
待ってました、タクティカルRPG×ローグライト……!
PC(Steam)向けに2025年10月9日に正式リリースされた『Lost Eidolons: Veil of the Witch』。開発元のOcean Drive Studioは、2022年に『Lost Eidolons』という本格派タクティカルRPGを手掛けたスタジオで、今回はそのスピンオフとして”ローグライト”要素を組み込んだ意欲作だ。
正直、ストアページを最初に見たとき「タクティカルRPGにローグライト? 本当に合うの?」という疑問が頭をよぎった。だが、プレイしてみると――この組み合わせ、めちゃくちゃアリだった。

Steam評価は**78%の「非常に好評」**を獲得し、早期アクセス段階から高い評価を受けてきた本作。メタスコアでも80点前後と高評価で、タクティカルRPGファンからも「これは新しい」と話題を呼んでいる。
前作『Lost Eidolons』は「戦闘が長すぎる」「もっと戦闘重視の展開が欲しい」といったフィードバックを受けていたらしい。そこで開発者は思い切って方向転換。ローグライト要素を取り入れ、カジュアルに何度でも挑戦できる作品へとリデザインしたという。
そんな挑戦的な試みが詰まった本作を、実際にプレイしてみた感想をお届けしたい。

記憶も命も失った主人公――魔女との契約が冒険の幕開け
ゲームは主人公が島に漂着するところから始まる。記憶喪失で、しかも「死んでいる」という最悪のスタート。そこに現れたのは、謎めいた魔女・セーブル。彼女から提示された契約は「私の敵を倒せ。そうすれば、もう一度生きるチャンスをやろう」というもの。

まるで『Hades』を思い起こさせる導入だ。主人公は何度も死に、その度に記憶の断片を取り戻していく。死ぬことで物語が進むという構造は、ローグライトゲームとしては王道だが、タクティカルRPGというジャンルでここまで自然に組み込まれている作品は珍しい。
最初はキャラクタークリエイトで性別や外見を決めるだけのシンプルな設定だが、ゲームが進むにつれて主人公・アッシュの過去が徐々に明らかになっていく。声優陣の演技も素晴らしく、物語への没入感を高めてくれる。
ファイアーエムブレム×XCOMのような、硬派なグリッド戦闘

本作の戦闘は、マス目状のグリッドで展開されるターン制戦略バトル。ファイアーエムブレムやXCOMをプレイしたことがある人なら、すぐに馴染めるだろう。
基本的な操作は移動、攻撃、スキル発動、アイテム使用――とシンプル。だが、甘く見てはいけない。最初のステージから容赦なく死ぬ。

「なんだ、タクティカルRPGでしょ?余裕余裕」なんて思って挑んだ筆者は、開始10分で全滅した。敵はガンガン攻めてくるし、回復手段は限られているし、位置取りを少しでもミスればあっという間に囲まれて終わる。
特に厄介なのがバランスという概念だ。敵には体勢を崩すバランスゲージが存在し、これを削り切ると大ダメージチャンス&行動停止のボーナスタイムが発動する。逆に、こちらもバランスを崩されるとピンチに陥る。

さらに、属性効果が戦略の幅を広げてくれる。水たまりに雷撃を放って敵を感電させたり、燃える地形に敵を誘い込んで追加ダメージを与えたり。ただ殴るだけではなく、環境を利用した戦い方が求められる。
「これ、囲まれたらもう終わりじゃん……」と思ったが、**3回まで行動を戻せる「アンドゥ機能」**が搭載されているのがありがたい。ミスしても即リセットではなく、試行錯誤しながら最適解を見つけられる親切設計だ。

死んでも無駄にならない――メタ進行で確実に強くなる
ローグライトの醍醐味は「死んでも次に繋がる」ことだ。本作では、ステージクリアや敵撃破で得られるエンバーとルーン断片を使って、街でキャラクターの永続的な強化が可能。

新しいスキルのアンロック、ステータスの底上げ、仲間キャラクターの解放――死ぬたびに選択肢が増え、確実に強くなっていく実感がある。「さっきは勝てなかったボスに、今度こそリベンジできるかも!」という希望が持てるのが素晴らしい。
しかも、9人のキャラクターから5人を選んでパーティを編成できるため、戦略の幅が膨大だ。近接特化、魔法特化、バランス型――毎回違う編成で挑むことで、プレイ体験がガラリと変わる。

「またこのステージかよ……」と思うかもしれないが、ルートは毎回ランダムで変化。分岐する道、ランダムなイベント、強力なボスとの遭遇――同じ展開は二度とないため、飽きずに何度でも挑める。
ちなみに筆者は50時間以上プレイしているが、まだ新しい発見がある。それくらい、リプレイ性が高い。
ダークな世界観と美しいビジュアル
本作の世界観は、前作『Lost Eidolons』よりもさらにダークな雰囲気だ。霧に覆われた森、呪われた遺跡、燃え盛る祭壇――どこを切り取っても「ここは危険だ」と感じさせる空気感が漂う。

グラフィックは最先端とは言えないかもしれないが、アートディレクションが素晴らしい。キャラクターモデルは早期アクセス時よりも洗練され、攻撃アニメーションも滑らかになった。特にレジェンダリースキル発動時のカットイン演出は、「おお!」と思わず声が出るほどカッコいい。

BGMもまた素晴らしい。不気味で幻想的なメロディが冒険の緊張感を高め、ボス戦では壮大な音楽が流れて盛り上がる。ヘッドホンでプレイすると、さらに没入感が増すのでオススメだ。
何度も死にながら成長していく――これぞローグライトの真髄

『Lost Eidolons: Veil of the Witch』は、タクティカルRPGとローグライトを見事に融合させた傑作だ。
難易度は高いが、理不尽ではない。試行錯誤を重ねることで確実に上達し、戦略の幅が広がっていく。そして何より、死んでも次に繋がるという安心感が、挑戦し続けるモチベーションを支えてくれる。

「タクティカルRPGが好きだけど、1周100時間はキツイ」という人にこそオススメしたい。本作は1回の挑戦が数時間で完結するため、隙間時間でサクッと遊べるのも魅力だ。
何度も死にながら、少しずつ強くなり、ついにボスを倒したときの達成感――。この快感は、ローグライトゲームならではのものだ。

基本情報
タイトル: Lost Eidolons: Veil of the Witch
開発: Ocean Drive Studio
販売: Kakao Games
配信日: 2025年10月9日(正式版)
価格: 2,800円(Steam)※20%オフセール中
日本語: 〇
プラットフォーム: Steam, PlayStation 5, Xbox Series X|S, Nintendo Switch
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