
なんでこんなゲームにハマってしまうんだ……
Steamのストアページで初めて見たときは、正直「また掘るゲームか」と思った。最近流行りの『A Game About Digging A Hole』のフォロワー作品だろう、なんて軽い気持ちで手に取った『One Man’s Trash』。
ところが、いざプレイしてみるとこれが大間違い。確かに「穴を掘る」という基本コンセプトは同じだけど、このゲームの中毒性は想像を遥かに超えていた。気がつけば「あと10分だけ」が3時間になり、夜中にひたすら掃除機を振り回している自分がいる始末。
これはヤバい。ヤバすぎるぞ、『One Man’s Trash』……。

実話ベースの皮肉なストーリー設定
本作の設定がまず秀逸だ。2013年、ウェールズのコンピューターエンジニアJames Howellsが8,000ビットコインの入ったハードドライブを誤って捨ててしまった実話からインスパイアされている。現在の価値にして数億円分のビットコインが、どこかのゴミ捨て場で眠り続けているという現実の悲劇を、ゲーム化してしまったというわけだ。
プレイヤーは最後の貯金をはたいてジャンクヤードを購入した元マイナー。持っているのは年季の入った掃除機だけ。1億ドル相当の「PitCoin」が眠るハードドライブを探すため、ゴミの山を掘り進んでいく……という設定からして、もうワクワクが止まらない。

掃除機一本で世界を変える爽快感
ゲームプレイはシンプルの極み。特殊な掃除機で土やゴミを吸い上げ、出てきたアイテムをJunkBayで売り、稼いだお金でアップグレードを購入する。これだけ。
でも、この「Suck. Sell. Upgrade. Repeat.」のサイクルが恐ろしいほど中毒性が高い。表面のゴミ袋や古タイヤから始まり、深く掘るほど価値の高いアイテムが登場する。テレビ、洗濯機、さらには古代の遺物まで……。「次は何が出るかな?」という期待感が、プレイヤーの手を止めさせない。
特に面白いのが掃除機の「排出モード」。吸ったゴミや土を吐き出すことで、足場やランプを作れるのだ。穴に落ちて詰んだと思ったら、自分で階段を作って脱出できる。このシステムのおかげで、思い切って深く掘り進むことができるわけだ。

ポップカルチャーへのオマージュが光る収集要素
ただの掘削ゲームで終わらないのが、豊富な収集要素。ゲーム内には数百種類のアイテムが存在し、中でも「コレクタブル」は見つけるたびにニヤリとしてしまう。
聖杯、呪われたカートリッジ、失われたゲーム機……。明らかにポップカルチャーを意識したアイテムの数々は、発見するだけで嬉しくなる。特に筆者のお気に入りは、『パルプ・フィクション』のスーツケースを明らかに意識したアイテム。こういった遊び心が、単調になりがちな作業ゲームを特別なものにしている。
これらのコレクタブルは専用の展示台に飾ることができ、自分だけの「お宝博物館」を作る楽しさもある。掃除機の見た目を変えるスキンも豊富で、基本的な青や赤から、高級感あふれるエメラルドやゴールドまで選択可能だ。

深部で待ち受ける予期せぬ恐怖
最初は平和な掘削作業だが、深く潜るほどゲームの様相は変わってくる。隠された通路、放置された電車の車両、そして……巨大な一つ目のワーム。
そう、このゲームには軽いホラー要素が含まれているのだ。深部で突然現れる敵には、リラックスしてプレイしていた多くのプレイヤーが度肝を抜かれている。Steamレビューには「ホラーゲーム苦手なのに心臓が止まるかと思った」という声も。
でも、この予期せぬ恐怖こそが『One Man’s Trash』の魅力の一つ。平和な掘削から一転、サバイバルゲームのようなスリルが味わえる。もちろん、ホラーが苦手な人には「Cozy Mode」も用意されているので安心だ。

3つのモードでプレイヤーのニーズに対応
本作の優れた点は、異なるプレイスタイルに対応した3つのゲームモードを用意していることだ。
「Cozy Mode」は敵が出現せず、クーポンも期限切れにならない完全リラックス仕様。作業しながら、まったりと掘削を楽しみたい人にぴったりだ。
「Classic Mode」は標準的なバランス。深部に敵が出現し、クーポンには制限時間がある。最もゲーム本来の体験ができるモードだ。
そして「Abyss Mode」は上級者向けの高難易度。中央のロープがなく、敵も強化されている。真の掘削マスターを目指す猛者向けのモードだ。

短時間で完結、でもリプレイ性は抜群
プレイ時間は4-9時間程度と、現代の忙しい社会人にもちょうど良い長さ。でも一度クリアしても、異なるアプローチで再挑戦したくなるのが本作の魅力だ。
アップグレードの振り方を変えれば、全く異なるプレイ体験が楽しめる。素早い掘削を重視するか、大容量バッグで効率を求めるか、ライトで安全な探索を選ぶか……。プレイヤーの数だけ、異なる掘削スタイルがある。
また、最終的にハードドライブを発見した時の選択肢も興味深い。PitCoinを取るか、謎のボックスを選ぶか……。この選択によって、エンディング後の展開も変わってくるのだ。

ソロ開発者の情熱が詰まった作品
『One Man’s Trash』はウィーンを拠点とするJony Pazu Gamesによるソロ開発作品だ。Unreal Engineを使用し、14言語に対応するなど、一人の開発者とは思えないクオリティを実現している。
価格も6.85ドル(リリース時30%オフで4.80ドル)と非常にリーズナブル。Steam Deckでも快適に動作し、コントローラーにも対応している。
現在Steam上で85%の高評価を獲得しているのも納得の完成度だ。「危険なほど中毒性がある」「1時間で飽きるはずが気づいたら3時間プレイしてた」といったレビューが目立つ。

まとめ:一度始めたら止まらない、究極の「あと一回」ゲーム
『One Man’s Trash』は、シンプルなゲームプレイに隠された深い魅力を持つ作品だ。掃除機でゴミを吸うだけという単純な行為が、なぜこれほどまでに夢中になれるのか。プレイしてみれば、きっと理解できるはずだ。
実話に基づいたユニークな設定、中毒性の高いゲームループ、豊富な収集要素、そして予期せぬ恐怖……。すべてが絶妙なバランスで組み合わされ、唯一無二のゲーム体験を生み出している。
Power Wash SimulatorやLawn Mowing Simulatorのような「作業ゲーム」が好きな人はもちろん、ちょっと変わったインディーゲームを探している人にも、ぜひプレイしてもらいたい。
きっとあなたも、掃除機を片手に億万長者の夢を追いかけることになるだろう。
基本情報
- タイトル: One Man’s Trash
- 開発・販売: Jony Pazu Games
- 配信日: 2025年7月23日
- 価格: 784円(Steam)
- 言語: 日本語対応(14言語対応)
- プレイ時間: 4-9時間
- 対応プラットフォーム: PC(Steam)
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