
SWAT隊員になりきって特殊作戦に参戦だ!
「SWAT」と聞いて、映画やドラマでよく見るあの黒い装備に身を固めた特殊部隊を思い浮かべる人は多いだろう。扉を蹴破って颯爽と突入し、テロリストを制圧する様子は確かにカッコいい。しかし実際のSWAT作戦は、そんな派手さの裏に緻密な計画と冷静な判断力が求められる、極めて繊細な任務なのだ。
PC(Steam)向けタクティカルシミュレーション『SWAT Commander』は、まさにそんなSWATの現実を突きつけてくる作品。「特殊部隊になってテロリストをバンバン倒すぜ!」なんて軽い気持ちで始めると、あっという間に隊員が全滅して任務失敗という痛い現実を味わうことになる。

計画フェーズで勝負は決まる
本作の大きな特徴は、リアルタイム実行の前に必ず「計画フェーズ」が存在すること。これは『Door Kickers』シリーズでお馴染みの、いわゆる「プラン&ゴー」システムだ。プレイヤーはまず俯瞰視点で建物の構造を確認し、各隊員の進入ルート、使用する装備、突入タイミングなどを詳細に決定する。
この計画段階が本作の醍醐味であり、同時に最大の難しさでもある。扉をどちら側から開けるか、フラッシュバンを投げるタイミングは何秒後か、狙撃手はどこに配置するか…一つ一つの判断が隊員の生死を分ける。
「こっちの部屋から回り込んで…いや、待てよ。もしかしたら廊下に敵が待ち伏せしているかもしれない。だったら窓から侵入した方が…」と、プレイヤーは現実のSWAT指揮官さながらに頭を悩ませることになる。

現実は思い通りにいかない
計画を練りに練って、「これで完璧!」と意気込んで実行フェーズに移ると…あっさり計画が崩壊する。これが本作の残酷な現実だ。
敵のAIは予想以上に賢く、時には思いもよらない行動を取る。せっかく静かに侵入したのに、一人の敵に気づかれた瞬間に建物全体にアラームが響き渡る。催涙ガスで敵を無力化したつもりが、ガスマスクを装着した敵に逆襲される。狙撃手が完璧なポジションに着いたと思ったら、別の場所から狙い撃ちされる。
「なんで計画通りにいかないんだ!」と叫びたくなるが、これこそが現実のSWAT作戦なのだろう。どんなに完璧な計画でも、現場では予期しない事態が次々と発生する。隊員一人一人の判断力と適応力が試される瞬間だ。

装備選択の重要性
本作では任務開始前に各隊員の装備を細かく設定できる。突入用のショットガン、中距離戦に適したアサルトライフル、遠距離狙撃用のライフル。防護装備も軽装で機動力を重視するか、重装甲で生存性を高めるかで戦術が大きく変わる。
特に面白いのが非致死性装備の存在。フラッシュバン、催涙ガス、スタンガンなど、敵を殺さずに制圧する手段が豊富に用意されている。人質がいるシチュエーションでは、これらの装備選択が任務成功の鍵を握る。
「敵を倒せばいい」という単純な思考では通用しない。民間人の安全確保、証拠保全、被害の最小化…SWAT隊員には多くの制約と責任が課せられているのだ。

多様なシチュエーション
銀行強盗、人質事件、麻薬密売組織の摘発、テロリストの制圧…本作には様々なタイプの任務が用意されている。それぞれで要求される戦術が異なるため、一つのパターンに頼ることができない。
銀行強盗では人質の安全が最優先。慎重な侵入と交渉が鍵となる。一方で麻薬組織の摘発では、証拠隠滅を防ぐための迅速な制圧が求められる。テロリスト相手では、自爆テロの可能性も考慮しなければならない。
各シナリオをクリアするたびに「今度はもっとうまくやれるはず」という思いが湧いてくる。完璧な作戦を組み立てる楽しさと、それが崩れた時の悔しさ。この繰り返しが本作の中毒性を生んでいる。

レトロな見た目に隠された本格派
本作は極めて本格的な戦術シミュレーションだ。弾道計算、視線管理、音響システムなど、リアルな戦闘を再現するための要素がしっかりと組み込まれている。
この「見た目はシンプル、中身は本格派」というアプローチが功を奏している。純粋に戦術と戦略に集中できるのだ。
開発チームは明らかに『Door Kickers』や『Rainbow Six』シリーズの影響を受けており、戦術シミュレーションゲームの良いところを上手く取り入れている。特に『Door Kickers』のプラン&ゴーシステムを基に、より現実的なSWAT作戦をシミュレートした点は高く評価できる。

挫折と達成感のバランス
正直に言うと、本作は決してとっつきやすいゲームではない。最初のうちは任務失敗を繰り返し、「こんなの無理ゲーだ」と投げ出したくなるかもしれない。しかし、そこで諦めてしまうのは非常にもったいない。
何度も失敗を重ね、敵の配置パターンや行動を学習し、装備と戦術を最適化していく。そうして迎えた完璧な作戦成功の瞬間は、他のゲームでは味わえない特別な達成感をもたらしてくれる。
「一人の犠牲者も出さずに全員を救出できた」「敵を一人も殺さずに制圧完了」こうした成功体験は、単に「敵を倒した」という達成感とは質が異なる。本当にSWAT指揮官になったような気分を味わえるのだ。

本作は確かに難しい。しかし、その難しさの先にある達成感は本物だ。戦術シミュレーションゲームが好きな人、現実的な特殊部隊作戦に興味がある人には強くオススメしたい作品である。
ただし、サクッと爽快にゲームを楽しみたい人には向かないかもしれない。本作が求めるのは忍耐と思考力。それを提供できる人にとって、『SWAT Commander』は間違いなく傑作と呼べるゲームだ。
基本情報
ゲーム名: SWAT Commander
開発: Red Mountain Games, Ritual Interactive
販売: Ritual Interactive
配信日: 2025年7月31日
価格: 2,300円(Steam)
言語: 音声以外日本語対応
ジャンル: 戦術シミュレーション
Steam購入リンクはこちらhttps://store.steampowered.com/app/1619310/SWAT_Commander/