
まさかスロットマシンでこんなに手に汗握るとは……
Steamのストアページを眺めていたとき、ひとつのゲームに目が釘付けになった。『CloverPit』……そのタイトルからは想像できない、実に禍々しいゲーム画面。スロットマシンと錆びついたATM、そして床には不穏な金網。パッと見ただけで「これはヤバそう」という直感が働いた。
しかし、Steam評価96%という驚異の数字に後押しされ、恐る恐るプレイしてみることに。まさかこの判断が、筆者を借金地獄の虜にするとは、このとき夢にも思っていなかった。

狭い独房で始まる悪夢のギャンブル地獄
ゲームが始まると、プレイヤーは薄暗い独房に閉じ込められている。目の前にはスロットマシン、隣にはATM、そして足元には今にも開きそうな金網の床。状況説明もそこそこに、冷たい機械音声が告げる。
「借金を返済しろ。さもなくば……」
足元の金網の下には深い穴が見えている。そう、借金返済に失敗すれば文字通り「破滅」が待っているのだ。まるでSAWシリーズのような死のゲームが、スロットマシンで展開される。これは確実に『Buckshot Roulette』のDNAを受け継いでいる。

最初の借金額は数百コイン程度。「なんだ、簡単そうじゃん」と甘く見ていた筆者だったが、いざスロットを回してみると……まぁ、当たらない。
7回のスピンで稼げるのはせいぜい100コイン程度。しかも1回のスピンには10コイン必要。つまり、運が悪いと支出が収入を上回って借金が膨らむという恐ろしい仕組みだ。まさに現実のギャンブルの怖さを体現している。
150種類以上のチャームが織りなす戦略の深み
『CloverPit』の真髄は、運だけに頼らない戦略性にある。スロットで稼いだチケットを使って購入できる「チャーム」が、このゲームの面白さを決定づけている。

チャームには実に多彩な効果がある。「レモンシンボルを黄金に変える」「3回目のスピンで必ず当たりが出る」「666の数字を無害にする」など、スロットの結果に直接干渉するものから、「利子を2倍にする」「最後のスピンでラッキー度上昇」といった間接的に有利になるものまで様々だ。
特に面白いのが、チャーム同士のシナジー効果。例えば「黄色いシンボルの価値2倍」と「レモンを黄金に変える」を組み合わせれば、レモンが超高価値シンボルに化ける。まるで『Balatro』のような組み合わせの妙が、このスロット地獄に戦略性をもたらしている。

しかも各ランごとに購入できるチャームの種類は限られるため、「このチャームが来たらこのルートで勝負」「今回はこの戦略で行こう」といった判断が求められる。運だけでなく、明確な戦略が必要なのだ。
恐怖と快感が交錯する借金返済システム
『CloverPit』の最大の魅力は、プレッシャーとカタルシスのバランスにある。各ラウンドの終了時、借金額に達していなければゲームオーバー。しかも次のラウンドでは借金額が大幅に増額される。

プレイしていると、まさに現実の借金地獄を味わっているような気分になる。「あと200コイン足りない……でも最後のスピンでジャックポットが出れば……!」という、ギリギリのスリルが堪らない。
そしてその緊張の後に訪れる成功の瞬間。特大のコンボが決まって一気に数千コインを稼いだ時の爽快感は、まさに本物のギャンブルに勝った時の快感に匹敵する。ただし、現実のお金は一切かからないという安心感付きだ。

実際、開発者も「これはギャンブルシミュレーターではありません。リアルマネーを要求することは絶対にありません」と明言している。ギャンブルの快感だけを抽出し、依存性や経済的リスクを排除した、まさに「理想的なギャンブル体験」と言えるだろう。
絶妙すぎる難易度バランスと中毒性
『CloverPit』の難易度設定は絶妙だ。簡単すぎず、難しすぎず、常にプレイヤーを「もう一回だけ」の気持ちにさせる。

特に中盤以降、借金額が数万コインに跳ね上がると、もはや普通のスロットでは到底返済できない。しかし、チャームの組み合わせ次第では一撃で十万コイン以上も夢ではない。この「絶望から希望への転換」が、プレイヤーを虜にする。
筆者も気がつけば5時間連続でプレイしていた。「今度こそ億万長者になって借金を完済してやる!」という気持ちで、何度も何度も挑戦してしまう。まさに『Balatro』と同じ中毒性だ。

しかも本作には複数のエンディングとエンドレスモードも用意されている。完全クリア後も、「今度はもっと高いスコアを」「今回はこの戦略で」といった楽しみ方ができる。
インディーゲーム界の新星が生んだ傑作
開発を手がけたPanik Arcadeは、イタリアの2人組デベロッパー。前作『Yellow Taxi Goes Vroom』でも98%の高評価を獲得しており、今回の『CloverPit』でも50万を超えるウィッシュリスト、リリース初日で1万人を超える同時接続という驚異的な数字を記録している。

NorthernlionやVinesauceといった海外の有名配信者たちからも絶賛され、「今まで遊んだゲームの99%よりも出来がいい」「最高のBuckshot Rouletteクローンだ」と評されている。日本でも多くのゲーマーがその面白さに気づき始めており、今後さらなる人気拡大が予想される。
Steam Deckでも快適!携帯機での借金返済体験
本作はSteam Deckでの動作も公式に確認済み。外出先でちょっとした隙間時間に「借金返済」できるという、なんとも現代的な体験が可能だ。

操作も非常にシンプルで、基本的にはクリックとキーボード入力だけ。Steam Deckのタッチスクリーンでも快適に操作できる。通勤電車でスロットを回す……なんとも不思議な光景だが、現実のリスクがない分、罪悪感なく楽しめるのが良い。
まとめ:ギャンブルの快感だけを抽出した奇跡の作品
『CloverPit』は、ギャンブルゲームの新たな可能性を示した傑作だ。現実のリスクを排除しつつ、スリルとカタルシスは本物。戦略性も十分で、リプレイ価値も高い。
価格も1,080円(リリース記念価格)と非常にリーズナブル。この価格でこの完成度は驚異的だ。ギャンブルが好きな人はもちろん、『Balatro』や『Slay the Spire』といったローグライトが好きな人にも強くオススメしたい。
ただし、プレイする際は時間を忘れる覚悟を。気がつけば数時間が過ぎているという中毒性の高さは、ある意味で本物のギャンブル以上かもしれない。現実の借金地獄に陥る心配がないのが、唯一の救いだ。
基本情報
- タイトル: CloverPit
- 開発: Panik Arcade
- 販売: Future Friends Games
- 配信日: 2025年9月26日
- 価格: 1,080円(10%オフ、10月11日まで)/ 通常価格1,200円
- プラットフォーム: Steam(Windows)
- 日本語: 対応
- Steam評価: 圧倒的に好評(96%)
- プレイ人数: 1人
- プレイ時間: エンドレス(1回のランは30分~2時間程度)
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