
宇宙や月をテーマにした映画はなぜこうも暗くて怖いのだろうと思いながら深夜にYouTubeを眺めていた筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」は、Kwalee LabsとKwaleeが手掛けた『Luna Abyss』をご紹介。本作は、月の地下深くに広がる廃墟のメガ建造物を探索するFPS……なのだが、弾幕シューターの要素まで融合させた異色作だ。「一人称視点の弾幕ゲーム」って、いったいどんな体験なんだ? そう思いながら起動したら、最後まで止まれなかった。

月が突然、地球の軌道に現れた日
本作の舞台となるのは、謎の「模倣月(ミミック・ムーン)」ルナが突然地球の軌道に現れた後の世界だ。プレイヤーが操るのはフォークスという囚人で、刑期を短縮するためにルナの地下深くにある「奈落(アビス)」の調査を命じられる。見張り役は壁から顔を出す巨大な機械頭部の人工看守エイリン。なんともシュールな組み合わせだが、これが妙に味があって絵になる。

奈落には、かつて栄えていたコロニー都市グレイモントの残骸が広がっており、「全父(オール・ファーザー)」と呼ばれる謎の存在や「聖歌隊の集団」にまつわる秘密が眠っている。環境中に散らばるログやメモを読み解くほどに深みを増す世界観は、どこかLovecraftian的な宇宙的恐怖を漂わせており、廃墟のブルータリズム建築と不気味な色彩の照明が相まって、息を呑む視覚体験を作り上げている。
「弾幕FPS」こそがすべて!
本作最大の特徴であり、最も語りたいのが戦闘システムだ。敵は色とりどりの光弾を複雑なパターンで撃ち出してくる。まるで縦スクロールシューティングゲームの弾幕が、一人称視点の3D空間で展開されるような感覚だ。
近年では『Returnal』がこの手のアプローチで注目を集めたが、『Luna Abyss』はローグライク要素を排し、純粋なアクションとしてこの感覚を磨き上げている。武器はトリガーの引き具合で自動ロックオンが機能し、「敵を狙う」という作業から解放された分、全神経を弾避けと移動に集中できる。この設計が絶妙で、最初こそ「照準がないのか」と戸惑うものの、慣れた途端に「これ以外考えられない」と感じる快感に変わる。

ダッシュとジャンプを駆使した立体的な移動も爽快で、さらに特定の球状デバイスを「掴む」ことでバリアを通り抜けるグラップル的なアクションも用意されており、移動の選択肢は徐々に広がっていく。戦闘と移動が一体になった感覚は、Doom(2016年版)に通じる部分もある。
ヒール(回復)もユニークだ。敵をギリギリまで追い詰めてよろめかせたところで、RBを押せば体力回復、長押しすれば爆発させて範囲ダメージを与えられる。一見地味なシステムだが、「倒すか、回復するか」という瞬時の判断が戦闘に緊張感を生む。
廃墟の美しさに息をのむ
戦闘だけでなく、本作のビジュアルは驚異的だ。荒廃した採掘施設、旧式の原子炉、朽ち果てた街並みが、劇的な色彩の光に照らされている。暗い廃墟に突然差し込む鮮烈な赤や青の光が、独特の美学を作り上げており、スクリーンショットを撮りたくなる場面が何度も訪れる。

サウンドデザインも素晴らしく、遠くから聞こえる機械的なうめき声や、エイリンの抑揚のある人工音声が不気味な雰囲気に拍車をかける。声優のパフォーマンスも高品質で、フォークスとエイリンの掛け合いは奇妙なコンビ感があって思わず笑ってしまう場面もある。
7年間の開発が生んだ一作
『Luna Abyss』を手掛けたKwalee Labs(旧称:Bonsai Collective)は、Hollie Emery、Harry Corr、Benni Hillの3人が2019年に設立した英国のスタジオで、本作がデビュー作だ。Hollie EmiryはかつてTeam17でプロデューサーを務めていたという経歴を持つ。2019年の着想から7年、UK Games Fundの支援を受けながら磨き上げられた本作は、まさに情熱の結晶と言えるだろう。

プレイ時間は8〜10時間ほど。長すぎず短すぎないボリュームで、だれることなく最後まで駆け抜けられる。海外レビューではCGMagazineが9/10、Noisy Pixelも9/10と高評価。Steamでは執筆時点で「非常に好評(85%)」を獲得している。
気になる点も正直に
強いて言えば、敵の種類が少なめで後半は同じパターンに慣れてしまう場面も。また、敵の登場が唐突で「どこから湧いてきたの?」と感じることもある。ただしそれは、圧倒的に魅力的な要素たちの隣に置いた場合の話で、全体としての完成度の高さは疑いようがない。

一人称視点の弾幕シューターという唯一無二のニッチを、7年間の開発で見事に成立させた本作。SFコズミックホラーの世界観、美麗な廃墟ビジュアル、ユニークな戦闘システムが三位一体となった体験は、アクションゲームファンなら絶対に見逃せない一本だ。PC版のSteamにて通常価格3,400円で発売中。ぜひ奈落の底へ踏み込んでみてほしい。
基本情報
開発: Kwalee Labs(旧称:Bonsai Collective) 販売: Kwalee リリース日: 2026年5月21日 価格: 3,400円 プラットフォーム: PC(Steam / Epic Games Store)、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Xbox Cloud Gaming(Game Pass対応) プレイ人数: シングルプレイヤー 言語: 日本語対応(テキスト) ジャンル: FPS・弾幕シューター・アクションアドベンチャー・SFホラー Steam評価: 非常に好評(85% ポジティブ・482件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/1933000/Luna_Abyss/ Epic Games Store: https://store.epicgames.com/p/luna-abyss-0348ca
PlayStation Store: https://store.playstation.com/ja-jp/concept/10018646
公式リンク
公式サイト: https://lunaabyss.com/
X (Twitter): https://x.com/LunaAbyssGame


