
「デッキビルダーのローグライトって、結局戦って倒すゲームばかりでしょ?」しかし、『ハングリー・ホラーズ(Hungry Horrors)』は違った。このゲームでは、モンスターを倒すのではなく「満腹にする」のだ。
英国ブライトンを拠点とする2人組インディースタジオClumsy Bear Studioが開発した本作は、戦闘の代わりに料理でモンスターをもてなすという、ジャンルの常識を覆す斬新なアイデアで2026年1月19日にSteam早期アクセスを開始。わずか1ヶ月で168件のレビューのうち98%が好評という圧倒的な支持を獲得している。

戦わない、料理で生き残る!
本作の最大の特徴は、デッキビルダーでありながら「戦闘」が存在しないこと。プレイヤーは英国とアイルランドの伝承料理のカードを駆使して、次々と襲いかかる神話上のクリーチャーたちを満腹にし、こちらに到達する前に満足させなければならない。
ゲームプレイの核となるのは「味の連鎖(Flavour Combo)」システムだ。各料理には甘味、塩味、酸味、苦味、旨味、淡白という6つの味覚タグが付与されており、これらを連続して組み合わせることで強力なコンボが発動する。例えば「青→黄→茶→青」の順で料理を提供すると、初撃が20ダメージでも5撃目には100ダメージまで跳ね上がるのだ。

さらに、各モンスターには「大好物」と「嫌いな料理」が設定されている。Black Annisはベイクウェル・タルトを愛するが、フィッシュ&チップスは大嫌い。Jenny Greentteeth、Grendel、Dullahan、Glaistigといった伝承のクリーチャーそれぞれに固有の食の好みがあり、彼らの嗜好を理解しながら最適な料理を提供する戦略性が求められる。
料理カードの種類も豊富で、ハギス、スターゲイジー・パイ、クラナカン、バラ・ブリス、クレンポグなど、実在する英国・アイルランドの伝統料理が40種類以上登場する。ただし、これらは単なる料理カードではなく、スパイスやハーブ、調理器具といった「バフカード」と組み合わせることでさらに効果を強化できるのだ。
8つのレルムを探索するローグライトの深み
本作はローグライトとして、永続的な成長要素を実装している。各ランの後、プレイヤーは城のキッチンに戻り、新しいレシピのアンロック、調理器具のアップグレード、特殊な食材の獲得といった要素を通じてデッキを強化できる。失敗しても「運命ポイント(Fate Points)」が蓄積され、次回プレイ時に有利なアイテムや仲間を初期状態で入手可能だ。

冒険の舞台となるのは8つのバイオーム──Woods(森)、Bog(沼地)、Meadows(草原)、Town(街)など、それぞれ独自のモンスターとイベントが用意されている。各バイオームには複数のルートがあり、扉を選択することで進路が分岐。道中ではNPCとの出会い、クエストの受諾、アイテムショップでの買い物など、多彩なイベントが待ち受ける。
特筆すべきは、このゲームのストーリー性の高さだ。主人公は気まぐれな王女で、相棒は皮肉屋の猫。王国に広がった「飢餓の呪い」と、その中心で目覚めたドラゴンの謎を解き明かすため、伝説の怪物たちに料理を振る舞いながら冒険を進めていく。各NPCには固有のクエストラインがあり、最新アップデート(Patch 0.1.16)では、Herne、Wulver、Fear Gorta、Ellen Moreといったキャラクターに新たなクエストが追加された。
さらに、このアップデートでは「ファミリア(Familiars)」システム、釣り、衣装の染色カスタマイズ、Fear Gortaのスパイスショップなど、ゲームプレイの幅を広げる要素が続々と実装されている。
2人で紡いだ2年間の情熱
Clumsy Bear Studioは、Scott FitzsimmonsとJerzy Pilchという実生活でもパートナーである2人組が運営する自己資金型インディースタジオだ。Scottがプログラミング、Jerzy がマーケティングとストーリーを担当し、全てのアート、デザイン、コーディングを内製で制作。音楽はHenry Taylorが手がけている。

開発には2年以上の歳月を費やし、その間に様々な困難に見舞われた。2025年のロンドン・ゲームズ・フェスティバル直前には、滞在先で地震に遭遇して避難を余儀なくされ、さらに新しい作業場所はゴキブリだらけ。そんな過酷な状況の中、Scottは腕を骨折し、6週間以上コーディングができない状態に陥った。それでも彼らは諦めず、2025年7月にはDevelop:Brighton 2025でIndie Showcase Awardを受賞。そして2026年1月19日、ついに早期アクセス版をリリースした。
開発ツールはGodot EngineとAseprite。すべてのピクセルアートは手作業でドット打ちされており、Apple IIを思わせるレトロな質感と、丁寧に描き込まれたキャラクターアニメーションが魅力だ。モンスターの目がハートになる演出や、各モンスター固有の「王女の死亡アニメーション」など、細部へのこだわりが随所に見られる。
リラックスして楽しめる「戦わないデッキビルダー」
開発者のJerzyは、本作のコンセプトについてこう語っている。「私たちは仕事の後にリラックスして遊べるゲームを作りたかった。だからターン制にして、じっくり考える時間を確保した。料理という要素は、軽いクラフト要素を加えつつ、モンスターを倒すだけではない何かを提供したかったから」
実際、本作のゲームプレイは驚くほど快適だ。バトルは数分で完結し、テンポよく進行する。Steam Deckとの互換性も完璧で、移動中や寝る前のちょっとした時間に気軽に楽しめる。UIも直感的で、色だけでなくシンボルも併用されているため色覚特性を持つプレイヤーにも配慮されている。

とはいえ、最初の数バイオームこそ優しいものの、徐々に難易度は上昇していく。フレーバーコンボの仕組み、各モンスターの嗜好、バフカードの効果、デッキ構築の最適化──これらすべてを理解しなければ先に進めない。だが、この絶妙な難易度バランスこそが、プレイヤーを「もう一回だけ」と何度もリトライさせる中毒性の源泉なのだ。
英国・アイルランド民話への深い敬意
本作のもう一つの魅力は、民話へのリスペクトだ。登場するモンスターは全て実在する伝承に基づいており、ゲーム内の「Book of Taliesin」では各クリーチャーの詳細な背景を読むことができる。Black Annis(子供をさらう魔女)、Jenny Greenteeth(沼に潜む水の精霊)、Grendel(ベオウルフの怪物)、Puca(いたずら好きの妖精)など、ケルト、イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズの伝説が丁寧に織り込まれている。

料理もまた然り。登場する40種類以上のレシピは全て実在する伝統料理で、ゲームを通じて英国・アイルランドの食文化に触れることができる。開発者たちは「表面的な参考ではなく、民話と料理をゲームプレイの中核に組み込むこと」にこだわり、その結果、他のデッキビルダーにはない独自の世界観を構築することに成功した。
早期アクセス版の現在、ストーリーはまだ完結していないが、開発チームは「1年以内の正式リリース」を目標に掲げている。ただし、「コミュニティのフィードバック次第では、もう少し時間をかけてでも完璧な1.0を目指す」とのことで、プレイヤーと共にゲームを作り上げていく姿勢を明確にしている。

『ハングリー・ホラーズ』は、デッキビルダーというジャンルに新しい風を吹き込んだ作品だ。戦闘ではなく料理で、破壊ではなく満足で、相手を倒すのではなく満腹にする──このシンプルながら革新的なアイデアが、驚くほど深いゲームプレイと豊かなストーリーテリングと融合している。
「モンスターを倒さずに餌付けする」という発想の転換。英国・アイルランド民話への深い愛情。2人の情熱が生んだ手作りのピクセルアート。そして、何よりプレイヤーを思いやる優しい設計思想──これらすべてが組み合わさったとき、『ハングリー・ホラーズ』は単なるゲームを超えた「体験」となる。
あなたも、伝説の怪物たちに最高の料理でおもてなしをしてみてはいかがだろうか。ただし、料理が口に合わなければ、次の食事はあなた自身になることをお忘れなく。
基本情報
開発: Clumsy Bear Studio (Scott Fitzsimmons、Jerzy Pilch)
販売: Clumsy Bear Studio
リリース日: 2026年1月19日(早期アクセス)
価格: 1,520円(通常価格)※発売から2週間は30%オフ
プラットフォーム: PC (Windows, Mac, Linux), Steam Deck対応
プレイ人数: 1人
言語: 英語(日本語未対応)
ジャンル: ローグライト、デッキビルダー、カードゲーム、ストラテジー、料理
Steam評価: 圧倒的に好評 (98% – 168件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/3048840/Hungry_Horrors/
Steam Demo: https://store.steampowered.com/app/3530560/Hungry_Horrors_Demo/
itch.io: https://clumsy-bear-studio.itch.io/hungry-horrors
公式リンク
公式サイト: https://hungryhorrorsgame.com/
X (Twitter): https://x.com/clumsybeargames
Discord: Clumsy Bear Studio Discord
YouTube: @clumsybearstudio



