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あのレンタルビデオ店の空気が、まるごと蘇る。90年代を経営する『Retro Rewind』が刺さるのは、懐かしさだけじゃない

文・みんなのインディー編集部·2026.07.07·Retro Rewind - Video Store Simulator
あのレンタルビデオ店の空気が、まるごと蘇る。90年代を経営する『Retro Rewind』が刺さるのは、懐かしさだけじゃない

VHSをデッキに入れる前に「巻き戻し」を確認した、あの頃を覚えているだろうか。

『Retro Rewind - Video Store Simulator』は、カナダのわずか2人組スタジオ Blood Pact Studios が手がける、90年代のレンタルビデオ店経営シミュレーターだ。2026年3月の発売直後から爆発的にヒットし、発売5日で10万本を突破。Steamでは「圧倒的に好評」96%(約9,000件)という、とんでもない評価を叩き出している。

正直、最初は「またノスタルジー頼りの雰囲気ゲーでしょ」と思っていた。だが実際に店の扉を開けてみると——これは、懐かしさの解像度が段違いに高い、丁寧な一本だった。

ネオンとCRTの光。あの店の「空気」がまるごとある

まず息を呑むのが、空間の再現度だ。紫のネオンサイン、CRTモニターのぼんやりした光、星やカートゥーンのカメラが散りばめられた毒々しい柄のカーペット、シンセ多めのBGM——90年代のレンタルビデオ店を構成していたあらゆる要素が、そこにある。

棚には「Action」「Drama」「New Releases」「Staff Picks」のプレートが掲げられ、通路には客がうろつく。アーケード筐体やガチャ、スナックコーナー。かつて週末に通ったあの店の空気が、画面の中にまるごとパッケージされている。Blockbuster世代なら、最初の数分で胸が締めつけられるはずだ。

すべてが「手作業」だから、店に愛着が湧く

本作は一人称視点で、あらゆる業務を自分の手でこなすのが肝だ。

棚に返却されたテープを補充し、カウンターで会員証を確認し、レンタルと会計を処理する。専用レジ端末「CHECKOUT-O-MOVIE」に客の名前や注文を打ち込み、延滞していれば追加料金を請求する。床にこぼれた飲み物を拭き、ポップコーンや綿菓子を用意して客に出す。一つひとつの作業が地味に手触りよく、こなすほどに「自分の店」への愛着が育っていく。

スナックカウンターの作り込みも楽しい。ポップコーンマシン、ドリンクサーバー、綿菓子製造機……こうした設備を置いて内装を彩り、店を少しずつ自分好みに拡張していく。飾って、広げて、育てる。コージーな経営シムとしての満足感がしっかりある。

数千本の「架空VHS」と、クセの強い客たち

本作でとりわけ感心したのが、VHSカタログの作り込みだ。店に並ぶビデオは数千本にのぼり、そのどれもが独自のタイトル・ジャンル・そして手描きのジャケットアートを持っている。パロディの効いた架空映画のパッケージを眺めているだけで、いくらでも時間が溶けていく。

そして客たちも一癖ある。「退屈な映画を観ると不眠が治るんだ。今夜レンタルできる“つまらない”映画ある?」——そんな妙なリクエストに応えたり、無茶を断ったり。客とのやりとりが、単なる作業ゲーに小さな物語を添えてくれる。

裏路地の仕入れなど、ちょいダークな遊び心も

在庫の仕入れも一筋縄ではいかない。時には裏路地で、帽子とサングラスで顔を隠した怪しい業者から、グレーな出所のVHSを安く買い付ける——なんてブラックな遊びも用意されている。健全なだけじゃない、90年代のレンタル店が持っていたどこか猥雑な空気感まで拾っているのが、実に心憎い。

気になる点も正直に

夢中になれる一本だが、フェアに弱点も書いておきたい。

海外レビューでもっとも指摘されるのが、単調さだ。「補充する・掃除する・貸す・管理する」というコアループは最後まで大きく変わらず、店の規模は大きくなっても、根っこの遊びが劇的に進化するわけではない。淡々とした作業の繰り返しを「心地よい」と感じられるかどうかで、評価は分かれるだろう。

そして日本のユーザーにとって最大の注意点が、現状、日本語には対応していないこと(英語・仏語・独語・西語・伊語・ポルトガル語・ロシア語・繁体中文に対応)。接客の会話やVHSのフレーバーテキストを味わう作品だけに、ここは正直ハードルになる。とはいえ操作自体は直感的で、雰囲気を楽しむぶんには言語の壁はさほど高くない。

懐かしさに“手触り”を与えた、コージーシムの快作

『Retro Rewind』が多くの人の心を掴んだのは、単にノスタルジーを売りにしたからではない。「あの店で働く」という体験そのものを、手作業の一つひとつまで丁寧に作り込んだからだ。2人組のスタジオが、これほど密度の高い空間を生み出したことにも素直に敬服する。

定価2,300円(記事執筆時点で20%オフの1,840円)。日本語非対応という点は要注意だが、レンタルビデオ店に通った記憶がある人、あるいはあの時代の空気に触れてみたい人にとっては、じゅうぶんに“巻き戻す”価値のある一本だ。


基本情報

開発: Blood Pact Studios

販売: Blood Pact Studios

リリース日: 2026年3月17日

価格: 2,300円(記事執筆時点で20%オフ・1,840円のセール表示あり)

プラットフォーム: PC(Windows)

プレイ人数: 1人

言語: 英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語(ブラジル)・ロシア語・繁体中文(日本語は非対応

ジャンル: 経営シミュレーション、カジュアル、インディー

Steam評価: 圧倒的に好評(96% – 8,916件のレビュー)


購入リンク

Steam: https://store.steampowered.com/app/3552140/Retro_Rewind__Video_Store_Simulator/

Game Data
タイトル
Retro Rewind - Video Store Simulator
開発
Blood Pact Studios
ジャンル
シミュレーション / カジュアル / インディー / 経営 / ノスタルジー
対応
PC (Windows)
難易度
初心者向け
Steam評価
圧倒的に好評(96% – 8,916件)

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