
「ブラックジャックって、カジノの運ゲーでしょ?」
正直に言おう。僕もこのゲームの門を叩くまでは、インディーゲームとしての深みをこれっぽっちも期待していなかった。だがこれはブラックジャックを「題材にした」のではなく、ブラックジャックを「解体して再構築した」ゲームだ。ポーカーをベースにした『Balatro』が世界を席巻したなら、次はブラックジャックの番だ──そう言わんばかりの完成度で、地獄の賭け卓から手招きしてくる。

目覚めたら、そこは地獄のカジノだった
プレイヤーは主人公「クリス」として、気がつけば薄暗い地獄のカジノに迷い込んでいる。記憶は曖昧で、自分がなぜここにいるのかすらわからない。唯一の脱出方法は、ソウルコイン(魂の硬貨)をかき集め、冥界の渡し守フェリーマンに賄賂を渡すこと。そのためには、同じく地獄に囚われた亡者たちとブラックジャックで戦い続けるしかない。
対戦相手は、テーブルに手だけを置いた謎めいた存在たちだ。その顔は見えない。しかし、対戦を重ねるごとに彼らの過去が断片的に明かされていく。案内役のリードという存在が、ブリティッシュアクセントで静かに語りかけてくる様子は、どこか不気味で、しかし妙に引き込まれる。
特筆すべきは、この亡者たちとクリスの関係性だ。プレイを進めると、対戦相手の多くが見知った人物であることが明らかになっていく。過去の記憶が少しずつ蘇るたびに、「なぜ自分はここにいるのか」という問いが輪郭を帯び始める。カードゲームでありながら、物語への牽引力が驚くほど強い。
チートこそが最強の戦略だ!

本作の最大の特徴は、「チート(不正)」が正式な戦術として組み込まれていることだ。
基本ルールはブラックジャックそのもの。自分と相手が交互にカードを引き、21に近い方が勝ちで21を超えればバスト。シンプルな骨格はそのままに、本作では「スリーブ(袖の下)」と呼ばれる隠しカードシステムが加わる。スリーブには特殊効果を持つカードを忍ばせており、勝負の場で電撃的に使用できる。
カードのスーツ(マーク)ごとに能力が異なる。ダイヤモンドはデッキ操作、クラブは数値変換、スペードは相手妨害、ハートはマイナス値カードを扱う。この4系統を組み合わせて自分だけのデッキを構築するのが、本作のローグライト的な面白さの核心だ。
さらに「Hollow(空洞)」と「Whisper(囁き)」という特殊メカニクスも存在する。Hollowは別のカードを重ねて複数の効果を同時に発動させる仕組みで、Whisperはそのタイミングで自動発動するトリガー効果だ。「Drain(吸収)」はカードの数値を0にして自分のカードに加算し、「Break(破壊)」は相手の計算を崩す。慣れてくると、もはやブラックジャックではなく「算術による心理戦」を仕掛けている感覚になる。
敵もただのやられ役ではなく、それぞれが固有のルール変更や妨害技を持ってくる。「こちらが強くなると、向こうも強くなる」このいたちごっこが、周回ごとの緊張感をずっと維持してくれる。
ソロ開発者?いや、ウィーンの精鋭スタジオが挑んだ野心作

開発を手がけたのは、オーストリア・ウィーンを拠点とするMi’pu’mi Games GmbH。実は本作がスタジオ初のオリジナルIPタイトルとなる。これまで下請け開発や他社タイトルのサポートを行ってきた彼らが、満を持して世に放った自信作だ。パブリッシャーはインディーゲームの発掘に定評のあるSkystone Gamesが担当している。
2025年11月にデモ版を公開したところ、「Balatraのブラックジャック版」と評され、発売前から大きな注目を集めた。2026年5月12日の正式リリース後も、その評判は口コミで広がり続けている。現時点でSteamレビューは89%の好評価(669件)を獲得。発売わずか1週間余りでこの評価は、本作の完成度を如実に物語っている。

さらに、PC版と同日にXbox / PlayStation 5 / Nintendo Switchのコンソール版も同時リリース。しかもXbox Game Passのデイワンタイトルとして配信されたため、Game Pass加入者であれば追加費用なしで遊べる。PC版はSteam Deck Verifiedも取得しており、携帯ゲーム機感覚での一気プレイにも対応している。
「次の一手」を考え続けてしまう中毒性
本作のローグライト構造は実によく練られている。ランごとに異なるカードの出現順、アーティファクト(遺物)の組み合わせ、対戦相手の順番、賄賂に使えるコインの量──すべてが変動するため、同じプレイングは二度とない。

序盤は「とりあえず21に近づける」だけで精一杯だが、慣れてくると「このカードを引いたら次にこう使う、その前に相手を妨害する」という多段階の読みが自然と生まれてくる。気づいたら1時間が過ぎていた、ということが何度も起きた。実績(アチーブメント)は全42個が用意されているが、現在のクリア率はほぼ0%に近い水準。やり込もうとすればとことん深い。

難易度面でも丁寧な設計がされており、チュートリアルではブラックジャックのルール自体を知らない人向けの説明も用意されている。「カードゲームは難しそう」という敷居を下げる工夫が随所に見られるのも好感が持てる。
基本情報
開発: Mi’pu’mi Games GmbH
販売: Skystone Games
リリース日: 2026年5月12日
価格: 1,799円※発売記念15%オフセール中
プラットフォーム: PC(Steam / Steam Deck対応) / Xbox Series X|S / PlayStation 5 / Nintendo Switch
プレイ人数: 1人
言語: 英語・日本語・中国語(簡体・繁体)・韓国語 他多数対応
ジャンル: ローグライトデッキビルダー / カードゲーム
Steam評価: 非常に好評(89% – 669件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/3100370/Black_Jacket/
公式リンク
Mi’pu’mi Games: https://www.mipumi.com/


