巨大生物オンブの背中で村づくり!『The Wandering Village』は「風の谷のナウシカ」な世界で共生サバイバル

更新: 2025年7月21日
The Wandering Village

オンブちゃんの背中、意外と住み心地いいかも?

毒に汚染された世界で、巨大な古代生物の背中に村を作って生き延びる——そんな奇抜すぎるコンセプトを聞いて、思わず「は?」となった人も多いのではないだろうか。筆者もその一人だった。しかし、実際に『The Wandering Village』をプレイしてみると、この設定が驚くほど理にかなっていることに気づかされる。

本作は、スイスのStray Fawn Studioが開発し、2022年9月からSteamで早期アクセス版が配信され、ついに2025年7月17日に正式版がリリースされた街づくりシミュレーションゲームだ。Steamでは5,600件を超えるレビューで91%が好評という圧倒的な支持を獲得しており、YouTubeやTikTokでは数百万回の視聴数を記録している話題作でもある。

毒の世界で唯一安全な「移動する土地」

ゲームの舞台は、謎の植物が放つ毒胞子によって汚染された終末世界。地表はほとんどが毒に侵されており、普通に暮らすことは不可能だ。そんな絶望的な状況で、生存者たちが最後の希望として辿り着いたのが「オンブ」と呼ばれる巨大な古代生物の背中。高い位置にあるため毒の影響が少なく、しかも移動しながら安全な場所を探せるという、まさに理想的な避難場所なのだ。

「オンブ」という名前からも分かるように、開発者は明らかに日本文化に影響を受けている。実際、ゲーム内には鯉のぼりが飾られた建物も登場するなど、随所に日本的要素が散りばめられている。また、毒に汚染された世界観や巨大な生物との共生というテーマは、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』を彷彿とさせる設定だ。

街づくりの常識を覆す「制約」が面白い

一般的な街づくりゲームとの最大の違いは、建設できる場所が「オンブの背中」という限られた空間に制約されることだ。無限に広がる土地に自由に街を作れる従来作品とは異なり、本作では常にスペース効率を意識した設計が求められる。

住民の住居、食料生産施設、研究所、オンブの世話をする施設——これらすべてを限られた背中に配置しなければならない。しかも、オンブは生き物なので疲れれば休息し、お腹が空けば食事が必要になる。プレイヤーは人間の村と巨大生物オンブ、両方の面倒を見る必要があるのだ。

筆者が実際にプレイした際、最初は「住居を建てて、農場を作って、研究所を置いて……」と従来の街づくりゲームの感覚でプレイしていたが、すぐに行き詰まった。オンブが疲れて動かなくなったり、毒の胞子が村に降りかかって住民が病気になったりと、予想外のトラブルが次々と発生したのだ。

共生か寄生か——選択が村の運命を左右

本作の最も興味深い要素は、オンブとの関係性を「共生」と「寄生」のどちらにするかプレイヤーが選択できる点だ。共生を選べば、オンブの健康を気遣い、適切な食事を与え、時には薬で治療することで信頼関係を築ける。一方、寄生を選べば、オンブの健康を犠牲にしてでも村民の生活水準を優先できる。

筆者は当初、「せっかく助けてもらってるんだから共生でしょ!」と考えていたが、実際にプレイしてみると、厳しい生存環境では時として非情な選択も必要になることを痛感した。オンブ用の食料を確保するか、それとも村民の食事を優先するか——そんなジレンマに何度も直面することになる。

探索と発見が支える長期プレイ

オンブは様々なバイオームを移動する。砂漠、森林、海洋など、それぞれに異なる資源や脅威が存在し、村の運営戦略も変える必要がある。遠征チームを派遣すれば、古代の遺物や希少な資源、時には新たな住民を発見することもできる。

特に研究システムが秀逸で、発見した古代技術を解析することで新しい建物や設備が利用可能になる。火炎放射器による毒植物の除去システムや、オンブの進路を指示できるタワーなど、研究によって解放される要素は村の発展に大きな影響を与える。

筆者のプレイでは、達人難易度で村民200人以上、生存日数300日を超えるまで楽しめた。アーリーアクセス時代から通算90時間以上プレイしているプレイヤーも珍しくないほど、長期間楽しめる作品だ。

インディーゲームらしい丁寧な作り込み

10人規模という小さなチームで開発された本作だが、その完成度は大手タイトルに匹敵する。2Dグラフィックで描かれた村人や建物は非常に可愛らしく、人間視点までズームすると細かなアニメーションまで確認できる。また、フルート中心のBGMは『ニーア オートマタ』の村の音楽を彷彿とさせる美しい仕上がりだ。

正式版では、プレイヤーの行動に応じて様々な修正効果を付与する「チャレンジモード」や、オンブを不死身にしてピュアな街づくりを楽しめる「サンドボックスモード」も追加されており、多様なプレイスタイルに対応している。

他では味わえない唯一無二の体験

「巨大生物の背中で街づくり」というコンセプトは、確実に他のゲームでは体験できない。制約がある中での効率的な村運営、生き物との共生関係、移動する拠点ならではの探索要素——これらすべてが組み合わさった時、『The Wandering Village』は単なる街づくりゲームを超えた特別な体験を提供してくれる。

Steam、Nintendo Switch、PlayStation、Xbox——すべての主要プラットフォームで展開されており、どこでもオンブちゃんとの共生生活を始められる。毒に汚染された世界で、巨大生物と共に新たな希望を見つける旅に、あなたも参加してみてはいかがだろうか。

基本情報

  • タイトル: The Wandering Village~さまよえる村
  • ジャンル: シミュレーション, ストラテジー
  • 開発元: Stray Fawn Studio
  • パブリッシャー: Stray Fawn Publishing, WhisperGames
  • リリース日: 2025年7月17日(正式版)
  • 早期アクセス開始: 2022年9月14日
  • 対応プラットフォーム: PC(Steam), Nintendo Switch, PlayStation 4, PlayStation 5, Xbox One, Xbox Series X|S
  • 価格:
    • Steam: 3,400円
    • Nintendo Switch: 3,400円
    • PlayStation: 3,410円
    • Xbox: 3,700円
  • 言語: 日本語対応
  • Steam評価: 非常に好評(91%、5,600件以上のレビュー)

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