乗組員は消え、信号だけが鳴り続ける。崩壊した掘削艦をひとりで動かす心理ホラー『MOLE』が、97%の圧倒的好評を得た理由
「巨大な掘削機を、ひとりで操作する心理ホラー」——その紹介文を読んだとき、正直、地味なシミュレーターを想像していた。スイッチを押して、メーターを見て、淡々と機械を動かすだけ。そういうニッチな一本だろう、と。
ところが『MOLE』は、その予想をいい意味で何度も裏切ってきた。機械を操作するその手触りの先に、消えた乗組員の謎と、喪失と狂気の物語が待っていたのだ。Steamで圧倒的に好評(97%・1,846件) という異例のスコアも、遊んでみれば大げさではないと分かる。

巨大掘削艦の航海士として、地の底へ潜っていく
舞台は戦後のスラヴの大地。プレイヤーは「ディープボア・ヴェッセル」と呼ばれる巨大な掘削艦の航海士(ナビゲーター) となり、地中深くへと潜行していく。
だが、艦に乗り込んだときにはもう、おかしなことになっている。乗組員は全員姿を消し、艦内は不気味なほど静まり返り、システムはあちこちで故障しかけている。そして、どこからともなく「信号」が鳴り続け、こちらを呼んでいる。プレイヤーは艦のシステムを維持し、パズルを解き、断片的な記憶をたどりながら、「ここで何が起きたのか」を少しずつ掘り起こしていくことになる。

レバーを引き、ハンドルを回す。”自分が動かしている”という手触り
本作の心臓部は、ダイジェティック(劇中世界に統合された)な操作系だ。メニューやUIで完結させず、艦内の装置そのものを手で操作していく。
マウスを回してドライバーで通気口をこじ開け、レバーを倒し、コンソールのジョイスティックを握る——プレイヤーの操作は、ほぼすべてがこうした「身体的な手つき」に置き換えられている。最初は戸惑うが、慣れてくると、この一連の動作が**「自分は今、本当に巨大な機械を動かしている」という実感**を強烈に立ち上げてくる。海外レビューでも「これらのシステムは、巨大な機械を操っている感覚を見事に作り出している」と高く評価されており、筆者もまったく同感だった。
スイッチひとつ入れるのにも手順を踏まされる、その”面倒くささ”こそが没入感の源になっている。ボタン一発で済まないからこそ、薄暗い艦内でひとり機械と向き合う孤独が、じわじわと効いてくるのだ。

信号、正気、そして喪失。掘り進めるほど沈んでいく物語
『MOLE』は単なる操作シミュレーターでは終わらない。潜行が深まるにつれ、プレイヤーの正気(サニティ) は静かに削られていく。鳴り止まない信号、断片的に蘇る記憶、そして選択。これらが絡み合い、艦の謎とプレイヤー自身の内面が二重写しになっていく。
その核にあるのは、喪失と悲嘆のテーマだ。海外レビューはこの作品を「過去にしがみつこうとすること、そしてそれが健全になされなかったときに心へ及ぼす恐ろしい影響を描いた、悲嘆と喪失の物語」と評している。ホラーとしての怖さだけでなく、終わってみると胸に重いものが残る——そういうタイプの一本だ。
なお本作には、死・殺害・自死の描写が含まれる。題材が題材だけに、心理的にヘビーな表現が苦手な人は事前に把握しておきたい。

気になる点も正直に
圧倒的な高評価を得ている本作だが、人を選ぶ点も正直に書いておきたい。
まず、ボリュームは約3〜4時間とコンパクトだ。濃密で無駄のない体験だという好意的な受け止めが多い一方で、「もっと長く浸っていたかった」「価格に対して短い」と感じる人もいるだろう。基本的に一本道の体験で、派手なリプレイ性があるタイプでもない。
また、ダイジェティックな操作系は魅力であると同時に、序盤は「何をどう触ればいいのか」が分かりにくい場面もある。テキパキ進めたい人には、この”あえて手間をかけさせる”設計がまどろっこしく映るかもしれない。アクション性の高いホラーを期待すると方向性が違う、という点も含めて、「静かに浸る心理ホラー」だと理解して手に取りたい作品だ。

圧倒的好評97%が意味するもの
開発は Off Black Creations、販売は Oro Interactive。2026年6月15日にリリースされた。価格は1,500円で、無料体験版も配信されているので、独特な操作と雰囲気が自分に合うかどうかは、まずデモで確かめてみるのがいい。
批評筋の評価も高く、9.5/10をつけたレビュアーは「MOLEが遠近法とイメージを使って物語を語るやり方に驚かされた」と記し、Bloody Disgustingは4/5のスコアとともに「本当に深いテーマを掘り下げていることに、最後には強く感心させられた」と評している。コンパクトながら緻密に練り上げられた”作家性”が、この圧倒的な好評を支えているのは間違いない。
雰囲気重視の心理ホラーが好きな人、淡々とした手作業の没入感に惹かれる人、そして「短くても心に残る物語」を求めている人に、自信を持っておすすめできる一本だ。地の底で鳴り続ける信号の正体を、あなた自身の手で掘り当ててほしい。

基本情報
開発: Off Black Creations
販売: Oro Interactive
リリース日: 2026年6月15日
価格: 1,500円
プラットフォーム: PC(Windows)
プレイ人数: 1人
言語: 日本語、英語ほか全10言語対応
ジャンル: ホラー、アドベンチャー、シミュレーション
Steam評価: 圧倒的に好評(97% – 1,846件のレビュー)
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/4064510/MOLE/
- タイトル
- MOLE
- 開発
- Off Black Creations
- ジャンル
- ホラー / アドベンチャー / シミュレーション / シングルプレイヤー
- 対応
- PC (Windows)
- 難易度
- 初心者向け
- Steam評価
- 圧倒的に好評(97% – 1,846件のレビュー)
01Subliminal自分の記憶に閉じ込められたらどうする? 光を操り、心の闇から脱出せよ!『Subliminal』
続きを読む →
02Dyping Escape「打てば死ぬ」の絶望。タイピングが凶器に変わるメタホラー『Dyping Escape』
続きを読む →
03HELLMART