
StarCraftやCommand & Conquerが全盛だった時代から随分と時間が経ち、RTSというジャンルそのものが”一部の玄人向け”というレッテルを貼られてから久しい。操作が複雑すぎる、覚えることが多すぎる、対人戦はランク外の人間には厳しすぎる──そんな理由で、筆者のようなカジュアルなストラテジーゲーマーはジャンルから遠ざかっていた。

だから、『Rogue Command』のストアページを見たとき、最初はピンとこなかった。「RTS×ローグライト」……それって、ただでさえ難しいRTSに、更に複雑な要素を足しただけでは? そんな懐疑心を抱えながら起動したのだが、気が付けば数時間が経過していた。
「ブループリント」こそがすべてを変える
本作の核心は、ローグライト特有の「毎回異なるビルド構築」にある。各バトル終了後、プレイヤーはいくつかの「ブループリント(設計図)」の中から1枚を選択する。戦闘ユニット、防衛施設、生産拠点──これらがランダムに提示され、どれを選ぶかによってそのランの「型」が決まっていく。

あるランでは重装甲ユニット中心の堅実な正面突破型。別のランでは航空ユニットと軌道爆撃を組み合わせた高火力型。さらに別のランでは支援施設を連ねた持久戦型──同じゲームを遊んでいるのに、毎回まったく異なる戦略を要求されるのだ。
ここに「ハック」と呼ばれるシステムが絡んでくる。これはゲームのルールそのものを変質させる特殊アーティファクトで、たとえば「敵ユニットを倒すたびに自軍が回復する」「テレポート時に周囲に爆発を発生させる」など、常識外れの効果を持つものが揃っている。ブループリントとハックの組み合わせ次第で、いわゆる”壊れビルド”が生まれる瞬間がある。その快感たるや、ローグライトを愛する者にはたまらないものだ。
バレットタイム──RTSを「自分のペース」で遊べる革命
本作がRTS初心者に対して最も親切な設計をしている部分、それが「バレットタイム(スローモーション)」だ。
従来のRTSといえば、高速の操作が要求される。複数の場所で同時に戦闘が起きる中、素早くカメラを動かし、ユニットに指示を出し、資源を管理し……その処理速度こそが上達の証、でもあった。「APM(1分あたりの操作数)」という指標が存在するほどだ。
しかし本作では、いつでもゲームをスローダウンできる。これにより、複数のユニットへの細かい指示、絶妙なタイミングでの軌道爆撃の投下、緊急の部隊再編成——これらを自分のペースで行えるのだ。「RTS的な戦略の深み」を、「操作速度という壁」なしに楽しめる。これは革命的な設計判断だと思う。
Command & Conquerの魂、Slay the Spireの頭脳
本作を語るうえで避けられない比較対象が2つある。Command & Conquer(またはStarCraft)と、Slay the Spireだ。
ベースとなるRTS部分は、まさに往年の名作を彷彿とさせる。資源を採掘してユニットを生産し、拠点を守りながら敵陣を崩していく──このシンプルかつ骨太な手応えは、現代のRTSが失ってしまった何かを取り戻させてくれる。エンジニアが倒されるとゲームオーバーというシステムも、緊張感を生み出すのに一役買っている。

一方でメタ進行の部分は、Slay the Spireをはじめとするデッキビルドローグライトの文法を正確に踏襲している。バトル間の選択、シナジーの発見、ランごとに異なる成長曲線──「今のビルド、もしかして何でも倒せるのでは?」という瞬間を目指してプレイし続けてしまう。
開発元のfeneq GmbH(ドイツ拠点)は、2021年から本プロジェクトに取り組んできた。2024年11月の早期アクセス開始後、コミュニティとの密な対話を経て、2026年5月14日に正式版1.0をリリース。早期アクセス期間を通じて750件以上のレビューで90%の好評を獲得しており、長期的なプレイ時間(数十〜数百時間)を記録するプレイヤーも続出している。
1ランの気持ちよさが90分で完結する
RTSのもう一つのハードルが「プレイ時間」だ。キャンペーンを進めるRTSは、1セッションが長くなりがちで、忙しい社会人にはなかなか手が出しにくい。
本作はその問題にも答えを用意している。1ラン(9ミッション)の所要時間は、慣れれば約75分。仮に途中でやられても、ローグライトの特性上「また次のランで新しい挑戦を」という気持ちでリセットできる。プレイ時間のハードルが低く、かつ繰り返しプレイに強い設計は、現代のゲームライフに非常にマッチしている。

マップは20種類以上が用意されており、それぞれに固有のイベントや環境災害が設定されている。ランごとのブループリント・ハックとの組み合わせを考えると、理論上の体験パターンは無数に及ぶ。「また同じことをやっている」という感覚になりにくいのが嬉しい。
気になる点も正直に
一方で、いくつかの課題も感じた。グラフィックはローポリ・テクスチャレスなスタイライズドデザインを採用しており、ビジュアルの第一印象は地味に感じる人もいるだろう。これはある意味で意図的な選択──多数のユニット・環境バリエーションを実現するための予算配分の結果であり、ゲームプレイに悪影響を与えるものではないが、映像的な派手さを求める人には物足りないかもしれない。

また複数ユニット選択時の情報パネルが省略されているなど、UI面ではまだ改善の余地がある部分も見受けられる。とはいえ、正式リリースに至るまでコミュニティのフィードバックを丁寧に反映させてきた開発姿勢は信頼に値する。
日本語に対応しているのは嬉しいポイントだ。英語が得意でなくとも、じっくりとビルドを練る楽しみは十分に味わえる。
「RTSはもうオワコン」──そう思っていた筆者の先入観を、本作はあっさり覆してしまった。ローグライトの「毎回新鮮なビルド探求」という魔力と、RTSの「軍を率いる骨太な戦略」という醍醐味が、バレットタイムという発明によって見事に調停されている。これは新しいRTSの形だ。StarCraftをやり込んでいた世代にも、ローグライト好きのカジュアルゲーマーにも、等しく手を伸ばしてほしい一本だ。
基本情報
開発: feneq GmbH 販売: feneq GmbH リリース日: 2026年5月14日(早期アクセス開始:2024年11月18日) 価格: 2,300円(Steam定価) プラットフォーム: PC(Windows) プレイ人数: 1人(シングルプレイヤー) 言語: 日本語対応(英語・フランス語・ドイツ語・韓国語・中国語など10言語) ジャンル: RTS / ローグライト / ベース建設 / SF / デッキビルド Steam評価: 非常に好評(90% ポジティブ・754件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/1461910/Rogue_Command/
公式リンク
公式サイト: https://www.feneq.com/
Discord: https://discord.gg/UMA9k3A7N2
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCRKvPBWfXnZQ34CUuywVxgg


