【レビュー】『Mina the Hollower』——地面に潜る一手が、探索も戦闘も少し狂わせるゴシックアクション
Yacht Club Gamesといえば、2014年にリリースした『Shovel Knight』で世界を席巻したスタジオ。その後10年以上、彼らは同作のDLCや関連コンテンツを作り続けてきた。だから正直、「また懐かしさを売りにしたゲームか」と思っていた。
しかし『Mina the Hollower』を起動すると、その見方はすぐ崩れる。見た目はゲームボーイカラー風で、やっていることも一見クラシックなのに、地面に潜るたびにプレイの感覚が少しずつズレる。かわいいネズミの冒険なのに、土と骨と湿った暗さがずっと画面の奥にある。懐かしいのではなく、古い器に変な熱を流し込んだゲームだ。
「潜る」という行為がすべてを変える
本作の最大の特徴は、タイトルにも含まれる「Hollowing」——地面に潜るという独自メカニクスだ。主人公のミナは、ムチで敵を倒しながら、文字通り地面の中へ潜ることができる。

この「潜る」が、思った以上にしつこく効いてくる。敵の攻撃を避けるために潜る。隠しアイテムを掘り出すために潜る。地雷を爆発させるために潜る。特定の扉を開くために潜る。一見シンプルなアクションなのに、探索・戦闘・謎解きの全部に関係してくるため、使いこなすほどゲームの見え方が変わっていく。
ただの回避ボタンではない。地面の下に一瞬逃げ込むだけで、画面の読み方が変わる。敵を正面から叩くゲームに見えて、実際には「どこで潜るか」「いつ顔を出すか」を考えるゲームでもある。この手触りがあるから、『Mina the Hollower』は単なるレトロ風アクションで終わっていない。
ゴシックホラーの世界観に漂うゲームボーイの美学
ビジュアルスタイルも独特だ。本作は「Game Boy Color」時代のゲームを意識した8bitドット絵を採用している。しかもそれは単なる「風」ではなく、実際のゲームボーイハードウェアの技術的制約——タイル1枚あたり4色制限——にかなり忠実に寄せた再現だ。
開発のきっかけは、Yacht Club Gamesのスタッフ、アレック・フォークナーが個人プロジェクトとして始めたもの。当時プレイしていたゲームボーイカラーのゲームにインスパイアされ、趣味で作り始めたものが、会社の目に留まり正式プロジェクトとなった。2022年にはKickstarterで目標を大幅に超える140万ドル以上の資金を集め、完成に至っている。

舞台となるのは呪われた島。ゴシックホラーの香りが漂うビクトリア朝風の世界観に、個性的なエリアが連なっていく。ある場所では潜ることが主題になり、別の場所ではレールアクションやギミック処理が前に出る。20時間前後遊んでも、同じことを淡々と繰り返している感じは薄い。
個人的に良いと思ったのは、ドット絵が「かわいい」で止まらないところだ。ミナは小さくて表情も愛らしいが、敵の造形や背景にはかなり湿った気味悪さがある。暗い場所で骨を拾い、土を割って進み、奇妙な住人に出会う。その小さな不気味さが積み重なるので、画面はレトロなのに妙に生々しい。
日本語UI対応になったのは大きい
初期の記事では「日本語なし」としていたが、Steamストア上では現在、日本語インターフェイス対応が確認できる。フル音声や日本語字幕ではなく、対応欄ではUIのみの扱いなので、物語を文章で深く味わいたい人はそこだけ注意したい。
とはいえ、メニューや基本的な操作まわりを日本語で確認できるようになった意味は大きい。本作はアクションの比重が高い一方で、装備、トリンケット、サイドアーム、探索先の把握など、細かい情報を読みながら進める場面も多い。日本語UIがあるだけで、最初の入り口はかなり柔らかくなる。
気になる点も正直に
Steamでは発売後も評価は高く、全言語レビュー7,350件中88%が好評、直近30日でも3,431件中88%が好評となっている。数字だけ見ればかなり安定しているが、コミュニティの話題を見ると、不満点もはっきりしている。
一番多く目につくのは、難しさとソウルライク的なペナルティへの賛否だ。序盤から敵は容赦なく、死ぬと所持していた「ボーン」を落とす。チェックポイントで全回復しない仕様に戸惑う声や、敵の当たり判定、終盤の一部セクション、特定ギミックの説明不足を指摘する声もある。

筆者も最初のエリアで何度も倒された。「これ、無理ゲーでは?」と感じた瞬間はある。ただ、本作の難しさは基本的には学習できるタイプだ。敵の動き、攻撃パターン、地形ギミックにはロジックがあり、死ぬたびに少しずつ理解が進む。理不尽さゼロとは言わないが、怒りながらももう一回やってしまうタイプの厳しさだと思う。
ガイダンスを厚くしてほしい人には、最初の1〜2時間がかなり硬い。逆に、説明されすぎないゲームを触りながら理解していくのが好きなら、この手探り感はかなり楽しいはずだ。
Steam Deckで遊ぶなら、文字と操作感を見ておきたい
Steamストア上ではSteam Deck向けのレビュー絞り込みが用意されており、実際に携帯機で遊ぶ人も一定数いる。ただし、この記事の執筆時点で公式のSteam Deck互換性表示を断定できる情報までは確認していない。
ゲーム自体は軽めで、Steamの最小要件もストレージ860MB、メモリ4GBとかなり控えめだ。アクションとしてもコントローラー向きなので、携帯機との相性は悪くなさそうに見える。ただ、細かいドット絵、暗い画面、シビアな回避、説明少なめの探索が重なるため、Steam Deckで長時間遊ぶなら文字サイズや画面の見やすさは気にしておきたい。
ショベルナイトの次、という重さに耐えている
発売後の数字を見ると、『Mina the Hollower』はかなり健闘している。PC GamerやGamesRadar+など海外メディアでは、発売直後の売上や高評価が大きく取り上げられ、Yacht Club Gamesにとって新IPとして重要な成功になったことも報じられている。

ディレクターのショーン・ヴェラスコは以前、「Shovel Knightが我々のマリオなら、ミナは我々のゼルダになる」と語っていた。実際にプレイすると、その言葉はまったく誇張ではないと思う。
もちろん、誰にでも勧めやすいゲームではない。難しい。暗い。説明も多くない。ソウルライク的な要素も、人によっては疲れる。それでも、地面に潜る一手だけで戦闘と探索のリズムを変え、ゲームボーイカラー風の小さな画面に濃いゴシックの匂いを詰め込んだ手つきは、かなり見事だ。
懐かしさで気持ちよくさせるゲームではなく、懐かしい見た目を使って、ちゃんと今のアクションゲームとして噛みついてくる作品。『Mina the Hollower』はそういうゲームだと思う。
基本情報
開発: Yacht Club Games
販売: Yacht Club Games
リリース日: 2026年5月28日(Steam表記)
価格: 19.99ドル(Steam)
プラットフォーム: Steam(Windows / macOS / Linux)、Nintendo Switch、Nintendo Switch 2、PlayStation 5、Xbox Series X|S
プレイ人数: 1人
言語: 日本語UI対応、英語音声なし
ジャンル: アクションアドベンチャー
Steam評価: 非常に好評(88% – 7,350件のレビュー)
ストアページ
Steam: https://store.steampowered.com/app/1875580/Mina_the_Hollower/
公式リンク
公式サイト: https://www.yachtclubgames.com/
X (Twitter): https://x.com/YachtClubGames
- タイトル
- Mina the Hollower
- 開発
- Yacht Club Games
- ジャンル
- アクション / アドベンチャー / シングルプレイヤー / ホラー
- 対応
- Steam・Nintendo Switch・Nintendo Switch 2・PlayStation 5・Xbox Series X|S
- 難易度
- 上級者向け
- プレイ時間
- 15〜30時間
- Steam評価
- 非常に好評(88%、7,350件)
- 配信日
- 20260528
01Luna Abyss【レビュー】『Luna Abyss』——狙うな、避けろ! 7年の執念が生んだ「一人称視点×3D弾幕」の狂気と、美しき月のコズミックホラー
続きを読む →
02感染区白書バイオハザードへの愛が、ターン制に宿った──『感染区白書』
続きを読む →
03Lucid Blocks