも、ローカライズの質が非常に高い。

ホラーゲームにおいて、言語の壁は致命的だ。微妙なニュアンスや、不気味な台詞の意味が理解できなければ、恐怖は半減する。

その点、『HELLMART』の日本語訳は秀逸だ。客の不自然な会話、主人公の内面描写、ゲーム内の指示──すべてが自然な日本語で表現されている。

対応言語は全15言語。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語など、主要言語はすべて網羅している。グローバル市場を意識した、本格的なインディータイトルだ。

アップデートと今後の展開

GAZE IN GAMESは、発売後も継続的にアップデートを行っている。コミュニティの声に耳を傾け、バランス調整やバグ修正を実施している姿勢は評価できる。

公式Discordサーバーも活発で、開発者が直接プレイヤーと交流している。これは、インディースタジオならではの強みだ。

今後のアップデートで期待されるのは、以下の要素だ。

  • 夜間パートのボリューム追加
  • 新しいエンディングルート
  • グラフィックの改善
  • 新しい敵タイプの追加
  • ニューゲームプラス要素

特に、「ニューゲームプラス」の実装を望む声は多い。7日間クリア後、より高難度でやり込める要素があれば、リプレイ性は格段に向上するだろう。

結論──「未完成の傑作」か「期待外れの凡作」か

『HELLMART』は、賛否が真っ二つに分かれるゲームだ。

雰囲気、設定、コンセプト──これらは間違いなく一級品。極北のコンビニという舞台設定、昼夜で変わるゲーム性、選択による分岐エンディング。すべてが魅力的だ。

しかし、ボリューム不足、反復作業の多さ、グラフィックの劣化──これらの欠点も無視できない。「もっとコンテンツがあれば」「もっと夜が怖ければ」という声は、正当な批判だと思う。

筆者の結論は、こうだ。

「この価格で、このコンセプトを体験できるなら、買って損はない」

確かに、100時間遊べるゲームではない。しかし、『HELLMART』にしか味わえない体験がある。極北のコンビニで、7日間を生き延びるという緊張感。客を救うか、見捨てるかという選択。そして、夜の静寂に潜む恐怖。

これらは、他のゲームでは決して味わえない。

もしあなたが、「雰囲気重視のホラーゲーム」が好きなら、『HELLMART』は試す価値がある。完璧ではないが、唯一無二の体験が待っている。

まずはデモ版から。そして、極北の夜を生き延びてほしい。


基本情報

タイトル: HELLMART
開発: GAZE IN GAMES
パブリッシャー: GAZE IN GAMES
リリース日: 2026年1月28日
プラットフォーム: PC (Steam)
価格: 1,700円
日本語対応: あり(インターフェース/音声/字幕すべて対応)
プレイ人数: 1人
ジャンル: ホラー、シミュレーション、アドベンチャー、サバイバルホラー
Steam評価: やや好評 (75% / 767件のレビュー)
プレイ時間: 3-5時間(1周)

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